プレシジョンパワーアナライザ WT5000

持続可能な社会の実現に向けて、COP21におけるパリ協定の採択、既存エンジン車の販売停止計画発表など、グローバルで太陽光/風力発電に代表される再生可能エネルギーへのシフトと、EVやPHVおよびそのインフラ網の開発が加速しています。 それらの更なる省電力化と高効率化を支援するために、従来機種の性能と機能を格段に向上させた高精度電力計です。

What's New


電力基本確度±0.03% & 7入力―高精度電力測定を究める―

世界最高クラスの精度を達成し、刻々と変化する市場要求にモジュラー構造や多彩なフィルター などでフレキシブルに対応できる、次世代のWTシリーズが誕生しました。

細部まで磨き上げた基本性能

幅広い条件にわたり、わずかな値の変化を正確にとらえます

電力確度

50/60Hz

:±(0.01% of reading + 0.02% of range)

 

DC

:±(0.02% of reading + 0.05% of range)

測定帯域

電圧

:DC~10MHz

 

電流

:DC~5MHz

 

電力

:DC~1MHz

低力率特性

:0.02% of S(PF=0)

電圧レンジ

:1.5V~1000V(1500Vdc測定可能)

電流レンジ

直接入力

:500mA~30A(30A高精度エレメント)

 

:5mA~5A(5A高精度エレメント)

 

外部電流センサー入力

:50mV~10V(標準装備)

 

データ更新周期

:50ms~20s

 

有効入力範囲

:1~130%

 

多系統の一括同期測定を支える機能

  • 最大7入力の同時電力測定
  • 最大4モーター評価機能(オプション)
  • 最大32GBの不揮発性内蔵メモリー(オプション)
  • USB(3.0)/イーサネット/GP-IB 通信 標準装備
  • タッチパネル付きWXGA LCD採用
  • 従来モデルWTシリーズコマンド互換モード搭載
 

インバータの測定性能を向上

  • 最高10MS/s & 18bit AD変換器採用
  • 500次までの2系統同時高調波測定 標準装備
    基本波300kHzまで解析可能
    全帯域の電力と基本波成分の高精度な同時測定
  • 多彩なフィルター機能で、インバータのキャリア周波数測定

 

  • フロント_リアパネル
  • フロント_リアパネル_説明

 

 

 

WTシリーズ間の比較

WT5000/ WT3000E/ WT1800Eの比較 

世界最高クラスの電力基本確度トータル±0.03%を実現

世界最高クラスの測定確度となるトータル±0.03%(50/60Hz、定格入力時)に加えて、測定帯域、DC測定確度、力率誤差も大幅に改善しました。 インバータ、リアクトル、バッテリなども含むシステムの効率をより高精度に測定できます。
さらに、広いダイナミックレンジを備えており、機器の省エネルギー設計時には欠かせない大きく変化する電流値にも対応できます。

WT5000 電力基本確度
 

最高10MS/s 18bit ADがもたらすハイパフォーマンス

世界最高クラスの測定精度を実現するために、最高10MS/s、18bitのADコンバータを採用しました。 サンプルレートを従来よりも大幅に高速化することで、入力信号が高速に変化する最新のインバータ波形も正確にディジタル化できます。 安定した電力測定に寄与するだけでなく、高精細な波形観測も可能となりました。

 
WT5000 ハイパフォーマンス
 

現在および将来のアプリケーションをカバー最大7入力の電力測定

従来モデルと同じ筐体サイズながら、最大7入力の電力測定を実現しました。 従来モデルでは2台を連結同期することでしか測定できなかった多入力のアプリケーションを、1台で対応できます。設置スペース、通信およびコスト面で大変有利です。 さらに、電力入力はモジュラー構造とし、お客様にて入れ替え、または増設してご使用できます。 定格入力30Aと5Aのエレメントから選択いただけます。

WT5000 7入力の電力測定
 

モジュラー構造による拡張性

電力の入力エレメントはモジュラー構造を採用しました。YOKOGAWAが長年蓄積してきた設計技術により、極めて高精度な測定回路をコンパクトな入力エレメント内部に収めることを可能にしました。 定格入力30Aと5Aから用途に合わせてお選びいただくことができ、お客様にて入れ替えや増設が可能です。 左下図のように任意に組み合わせて本体に装着することができます。さらに、各エレメントには外部電流センサー入力が標準にて搭載されており、電圧出力型の電流センサーやプローブを利用することも可能です。

WT5000 拡張性

WT5000 拡張性

スライド切り替えによる
外部電流センサー入力

 

電圧出力型の外部電流センサー用の絶縁型BNC入力コネクタ

電圧出力型の外部電流センサーを使用する際には、直接入力端子はスライドでカバーされます。

761901 モジュール
 

誤挿入防止のための電流安全端子採用

今日の国際安全規格に対応し、より安全にお使いいただくためにWT5000では電流入力にも安全端子を採用しました。 特に高電圧の電流端子への誤挿入を防ぐために、電流入力にはオス型の安全端子を使用し、電圧用の測定リード(758917)を誤って挿入することを防止しています。 また、特に大電流用の30A電流入力側はロック機構を採用して、簡単には電流端子から抜けない構造となっており、安全かつ確実に測定していただけます。

WT5000 電流安全端子採用

電流入力で安全端子
アダプタを使用した例

 

タッチパネル&ハードウェアキーによる直観的な操作性を実現

WT5000 電流安全端子採用

 

