ディジタル圧力計 MT300

主な圧力測定仕様

• 確度：0.02％ of reading
• 相対確度^*1：0.01％ of reading または0.01％ of FSのいずれか小さい方

*1：横河の作業用計測器に対する相対値

• 表示分解能：最大6桁（最大7桁：/R1オプション選択時）
• 確度保証範囲：
  　　-G01（10kPa ゲージ圧モデル）：-10~10kPa　
  　　-G03（200kPa ゲージ圧モデル）：-90~200kPa 　
  　　-G05（1000kPa ゲージ圧モデル）：-90~1000kPa
  　　-G06（3500kPa ゲージ圧モデル）：-90~3500kPa
  　　-G07（16MPa ゲージ圧モデル）：0~16000kPa
  　　-G08（70MPa ゲージ圧モデル）：0~70000kPa
  　　-A03（130kPa 絶対圧モデル）：0~130kPa abs
  　　-A05（700kPa 絶対圧モデル）：0~700kPa abs
  　　-A06（3500kPa 絶対圧モデル）：0~3500kPa abs
  　　-D00（1kPa 差圧モデル）：0~1kPa
  　　-D01（10kPa 差圧モデル）：0~10kPa
  　　-D03（130kPa 差圧モデル）：0~130kPa
  　　-D05（700kPa 差圧モデル）：0~700kPa
• 圧力表示単位：Pa, hPa, kPa, MPa, mbar, bar, atm
• 測定媒体：気体および液体（非可燃性、非爆発性、非毒性、非腐食性の流体）

概要：

• 生体内圧力計量機器、または血圧計量機器の開発・生産などの用途を目的に、「生体内の圧力の計量」、「血圧の計量」に限定して法定計量単位として認められている 非SI単位を表示 したディジタル圧力計^※です。
  
  ※医療用途および、血圧計の器差検定や基準器検査の用途には使用できません。

標準モデル：MT300-G03-U1-P□-D

• “-G03”（200kPa　ゲージ圧モデル）以外は選択できません。
• 付加仕様は任意に選択していただけます。

追加仕様：

• 追加される単位^{※1 ※3}は下記の通りです。
  mmHg^※2, cmHg, mHg, mmH2O, cmH2O, mH2O, mTorr, Torr
  
  ※1： 追加された単位は、生体内の圧力の計量に限定して法定計量単位として認められています。
  定められた用途以外では非法定計量単位になります。異なる用途には使用しないようご注意ください。
  ※2： 血圧の計量については、追加された単位のうち、mmHgのみが法定計量単位として認められています。
  ※3： ベースモデルの単位（-U1）を含め切り替え可能です。

• 機器の使用目的を明確にするため、統合表現として下記のラベルを製品に貼付してあります。
  　「生体圧力計量機器用」

 

 

リーフレット：MT300 ディジタル圧力計 生体圧力計量機器用圧力計

豊富な機能により、
様々な圧力計測ニーズを支援

高精度な測定を支援

高分解能表示―/R1オプション
圧力測定値の表示分解能を上げることで、より高精度の圧力測定が実現できます。
また、校正環境構築においては、校正環境全体の不確かさを下げることが可能です。

高速測定―/F1オプション
圧力の過渡応答状態の観測など、高速な圧力変動を確実にとらえます。アプリケーションに応じて、標準、中速、高速の３つのモードから、選択していただけます。

同期測定
異なる測定対象を同時に測定する場合、同期機能を使用することで、より高い精度で相関を検証できます。

【事例】
吸引力は、掃除機の性能試験における吸入空気量と均圧容器内の真空度から計算により求められます。吸入空気量はピトー管を介して差圧を測定することにより得られ、真空度は絶対圧を測定することにより得ることができます。/F1オプションにより動的特性を高速に捕捉でき、また、この２つの値を同期測定することにより、より精度の高い結果を得ることができます。

