光通信における光スペクトラム測定

(THE T&M LINK(Vol.18)2006年7月14日掲載)

まえがき

インターネットのバックボーンを始め、企業内の通信などにも幅広く利用されている光ファイバ通信ですが、日本では今、FTTH(Fiber To The Home)のかけ声のもとで、各家庭にまで急速に光ファイバ網の導入が進んでいます。光ファイバ通信は、高速大容量が特長ですが、世の中の要求は「より速く、より大容量、そして安価に」です。
光ファイバ通信の研究開発・製造・保守の各場面では、光の測定が重要な評価項目であり、波長測定、パワー測定、スペクトラム測定が基本となっています。測定には、それぞれ光波長計、光パワーメータ、光スペクトラムアナライザなどが使われています。
ここでは、この基本測定の一つである光スペクトラム測定について、その基本原理と測定テクニックなどについて解説します。

光スペクトラム測定の基礎

太陽の光をプリズムに通すと、虹のような色の帯ができることをご存知の方は多いと思います。
様々な異なる波長(=色)を持つ光の成分が、どのような割合で混ざっているかを表したものを 光スペクトラムと呼びます。そして、様々な波長の混ざった光から光スペクトラムを得る手法を分光と呼びます。
図1に光スペクトラムの例として、太陽光のスペクトラムとレーザの光スペクトラムを示します。

光スペクトラムの例

一口に光スペクトラムと言っても、様々な形態のスペクトラムが知られています。例えば、ある光源の波長分布を単純に測った場合は発光スペクトラムですが、ある物質(ガラスなど)をどのような波長の光がどれだけ透過するかを表す場合は「透過スペクトラム」、逆にある物質からどのような波長の光がどれだけ反射してくるかを表す場合は「反射スペクトラム」と呼ばれます(図2参照)。光ファイバ通信においては、これらの光スペクトラムから得られる情報が、高速・大容量という要求事項を評価するための重要なパラメータとなっています。

物質の透過・反射スペクトラム

<光ファイバ通信における基本光スペクトラム測定の項目>

  • レーザ、発光ダイオードなどの発光素子の発光波長(中心波長、ピーク波長)やスペクトル幅測定
  • 光ファイバの損失波長特性や光フィルタなどの減衰特性や透過特性、カットオフ波長測定

<光スペクトラム測定の応用例>

  • 光ファイバアンプの性能である利得やNF(雑音指数)解析
  • 光伝送信号のOSNR(光信号対雑音比)解析

光スペクトラム測定のしくみ

光スペクトラムアナライザは、各波長に対応した光パワーを分光により測定し分析を行う測定器です。光スペクトラムアナライザによる光スペクトラム測定のしくみを図3に示します。入力された光は、図中の光バンドパスフィルタで、狭い波長スロットに分割され、フォトダイオード(O/E変換器)で電気信号に置き換えられます。光バンドパスフィルタの中心波長をスイープさせながら得られる電気信号をプロットしていくことで、光スペクトラムが得られます。この光バンドパスフィルタは、光学的なプリズムを使用したメカニカルな装置でモノクロメータと呼ばれます。光バンドパスフィルタの特性が狭帯域でかつシャープであるほど、高性能な光スペクトラムアナライザと言われています。また、光バンドパスフィルタの中心波長を制御する精度が高いほど、波長測定精度が良いことになります。

光スペクトラムアナライザの原理

光スペクトラムアナライザの性能指標

光スペクトラムアナライザの代表的な性能指標を列挙します。
使用される様々な場面で、必要に応じて測定器の性能を確認しておく必要があります。その他の指標としては、解析機能 の豊富さや、マウス操作などに代表される操作性の良さ、および外部インタフェースの充実などが挙げられます。

光スペクトラムアナライザの性能指標

 

光スペクトラム測定の注意点

<測定対象に応じて最適な分解能設定が必要>
光スペクトラム測定のしくみで説明したように、光スペクトラムアナライザでは内部の光バンドパスフィルタ帯域が狭いほど、得られる波長分解能は高くなります。しかし、白色光などの広帯域な光スペクトラムでは、フィルタの帯域幅が狭いほど測定されるパワーが小さくなり、測定のSN比が十分とれない場合があります。このため、波長分解能の設定には表1に示すような使い分けが必要です。

測定対象に応じた波長分解能設定の使い分け

表1 測定対象に応じた波長分解能設定の使い分け

 

レーザの光スペクトラム測定例

光ファイバネットワークの構築に不可欠な光送受信モジュールは、光トランシーバと呼ばれています。光トランシーバ内部の送信モジュールにはレーザが使用され、その光スペクトラムの評価に光スペクトラムアナライザが使用されます。図4、図5にそれぞれ光トランシーバのレーザの代表的な光スペクトラムを測定した結果を示します。図4に示したレーザは主に近距離の光ファイバ通信に使用されるレーザで、ファブリペローレーザと呼ばれます。

式

ファブリペローレーザの発光スペクトラムは、離散的に複数のピーク波長が存在するため中心波長およびスペクトル幅はRMS(Root Mean Square)法で求めるのが一般的です(式1および式2により算出)。図5に示したレーザは主に長距離通信に使用 されるレーザで、DFBレーザと呼ばれます。
DFBレーザはファブリペローレーザとは異なりピーク波長は一つであるため、発光波長はピーク波長または半値全幅の中心として求められます。またDFBレーザの代表的な評価パラメータとしてSMSR(サイドモード抑圧比)があります。SMSRは、光スペクトラムのピークレベルに対してセカンドピークがどれだけ抑圧されているかを表し、レーザ発振の品質を示す重要な指標です。

光スペクトラム測定例

おわりに

光スペクトラム測定は、光ファイバ通信の発展とともにその重要度が高まってきました。特に波長軸方向にデータを多重するWDM(波長分割多重)方式の急速な普及により、光スペクトラムアナライザは欠かすことの出来ない基本測定器として使用されるようになりました。現在では、光通信用デバイスの低コスト化にともない、測定器の機種選定に対しても高性能・高機能かつ低コスト、測定スループットなどが重要視されています。また、光スペクトラムアナライザを効果的に使用する上では、最適な測定条件の設定、適切な解析機能の選択などが必要となります。

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