大きな設定パネル ―正確な設定操作のために―

入力の設定など、多岐にわたる項目の詳細の設定のために、大きな全画面設定パネルをご用意しました。全体を見渡すことで、各入力間の差異の確認や、誤設定を防止できます。

WT5000 設定パネル
 

小さな設定パネル ―快適な調整作業のために―

測定結果を確認しながら、フィルターなどの特定の設定を行うパネルをご用意しました。実際の測定データを確認しながら、詳細なチューニングが可能となります。

WT5000 設定パネル
 

ハードウェアキー

頻繁に使用する機能や即時の変更が必要な場合のために、ショートカットキーとしてハードウェアキーをレイアウトしました。 タッチパネルとの組み合わせにより、快適な操作性を実現します。 なお、タッチパネルを使うことが難しい使用環境の場合でも、ハードウェアキーにより全ての操作が可能です。 さまざまなシーンに柔軟に対応できます。

 

WT5000 ハードウェアキー

 

ディスプレイフォーマットキー

全画面表示および分割画面表示の設定を簡単に切り換えられます。 分割表示の下側のGRAPHキーを押すと、分割表示の下側にグラフが表示されます。 GRAPHキーを押すたびにディスプレイはWave、Trend、Bar、Vectorと切り替わります。直観的な操作が可能です。

WT5000 ディスプレイフォーマットキー

最大4モーターの評価機能搭載(オプション)

モータ-評価機能/MTR1と/MTR2(いずれもオプション)は、1つずつ計2モーターの評価が可能です。 また、4チャネルの入力をトルクと回転速度に分けて、2つずつの計4モーターの評価にもフレキシブルに使用可能です。 インホイールモーターや四輪駆動車などのように、4モーター同時の測定が求められている場合にもご活用いただけます。

WT5000 評価機能搭載

 

最大500次の2系統高調波測定機能(標準装備)

三相入・出力などの多系統測定の要求の高まりに合わせ、高調波測定機能を2系統としました。 各々の入力は基本波成分に対し最大500次までの測定が可能です。これにより、例えばインバータではモーターの回転数からキャリア周波数の成分までの幅広い次数範囲での測定が可能となり、キャリア周波数によ従来モデルの通信コマンドをサポート るモーター駆動への影響も確認することができます。

WT5000 500次までのバーグラフ表示例

500次までのバーグラフ表示例

WT5000 ベクトルのデュアル表示例

ベクトルのデュアル表示例

 

測定データも設定情報もくまなく保存可能な 32GB不揮発性メモリー(オプション)

現場での実測における膨大な測定データの保存用として、また異なる測定対象に合わせた各種設定データの保存用として、32GBの大容量の内蔵メモリーをご用意しました(/M1オプション)。 この不揮発性メモリーを活用することで、外部メディアを準備しなくても、測定データの保存が容易となるとともに、高速な測定、データ保存も可能となりました。

WT5000 不揮発性メモリー

 

従来モデルの通信コマンドをサポート 容易な入れ替えが可能

従来モデルとなるWTシリーズの通信コマンドをサポートしています。 設定画面にてコマンドタイプを変更することで、従来のWTシリーズ用に組まれたプログラムを有効利用して動作させることができます。
※ 例として、弊社提供のTMCTL.DLLを利用してイーサネットやUSB通信を行う場合には、TmcInitialize関数の書き替えが必要となります。また、その際にはWT5000の新機能を利用することはできません。 なお、ラックマウントキットは従来モデルと異なりますので、新規にご用意ください。

WT5000 不揮発性メモリー

コマンドタイプの設定例

次世代自動車向けインバータ駆動モーターの開発と評価支援

WT5000は最大7つの電力入力エレメントを搭載可能ですので、EV/PHVなどの入・出力間の効率評価に最適です。 また、電圧・電流・電力のみならず、 モーター評価機能(/MTR1および/MTR2オプション)により、最大4モーターの回転速度、トルクおよび機械的出力の変化を同時に測定できます。

WT5000 電力基本確度

 

最高10MS/sの高速サンプリングで、 最新インバータの波形も正確に捕捉

普及に期待が高まるSiCやGaNを用いた高速スイッチング素子によるインバータ波形も、最高10MS/sの高速サンプルレートで正確に捕捉ができます。これらの波形を正確に捉えることで、安定して精度の良い電力測定が可能です。

 

バッテリの充・放電、瞬時の変化を測定

積算測定では、変化が大きいバッテリの充電と放電を極性別に測定することができます。 5MS/sの高速サンプルレートで捕捉された瞬時の正と負の電流値、電力値が積算され、それぞれの合計値を演算します。

WT5000 電力基本確度
 

多彩なフィルターで、測定全帯域での電力値ととも に基本波成分を同時に測定可能

サンプルレートの1/2を超える帯域の折り返しの影響を防ぐアンチエリアシングフィルターをはじめ、多彩なラインフィルター、周波数フィルターを揃えることで、全帯域の測定結果と同時に、モーター回転数を基本波周波数とする高調波成分を高精度に測定できます。

WT5000 Advanced settings

Advanced settingsによるラインフィルターの設定例

 

外部電流センサーを含めたオフセットを 除去可能な、個別Null

Nullは、結線した状態で外部電流センサーを含めてオフセット値をゼロにする機能です。WT5000では、入力ごとに個別でNullをON/HOLD/OFFができます。バッテリ駆動のEVやPHVでは、高精度なエネルギー収支の測定が不可欠であり、外部電流センサーを含めたオフセットキャンセルが重要です。

WT5000 Nullの設定例

Nullの設定例

 

太陽光発電など新エネルギー分野での発電―変換効率測定

太陽光・風力で発電されたエネルギーは、パワーコンディショナ内部で直流・交流から商用周波数の交流に変換されます。 また、蓄電池への充電制御装置で電圧値が変換されます。それらの変換時のロスを最小限にすることが系統全体の高効率化につながります。WT5000は1台で最大7入力の電力エレメントを搭載できますので、各変換器前後の電圧・電流・電力・周波数(交流の場合)や、変換・充電効率などを測定可能です。