測定事例：掃除機の吸込仕事率測定

効率的な作業をサポート

リークテスト
単位時間当たりの圧力変化量（リークレート）を測定します。圧力システム内の密閉性の確認にご利用いただける機能です。

スケーリング
スケーリング機能を用いて測定値に固有の係数を付与することで、お客様独自の換算値を表示することができます。
次式に従いスケーリングできます。

ｙ＝Ax ＋ B

直接入力モード：係数Aとオフセット値Bを直接入力します。
2点モード：次式に従い係数Aとオフセット値Bを求めます。

※ 表示単位を変更したときは、係数Aとオフセット値Bを再度設定してください。

統計処理
連続で取得したデータに統計処理をかけることができます。取得したデータの最大値、最小値、平均値、標準偏差を表示します。

外部機器との連携をサポート

D/A出力機能―/DAオプション
測定値のD/A変換信号を外部端子から出力します。測定システムや記録計などへのデータ出力が簡単に行えます。
/F１オプションとの併用により、出力更新周期を0.25msに設定できます（中速・高速モード）。
また、ダイナミックモードでの測定により、高速で滑らかな観測波形が得られます。

観測波形イメージ（実際の測定条件により異なります）

傾斜アラームと傾き補正機能―絶対圧モデル

傾斜アラーム機能
本体の姿勢状態を判定して、警告表示します。

傾き補正機能
傾斜アラームがONのとき、本体垂直姿勢で使用した際の圧力測定値のオフセットを補正します。

判定結果と圧力測定値の表示色
青色：正しく補正されている。
赤色：補正が必要、または不要な補正が行われている。

		垂直姿勢	水平姿勢
Tilt Alarm ON	Tilt Corr ON
	Tilt Corr OFF

例：傾斜アラームと傾き補正イメージ

D/Aスケーリング機能―/DAオプション
圧力測定レンジの任意の範囲を、D/A発生レンジのフルスケールで出力します。
圧力の微小変化を高分解能に捕捉することが可能になります。

測定事例：微小な大気圧変動の測定

コンパレータ出力機能―/DAオプション
上限値・下限値を設定して測定値を判定し、結果を出力します。
圧力関連製品の製造・検査ラインの自動化などにお役立ていただけます。

通信インタフェース
GP-IB、USB、ETHERNETを標準搭載しています。
通信コマンドは従来機種^※1との互換性を維持^※2※3しており、お客様の計測システムの拡張や更新を容易に行っていただけます。
※1：MT210、MT210F、MT220
※2：一部使用できないコマンドがあります。
※3：-G07、-G08、-A05、-A06は使用できません。

データストア機能
測定したデータを本体内部ストレージに保存することができます。
ストアしたデータは、USBなどの通信機能により容易にPCに取り込むことができ、データの解析や検証、レポート作成などに活用できます。

フィールド機器の校正業務を支援

24VDC出力―/DMオプション
トランスデューサなどへの電源供給が可能です。

DCV、DCA測定―/DMオプション
計装信号（1-5V、4-20mA）の測定が可能です。
250Ωの通信抵抗を内蔵しており、ON/OFFの切り替えが可能です。

バッテリ駆動―/EBオプション
リチウムイオンバッテリ駆動によりAC電源のない環境に持ち出すことが可能です。
連続動作時間：全機能ONで約6時間
充電時間：約6時間

大気圧の揺動を排除した測定を実現

重錘形圧力天びんによる圧力校正

重錘形圧力天びんを用いて校正をする場合、圧力計を接続し、校正された値が正しく発生されているかをモニターにて確認する必要がありますが、発生された圧力値については大気圧の変化が影響するため、環境測定も重要なポイントになります。
MT300絶対圧モデルは、環境測定として大気圧を高精度に監視、測定することで、重錘型圧力天びんの発生した値に対し、大気圧の揺動を排除した結果を出すために効果を発揮します。

圧力変化を迅速にキャッチ

エアコンの冷暖房・除湿能力測定

エアコンの冷暖房能力は、風量測定ノズルの前後の圧力差と空気の温度・湿度から性能を算出します。この評価試験は、平衡状態（気圧内圧と外気圧が等しい状態）で行う必要があるため、あわせて内圧と外圧を測定する必要があります。
/F1オプションにより、空気層内圧を迅速に確認できます。

圧力損失を1台で測定

エンジン用ラジエータ圧力損失測定

エンジン用ラジエータの性能評価の一例として、供試ラジエータ前後の圧力差を測定することにより冷却空気の流路に対する圧力損失の測定があります。
MT300差圧モデルは、豊富なレンジラインアップがあり、最適なレンジ、分解能のモデルを選択することで、高精度測定を可能にします。