 

最大1500Vdc/30A×7系統を直接測定

電圧レンジ(1.5V~1000Vレンジ、最大1500Vdc入力可能※)と電流レンジ(0.5A~30Aレンジ)の直接入力端子を搭載しているため、外部電流センサーを使わずに高精度測定ができます。パワーコンディショナの評価では、昇圧コンバータ・インバータ・蓄電池への入・ 出力など、多チャネルの電力測定が必要です。WT5000は最大7入力の電力が可能なため、多点の電力を1台で同時に評価できます。

※1500Vdc等の高電圧対応向けケーブルや端子については、ご用意ください。

WT5000 高精度測定

 

瞬時電力ピーク値の測定(MPPT制御)

太陽光発電では、取り出した電力が最大になるように、太陽電池が発生する電力を有効利用する制御(MPPT制御)が行われています。WT5000は、電圧・電流・電力値とともに、電圧ピーク値・電流ピーク値(それぞれ+側、-側)を測定できます。また、瞬時電力最大値(+側、-側)も測定可能です。

 

WT5000 高精度測定

MPPT( Maximum Power Point Tracker)制御時の電圧、電流、電力測定例

 

交流磁気特性試験

低力率時でも高精度測定が可能なWT5000を用いることで磁性材料の正確な評価ができます。 鉄心では、ヒステリシス特性あるいは渦電流によりエネルギー損失が発生します。 エプスタイン装置では、鉄損は二次コイルの電圧と一次コイルの電流から算出される電力値として測定されます。 この値には巻線分の銅損を含まないため、そのまま鉄損の測定結果となります。 WT5000を用いた場合、ユーザー定義ファンクションを使って周波数、断面積などをあらかじめ入力しておくことで、磁束密度B、および交流磁界Hを演算し、値を直接表示することが可能です。

WT5000 交流磁気特性試験

WT5000 交流磁気特性試験

 

WT5000 交流磁気特性試験


電流入力端子が安全端子となった理由は何ですか。


30A入力モジュールの入力端子が6㎜になった理由は何ですか。


ハイパスフィルターが新規に搭載された理由は何ですか。


WT1800EやWT3000Eとサイズは同じですか。


ラックマウントキットはWT3000/Eと同じものを使えますか。


モジュール対応にした理由はなぜですか。


LCD表示について詳細を教えてください。


入力エレメントが最大7となったのはなぜですか。


モーター評価機能が最大4入力になったのはなぜですか。


USBは3.0対応ですか。


通信互換モードは搭載していますか。

 

760901 30A高精度エレメント

30A 高精度エレメント
販売単位:1
価格 ¥400,000 (税抜)

760902 5A高精度エレメント

5A 高精度エレメント
販売単位:1
価格 ¥400,000 (税抜)

AC/DC電流センサー CT2000A/ CT1000A/ CT1000/ CT200/ CT60

CTシリーズはそれら電力・効率測定の可能性を広げ、大電流の動作環境下での評価を可能にする電流センサーです。

BNCケーブル 366924

BNC-BNC(1m)
42V以下の低電圧回路にてご使用ください
販売単位:1
価格 ¥3,000 (税抜)

BNCケーブル 366925

BNC-BNC(2m)
42V以下の低電圧回路にてご使用ください
販売単位:1
価格 ¥4,000 (税抜)

安全BNCケーブル 701902/701903

701902:1000Vrms-CATII(BNC-BNC)、1m
販売単位:1
価格 ¥5,000 (税抜)
 
701903:1000Vrms-CATII(BNC-BNC)、2m
販売単位:1
価格 ¥6,000 (税抜)

外部センサー用ケーブル B9284LK

外部入力接続用ケーブル、50cm、水色
販売単位:1
価格 ¥4,000 (税抜)

測定リードセット 758917

1000Vrms-CATⅡ、0.75m、安全端子(バナナ オス)‐安全端子(バナナ オス)赤黒2本セット
701959、758921、758922、758929などと組合せて使用
販売単位:1
価格 ¥5,500 (税抜)

ワニグチアダプタ(小)758922

定格300V、300Vrms-CATII、赤黒2ヶセット、安全端子(バナナ メス)-ワニグチ変換
販売単位:1
価格 ¥2,200 (税抜)

安全端子アダプタセット 758923

バネ押さえタイプ(バナナ オス)、赤黒2ヶセット
販売単位:1
価格 ¥2,800 (税抜)

ワニグチアダプタ(大)758929

定格1000V、1000Vrms-CATII、赤黒2ヶセット、安全端子(バナナ メス)‐ワニグチ変換
販売単位:1
価格 ¥3,500 (税抜)

安全端子アダプタセット 758931

ネジ締めタイプ(バナナ オス)、赤黒2ヶセット
ケーブル固定用1.5mm六角レンチ(B9317WD)付
販売単位:1
価格 ¥2,000 (税抜)

大電流用安全端子アダプタセット 761951

30A電流端子に接続して使用するアダプタ
販売単位:1
価格 ¥10,000 (税抜)

電流用安全端子変換アダプタセット 761952

5A電流入力端子に接続して使用するアダプタ
販売単位:1セット
価格 ¥4,000 (税抜)

電流用安全端子アダプタセット 761953

安全端子アダプタ(ネジ締めタイプ、電流入力用)
販売単位:2個(1セット)
価格 ¥4,000 (税抜)
アプリケーションノート
398 KB
業種:
概要:
モータ・インバータの電力測定