複数台の圧力計を使用したアプリケーションについては、同期測定機能を使用することにより、さらに高精度な圧力測定を行っていただけます。

高圧を高精度に測定

ガソリン直噴エンジン燃圧センサの開発、評価

ガソリン直噴エンジンは、低燃費化の有効な手段として採用 が拡大しています。このシステムは、20MPaの燃料を噴射する高圧インジェクタや、高精度の空燃比フィードバック制御によりエンジンの高出力と低燃費を両立させます。燃圧の管理は、エンジン性能の維持・向上に向けて重要になります。
MT300の高圧モデルは、この燃圧センサの開発、評価、校正に最適です。

横河独自で開発・設計したシリコンレゾナントセンサ搭載により
高確度、高分解能、そして長期にわたる安定した圧力計測を実現

横河独自開発のシリコンレゾナントセンサは、安定性・再現性・感度・温度特性など『正確な計測』に要求される条件を満足する優れた特性をもちあわせています。

高い感度と分解能、優れた長期安定性
振動子が真空状態に置かれているため、振動エネルギーの放散が減少し、単結晶シリコンの優れた弾性特性との相乗効果で高いＱ値を得る事ができます。

極めて小さい温度依存性
２個の振動子を使用し、圧力は２つの固有振動数の差から求める差動方式をとっており、周囲温度のような外部環境の影響を相殺できます。また振動子が真空状態にあり、周囲温度や湿度などの影響を受けません。

シリコンウエハ上に半導体プロセス技術で作られた振動子を永久磁石で励振し、Siダイヤフラムに圧力が加えられると振動子に歪が発生し、共振周波数が変化します。

国家計量標準機関にむけた取り組み
―国際比較―

シリコンレゾナントセンサのもつ高い性能と長期にわたる安定性の評価結果から、圧力標準の国際比較用仲介器として横河のディジタル圧力計、圧力センサーが採用されています。

※ 仲介器（トランスファースタンダード）：
標準を比較するための仲介用として用いられる標準器

圧力の概念

圧力の定義

• 単位面積あたりに働く法線方向の力の大きさで定義される測定量
• 質量[kg]、長さ[m]、時間[s]等の基本量の測定から得られる組立量

圧力の単位

• 国際単位系（International System of Units : SI）
• [Pa]（パスカル）=[  N/m²  ]（ニュートン毎平方メートル）=[ (kg・m/s²) /m² ]
• 1Pa=1N/m²  　　→1m²の面積に1Nの力をかけたときに発生する圧力
  
  - 1Nは、1kgの物体に1m/s²の加速度を与える力の大きさ
  - 1m²の面積に1/9.8[kg] ≒ 102[g]の力をかけたときに発生する圧力

圧力の種類

身近な圧力

標準気圧：101325Pa = 1013.25hPa = 1atm

• 基準条件下における水銀柱760ミリメートルの高さに相当する大気圧の国際基準となる値。
  日本の計量法体系では、「標準気圧」の語を用いず、単に「気圧」として圧力の単位として規定している。

圧力測定時の注意点　

測定位置

• 大気圧は高さにより異なるので、測定対象と圧力センサの位置を同一高さにしておく必要がある。
• 約10cmの違いで基準が約１Pa異なる。

姿勢の影響

• 圧力センサの検出手段により姿勢変化の影響を受けることがある。
• 受圧部に金属製のダイアフラムを用いている場合、傾けると受圧部の質量が力として加わり、見かけ上の圧力値が変わってしまう。

温度

• 外部から熱を加えると測定系内部の圧力が上昇する。
• ボイル・シャルルの法則　
• 影響を及ぼす要因の例：太陽光の直射、エアコン等の風、配管に手を触れるなど。

大気圧

• 周囲の大気圧を基準とするゲージ圧の場合、測定対象は配管に閉じ込められているので、大気圧の変化によりゲージ圧が変化する。
• 影響を及ぼす要因の例：風の影響、ドアの開閉など。

振動

• 測定器もしくは配管系などに振動が加わった場合には、関係部品が共振したり、配管内の流体が動くことにより、圧力変動が生じる。特に精密測定の場合には注意が必要。

リーク

• リークは測定系を構成するいろいろな場所から発生する可能性がある。
• 継ぎ手部分に発生するケースがあり、管用ネジの場合、シールテープを巻き付けてリークの防止を行う。
• 異常の場合には、ネジ部分への異物の付着、巻き数の不足、ネジ山の変形、締結力の不足などが考えられる。