 

最高クラスの高精度測定
(WT5000)

世界最高クラスの電力基本確度±0.03%による、高精度測定が可能。
高度な演算機能を搭載できるハイエンドモデル。

ワイドレンジ・多チャネル測定
(WT1800E)

最大6chまで搭載できる多チャネルで、1.5V~1000V、10mA~50Aのワイドレンジを搭載できる高機能モデル。

解析型電力計
(PX8000)

最速100MS/sサンプルレート&20MHz帯域で波形データ捕捉し、その後に過渡現象や電力パラメータを演算させる解析型電力計です。

※1 大電流測定には、AC/DC電流センサーCTシリーズをご使用ください。

AC/DC電流センサCTシリーズ
CT2000A CT1000 CT200 CT60
アプリケーションノート
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業種:
アプリケーションノート
436 KB
概要:

1.概要

二酸化炭素ガスの排出増に関わる地球温暖化問題、国家のエネルギー政策に深く関わる石油枯渇問題は、ますます深刻な事態になっています。このような背景から、日常生活に欠かせない自動車の環境、快適さ、安全に関する性能の向上のために、自動車の電動化・電子化が急速に進んでいます。 モータを主動力として利用する電気自動車(EV)やハイブリット車(HEV)は、減速時の回生電力を二次電池に蓄え有効利用することで、燃費性能を格段に改善することができます。また、エンジン制御やハイブリッドの制御に加え、情報機器や先進安全システムとの融合が進んでいます。ここでは、電動化、電子化が著しい車両開発における自動車計測について解説します。

2.インバータ・モータの評価

モータを駆動するモータドライバにはインバータ技術が用いられており、直流電力を交流電力に高効率で変換する性能が求められます。その大容量化に伴い、大電流による導電ロス低減のために、昇圧コンバータを併用して高電圧化するケースも増えていることから、装置全体としてモータドライブ方式は複雑になっています。その要となるインバータを評価するうえで、入出力間の効率測定は欠かせない項目ですが、それに伴う重要なポイントを挙げると以下のようになります。

  • 高電圧・大電流のセンシシング技術
  • 測定系統全体での耐ノイズ性能
  • 基本波成分の測定確度
    モータはL負荷のため、電力としては基本波成分が支配的となり、測定帯域よりも重要なポイントとなる
  • 入出力間の同時測定
    ノイズの影響もあるが、インバータでは出力変動が激しいため安定した測定データが得られ難い
  • 駆動方式に直結し、不具合解析に役立つ周波数解析性能

プレシジョンパワーアナライザWT3000図1の「プレシジョンパワーアナライザWT3000」は、変換効率を高精度に測定するために多チャネル入力モデルでは世界最高クラスの高精度±0.06%を実現した電力計です。最大4chまで入力できるため、三相系統の入出力間(いずれも三相3線式)や直流入力に対する三相出力等の(三相3線式もしくは三相4線式)インバータの電力変換効率およびモータ効率をより高精度に評価できます。電圧は1,000Vまでを直接入力することが可能で、電流は専用の電流センサユニットを組み合わせて600Aまで測定可能となっています。パワーアナライザと専用電流センサとは、その組合せにより優れた耐ノイズ性が得られます。その他の機能として、波形観測機能や高調波解析機能、FFT機能を有し、電力の測定だけではなく周波数成分解析を同時に行えるため、ドライバの駆動波形観測によって不具合の解析装置としても活用できます。

モータおよびモータドライバの設計においては、制御パラメータの一つとしてモータのインピーダンスを必要とする場合があります。この際、一般的にはLCRメータ等でモータの静的特性を測定しますが、大容量のモータの場合は、負荷電流による発熱の影響によって静特性と異なる場合もあります。パワーアナライザには、演算機能によってインピーダンスを算出する機能が搭載されているので、実負荷状態のインピーダンスを測定でき、設計段階での効率的な評価が可能となります。

3.乗り心地を含めた車両の評価

自動車の乗り心地の観点では、低速走行時の滑らかさと加速時等での優れたレスポンスが求められます。レスポンスの確認では、モータの過渡特性に対する駆動波形との関連から解析することが必要です。
スコープコーダDL750P 図3の「スコープコーダDL750P」は、最高10MS/s、最大16チャネルの絶縁型のオシロスコープで、高圧インバータの駆動波形を直接入力し、スイッチング制御信号とあわせた波形解析が可能です。ロングメモリや内蔵ハードディスクを生かしてレコーダとしても活用できることから、各種センサーとひずみ入力や温度入力モジュール等を任意に組み合わせて、車両の機械的変化と電気的変化を同時に捉えることが出来ます。物理信号から電気信号まで幅広い入力が可能なため、短い時間での効率が求められる開発や評価の場面で有用なツールとなります。

以上、環境性能を高めたEV、HEV等自動車分野の動向と、計測器を用いた評価ソリューション例について説明しました。これらをまとめると図4のようになります。

 

計測器を用いた評価ソリューション例

今後のEV、HEV開発においては、評価方法がさらに専用化し複雑化していくことが予想されます。
計測器もこれらの要求に対応した不可欠な機能を取り揃えたソリューションが求められると考えられます。

概要:

1.概要

欧州市場に出荷する製品には均一な安全性が要求されており、EU加盟国政府は自国の法令をEC指令に整合しなければなりません。指令には、
   機械指令(Machinery Directive)、
   EMC指令(Electro-Magnetic Compatibility Directive)、
   低電圧指令(Low Voltage Directive)
があり、EMC指令の項目の中に低周波EMC規格(IEC61000-3-2など)が含まれています。

このような背景から、欧州に出荷される一般消費者に販売されるほとんどの製品は、低周波EMC規格試験を実施し、規格に定められた限度値以内であることを確認する必要があります。
低周波EMCには、高調波とフリッカ/電圧変動がありますが、ここでは、16A以上の機器の規制が新たに適応され試験方法も移行期間中である、高調波について説明します。

2.高調波規制の概要

スイッチング電源などのコンデンサインプット型の電源では、高調波電流が発生します。 このような電源の普及により、商用電源に高調波ひずみが生じ、機器の誤動作、電源系統の コンデンサの発熱などの問題を発生します。 そのため、高調波電流を発生させる機器に対して限度値が決められており、これらの試験は、 機器の最も高調波の発生する試験条件で実施する必要があります。

2.1. IEC61000-3-2  16A以下の限度値

機器によってA,B,C,Dのクラスに分けて、最大40次までの高調波電流の限度値が規定されています。
各クラスの限度値は、測定観測期間内の平均値と最大値に適用され、平均値が限度値以内であること、最大値が限度値の1.5倍以下であることが求められます。

IEC61000-3-2のクラス分けフロー
図1. IEC61000-3-2のクラス分けフロー

 

表1. 限度値の例 クラスDの限度値
限度値の例 クラスDの限度値

規格は限度値の適用以外に、緩和処置の条件を設けるなど、若干の 見直しが行われています。
例えば、21次以上の奇数時高調波については、部分奇数高調波電流POHCが限度値以下であれば、各次数の限度値の150%までが緩和処置として許容されます。

式

2.2. IEC61000-3-12 16A以上75A以下の限度値

IEC61000-3-12では、13次までの各高調波と40次までの高調波電流から算出した、総合高調波ひずみTHDおよび部分加重高調波ひずみPWHDで限度値が決められています。

式

16A以上の大型機器では、その機器をつなぐ系統の高調波電流に対する強さの指針である短絡比Rsceの大きさごとに限度値のレベルが規定されています。
系統インピーダンスが低くて高調波電流が発生しても、電圧ひずみが起こりにくい電源系統につなぐことを限定すれば、機器の発生する高調波限度値が大きくても構わないという考え方をします。
もっとも厳しいRsce=33による限度値を満たした場合は、どのような系統にも接続可能です。
Rsce=33の限度値を越えても、短絡比Rsceを大きくすれば限度値に入る場合にはそのRsceを決めて、そこから算出できるSsc値を対象製品に明記すれば規格適合させることができます。
偶数次高調波は短絡比Rsceによって限度値のレベルが変わらないので注意が必要です。

表2. IEC61000-3-12の限度値例 平衡三相機器以外の機器の限度値
IEC61000-3-12の限度値例 平衡三相機器以外の機器の限度値

 

2.3. IEC61000-4-7 高調波の試験手法

IEC61000-3-2およびIEC61000-3-12はいずれも高調波の限度値を取り決めた規格です。
試験方法はIEC61000-4-7で取り決めされています。
試験方法は1991年版から2002年版で大きな改訂がされています。

規格 第1版:1991 第2版:2002
DFT解析ウインドウ幅 16波(50Hz,60Hz) 10波:50Hz
12波:60Hz
中間高調波 測定値に反映させない 測定値に反映させる(グルーピング)
附属書A(参考) 中間高調波グループ化、中間高調波
サブグループ化の演算式

図2と図3で測定原理を説明します。
DFT解析ウインドウ幅はIEC61000-4-7第1版:1991では16波固定で、基本波の整数倍のみの高調波のみを測定します。
第2版:2002から50Hzは10波測定、60Hzは12波測定に変更、中間高調波の測定も必要となっています。
これは消費電流特性が変動する機器やスイッチング制御の多用により基本波成分の整数倍以外の高調波が無視できなくなってきたための対応です。

IEC61000-4-7 1991の測定原理
図2. IEC61000-4-7 1991の測定原理


IEC61000-4-7 2002の測定原理
図3. IEC61000-4-7 2002の測定原理

規格試験では、ノーギャップ, ノーオーバーラップが求められため、高速なフーリエ変換を実現する必要があります。また高調波電流の測定精度も大変厳しい仕様が求められます。そのため専用のアナライザが必要になります。
現在は移行期間中であり、1991年版による方式のアナライザでも、試験結果にその旨明記すれば使用が認められていますが、いずれ置き換えが必要になります。原理的な違いから測定結果が根本的に異なる可能性もあるため、予備試験も含めて2002年版による試験を実施したほうが望ましいと思われます。

3. 低周波EMC規格試験向けの機器の構成

図4に、IEC試験の構成を示します。 IEC試験では、試験用電源にも精度および電源ひずみ率の上限などの条件が決められています。そのため、低ひずみ高精度交流電源が必要です。
またフリッカ/電圧変動試験では系統のインピーダンスを模擬する(リファレンス)インピーダンスネットワーク機器が必要です。
図中のプレシジョンパワーアナライザWT3000は、IEC61000-4-7 2002年版に対応した高調波測定機能とフリッカ測定機能を有した高精度電力計です。
規格試験だけではなく、機器の電源関連評価に幅広く使うことができます。
専用電流センサーと組み合わせることで、大電流規格であるIEC61000-3-12にも対応が可能です。
前述の通り、規格ではクラス分けや限度値、緩和処置の適用など面倒な設定や規格の調査が必要です。ソフトウエア 761921は、クラス分け, 限度値判定, 緩和処置の適応から試験レポートの作成までをサポートするソフトウエアです。これにより、規格試験時間の大幅な削減が可能になります。

IEC規格試験の構成
図4. IEC規格試験の構成

*:写真は、株式会社NF回路設計ブロック製電源です。

4. まとめ

ここで紹介したプレシジョンパワーアナライザWT3000は省エネ機器の開発、設計から完成品検査まで幅広く使用されています。
省エネ機器の電源関連試験で幅広く活用されることを期待します。

概要:

(月刊「トランジスタ技術」2005年2月号掲載)
横河M&C株式会社 MCC技術部 河崎 誠
通信測定器事業部第2開発PJTセンター 数見 昌弘

1.概要

電力測定器は、電気機器や電力設備の消費電力を測定する装置であり、家電製品、照明器具、産業用機器などの研究開発、生産ライン、受配電設備などの分野で、幅広く使用されています。
近年の地球環境問題やエネルギー資源の有効活用の観点から電気機器の省エネルギー化の要求が高まっています。そのため、機器の高効率化、小型化が進められる中、高周波駆動の電力変換部を持つ機器が増えており、より広い周波数帯域、より高精度の電力計測が求められています。
さらに高効率化のために、電力変換器は複雑な電力制御を行っており、その電力変換回路内の変換過程ごとに消費される電力を細かく測定する必要性が高まってきています。
一方、環境マネージメントシステム(ISO14001)の認定企業や省エネルギー法の規定により、電力量の管理も必要になってきています。

2.電力測定原理

2. 1. 交流信号の基本原理

●有効電力は瞬時電圧と瞬時電流の積の平均。
交流の電力は、負荷が容量性(コンデンサ)の場合や誘導性(インダクタンス)の場合は電圧と電流の間に位相差が生じます。電圧の瞬時値u(t)および電流の瞬時値i(t)がそれぞれ正弦波形であり、式1 と表せる場合、交流の電力の瞬時値 p は、次のように表されます。
式2
U:電圧実効値 I:電流実効値 φは電圧と電流の位相差
pは時間に無関係の「UIcosφ」と、電圧や電流の2倍の周波数の交流分「-UIcos(2ωt-φ)」の和になります。負荷で消費される単位時間あたりの電力Pは、pの平均値であるため、pの交流分「-UIcos(2ωt-φ)」はゼロとなり、電力Pは、P=UIcosφ[W]になります。上記をまとめると、単位時間あたりの電力は以下の式になります。
式3

負荷の種類と電圧、電流の位相差の関係
図1:負荷の種類と電圧、電流の位相差の関係

●有効電力、無効電力、皮相電力
交流では、電圧と電流の積UIすべてが負荷で消費される電力ではありません。同じ電圧と電流でも、その位相差φによって消費される電力が異なります。図1に負荷が抵抗、インダクタンス、キャパシタンスの場合の電圧と電流の関係を示します。電圧実効値と電流実効値の積UIは、皮相電力S(apparent power単位:VA)といわれ、見かけの電力を表します。皮相電力は、機器の電気容量を表すのに用いられます。皮相電力のうち、前述の負荷で消費される電力を有効電力P(active powerまたはeffective power 単位:W)、消費に寄与しない電力を無効Q(reactive power 単位:var)といいます。
皮相電力、有効電力、無効電力の関係は以下の式で表されます。

ここで、cosφは、皮相電力に対して実際に負荷で消費された電力の割合を示したもので、これを力率λ(power factor)といいます。

式4

皮相電力、有効電力、無効電力の関係

図2:皮相電力、有効電力、無効電力の関係

 

2. 2. ひずみ波の電力 有効電力は各周波数成分ごとの電圧、電流、位相の積の総和。

有効電力は、瞬時電圧と瞬時電流の積を電圧または電流の一周期の区間平均することで表されます。ひずみ波の電圧、電流および電力が含まれる場合には、電圧、電流、有効電力は、次の式で表されます。

式1

nは高調波成分の次数、U,Iはn次成分の電圧、電流実効値、φnはn次成分の電圧と電流間の位相差

ひずみ波電圧とひずみ波電流による有効電力は、同じ高調波成分(周波数)の電圧、電流と力率の積から得られる有効電力の総和であることが分かります。異なる周波数成分による電圧と電流の積の平均値はゼロ となり、有効電力にならないことを表しています。有効電力を測定する場合には、電圧あるいは電流の一方が高い周波数成分が含まれていたとしても、低い方の周波数帯域の特性をもつ測定器を使用すれば良いことになります。

2. 3. 三相電力

●基本は各相の総和
三相の電力は、各相の電力を3台の電力計を用いて測定し、それぞれの電力を加算すれば求まります(図3参照)。しかし、実際の電力系統では図4のように、中線が存在しないことがあります。このような場合はブロンデルの定理より図4のように電力計を2台使用してその和から求めることができます。

3つの電力計を用いた三相電力測定方式
図3:3つの電力計を用いた三相電力測定方式

2電力計法による三相3線結線
図4:2電力計法による三相3線結線

●ブロンデルの定理
「多相の電力は送っている電線の数がn本の時、n-1台の電力計で測定することができる」

3つの電力計による測定では、中線を基準にした各相電圧と各相電流から電力を測定しているのに対して、2電力計法の場合は、各線間電圧と関係する相電流から電力を測定することになります。理論上は、いずれの方法でも三相のトータル電力の値は同じになります。これをベクトル式(図5参照)を用いて以下に説明します。

式2

2電力計法の場合、線間電圧と相電流の位相差がそれぞれ異なるため、各々の電力計で表示される値は異なります。また、相電圧と相電流の位相関係により、線間電圧と相電流との位相差が90度以上になる場合もあるため、この場合は負の電力を表示することになります。よって電力の値は、あくまで三相電力のトータル値のみが意味を持つことになります。また、2電力計法を用いた場合、基本的には三相不平衡状態でも有効電力は正しく測定できますが、各相電流のベクトル和が零にならない状態(例えば、中線電流が流れる場合など)では、上記の式のUT×(IR+IS+IT)の項が零にならないため、この部分が電力計表示値に対して測定誤差となります。

三相電圧、電流ベクトル図
図5:三相電圧、電流ベクトル図

3. 電力測定器の仕組み

3. 1. 電力計の種類 ベンチトップ型とポータブル型

電力計は一般的にポータブル型(携帯型)とベンチトップ型(ラックマウント型)に大別されます。ポータブル型は小形化、軽量化設計により携帯に適しており、クランプオンプローブを装着し、現場での活線状態での測定が可能となります(写真1参照)。特に、近年における省エネルギー政策や環境保全に関する国際規格ISO14000を推進していく上で、工場、オフィスサイドでの簡易的な電力量管理、及び電力ラインの品質管理にはこのタイプを使用すれば測定が可能です。
一方、ベンチトップ型では単相測定用の1チャネル入力モデルから、三相測定用の2または3チャネル用、さらには1台で三相2系統(最大6チャネル)を同時に測定できるモデルまで多数の機種が用意されています。こちらのタイプは、一般に電流が直接入力式になっているためにポータブル型よりも測定精度が良く、他の測定器類とともに計測しシステムとしてラックに組込まれて製品の評価試験などに使用される場合が多いようです。(写真2参照)

ポータブル型電力計 CW240
写真1:ポータブル型電力計(CW240)
ベンチトップ型電力計 WT3000
写真2:ベンチトップ型電力計(WT3000)

●電力計の構成
一般的なディジタル方式の回路をもった電力計の構成を図6に示します。電圧入力部(VOLTAGE INPUT)、電流入力部(CURRENT INPUT)、DSP部、CPU部、表示部、およびインタフェース部で構成されています。電圧入力回路では、入力電圧は分圧器とOPアンプで正規化された電圧になり、A/D変換器に入力されます。電流入力回路では、分流器により閉路になっており、分流器の両端電圧はOPアンプで増幅/正規化されてA/D変換器に入力されます。この方式により電流レンジを切り替えても電流入力回路は開路にならないので、通電したままでも安全にレンジ切り替えができ、通信によるリモート制御も可能となります。電圧回路と電流回路のA/D変換器の出力であるディジタルデータは、絶縁素子(ISOLATOR)を使って絶縁され、DSP(Digital Signal Processor)に送られます。 DSPでは、サンプリングしたディジタル値を電圧、電流、有効電力に変換処理したものを一定期間加算し、その加算値をサンプリング数で除して、電圧、電流、有効電力の測定値を求めています。  
電圧入力方式には、図6に示した抵抗分圧方式の他にVT(変圧器)方式などがあります。測定対象に合わせて、適切な入力形式をもつ測定器を選択する必要があります。また、電流入力方式には、シャント入力方式、CT(変流器)方式などがあります。特にポータブルタイプの場合、電流入力方式はクランプオンプローブになります。VT方式、CT方式およびクランププローブでは、その入力部で一次側と絶縁されるため、電力計本体は絶縁素子を持ちません。

電力計の構成
図6:電力計の構成
 

3. 2. 電圧入力回路の 発熱と電圧係数に注意しなければならない大電圧測定

一般的な抵抗分圧方式の電圧入力部を図7に示します。入力電圧は内部で扱いやすい低電圧に分圧するための初段回路と正規化するためのレンジ切り替え回路で構成されます。電力計の入力精度は初段アンプの性能で大きく左右されます。初段アンプおよび入力抵抗はそれ自身の誤差だけでなく、1000Vまでという大電圧が直接入力されるため耐圧特性、自己発熱による温度ドリフトに影響する温度係数、電圧係数に注意して部品を選定する必要があります。また電圧回路を測定回路に接続すると、電源側から見れば電圧入力抵抗が負荷に見えてしまいます。そのため抵抗値はできるだけ大きな抵抗であることが望ましいと言えます。抵抗が大きくなる一方で、入力回路の周波数特性は悪くなる傾向になります。これは入力の抵抗と実装面との浮遊容量のため、あたかも入力抵抗と浮遊容量による微分回路が構成され、抵抗が大きいほど周波数特性に影響を与えてしまい低くなります。この影響を軽減させるためには、リファレンス抵抗(図7中R2,R3)にコンデンサ(図7中C2,C3)を挿入し周波数特性を補正します。安定した性能を得るには、入力抵抗と実装面との距離を離したり、入力抵抗に大きい容量や安定した容量結合させるためのシールドをあえて近くに実装するなどして、浮遊容量という不確定な要因を少なくすることが必要です。

電圧入力回路
図7:電圧入力回路(簡略図:抵抗分圧方式)

3. 3. 電流入力回路 シャント抵抗、クランプセンサ、CTなどの電流センシング

電流入力回路は電流信号を扱いやすい信号に変換します。測定する電流値や目的により、シャント抵抗、CT、クランプオンセンサを使用します。以下にそれぞれの特徴を示します。

●シャント抵抗
 シャント抵抗に電流を通電したときの両端電圧を検出します。抵抗体での測定は他の方法と比べて技術的に確立されており、部品も豊富なため高精度な測定ができます。しかし、抵抗に電流を流すため発熱によるドリフトが問題になります。発熱を抑えるためには抵抗値を小さくする必要があります。一方、低抵抗になったときには抵抗体内部のインダクタンス成分が相対的に大きく見えてくるため周波数特性の平坦度の維持が困難になります。また出力側の電圧が微小になるため、抵抗体内部の熱起電力に注意する必要があります。熱起電力は抵抗内部の抵抗体と導電部の接合点が異種金属であるために発生する起電力で、高精度な測定をするためには抵抗体と導体の材質の選定が重要になります。

●クランプオンプローブ
クランプオンプローブは活線状態のケーブルを断線することなくクランプし、一次側の電流を絶縁して、正確に二次側に信号を伝達する目的があります。基本的には、一次側が1ターンの変流器と考えられるため、回路図と等価回路は図8となります。この図では巻線数2000ターン、負荷抵抗10Ωですから、たとえば一次側が200Aの時に二次側に1Vの電圧が得られます。しかしこの値は変流器が理想的に動作した場合で、実際にはE0=K×I1/n×R で示されます。ここでE0は二次側電圧、I1は一次電流、nは二次側巻線数、Rは負荷抵抗、Kは結合係数を表します。
結合係数は、鉄心材料(透磁率や磁束密度)、鉄心断面積、鉄心開閉部のギャップ、巻線数、線径、平均磁路長、負荷抵抗や構造などで決まります。一般的に鉄心は透磁率の高いパーマロイを使用する場合が多いようです。
一次電流と二次電圧、クランプする線径などから鉄心断面積、巻線数、平均磁路長、負荷抵抗を決めていきますが、巻線によるインダクタンスや抵抗は位相特性や周波数特性に影響を与えます。これらの影響を補正するために図8のようなC-R回路を追加する場合もあります。また、巻線数を調整したり、巻線抵抗を減らすために線径を太くする方法がありますが、クランプ部分が太くなり過ぎて実使用に耐えないものになってしまうため注意が必要です。
一方、隣接する銅線に流れる電流による磁界やクランプ内部の導線位置の影響を軽減するために、シールドを追加したり巻線の位置を極力均等にします。
 

クランプオンプローブの回路図例
クランプオンプローブの回路図例

クランプオンプローブの等価回路
クランプオンプローブの等価回路

L1:一次側の漏洩インダクタンス
L2:二次側の漏洩インダクタンス
R1:一次側の巻線抵抗
R2:二次側の巻線抵抗
LM:相互インダクタンス
RM:鉄損

図8:電流入力回路図と等価回路(クランプオンプローブ)

●CT
 原理はクランプオンプローブと同じです。クランプオンプローブと大きく異なるのは測定対象に貫通させるなど活線状態のまま接続できない点です。一方で巻き線部が固定されているため特性が極めて安定しています。DCを測定するための回路が搭載されたものもあり、より高精度な大電流測定に適します。

3. 4. 演算部

有効電力は電圧と電流の瞬時値の積を平均化することで求められます。
旧来のアナログタイプの電力測定器の場合は、電圧、電流をアナログ掛け算器で掛け算し、LPFで平均化して電力測定を実現していました。現在ではディジタルサンプリング、ディジタル平均方式の電力計が主流となっています。ディジタル方式のメリットは以下のとおりです。

 ・アナログ素子が少ないため高精度化が容易で製品ごとの個体差が少ない。
 ・測定、演算項目間の同時性がある。
 ・微小入力時での精度(直線性)が良く力率誤差が小さい。
 ・サンプルデータをディジタル的に処理できるので、波形表示、解析などが可能になる。

ディジタルサンプリング方式の電力計には平均化の手法上、
FIR 型 (Finite Impulse Response : 有限長インパルス応答)ディジタルフィルタ方式と
IIR (Infinite Impulse Response : 無限長インパルス応答)型ディジタルフィルタ方式があります。

●高速な応答を実現しやすいFIR型ディジタルフィルタ方式 
FIR 型ディジタルフィルタ方式ではサンプル区間中の全サンプルデータの総和を平均して電力値を算出します。正確に測定するためにはサンプル区間を入力周期の1周期または数周期と同じにする必要があります。そのため入力信号をコンパレータ回路で信号のゼロレベル(ゼロクロスポイント)を検出し入力周期に同期した有効サンプル区間を検出します。この有効サンプル区間にあるサンプルデータの総和をサンプル数Nで割ることで電力値を得ます。

式

この方式では原理的に1周期の結果を平均することで有効電力が算出できるため高速応答を実現できます。

●安定した測定値を得やすいIIR型ディジタルフィルタ方式
IIR 型デジタルフィルタ方式では算出した瞬時電力の結果をIIR 型デジタルフィルタにて平滑することで有効電力を求めています。入力の周期を検出する必要がなく、原理的には測定休止期間がありません。そのためより安定した測定値が得られるという特長があります。

式
式

3. 5. 高調波測定機能 電力測定と電力品位の評価を実現するPLL回路とFFT演算

測定原理はFFTアナライザと同等です。FFTアナライザが周波数基準の解析を行うのに対して、電力計の高調波解析機能は基本波の倍数成分にある高調波次数の解析を行います。このために基本波周波数に同期したサンプルを実現する必要があります。この同期したサンプルを実現するのがPLL回路です。図9にPLL回路の概要を示します。

PLL回路による入力信号周期に周期下サンプルブロック生成
図9:PLL回路による入力信号周期に周期下サンプルブロック生成

 

位相コンパレータは2つの入力されたクロックの位相を比較し位相差信号をパルス出力します。電圧を印加することで発振周波数を変化させることが出来る電圧制御発信器(VCO)に位相差信号をループフィルタを通して直流化した信号を印加します。VCOの出力は位相比較器に入力されます。このときVCOの出力周波数を1/Nに分周して位相比較器に入力することで、VCOの出力は入力周波数のN倍の周波数になります。
これにより入力信号に同期したサンプルが可能になり、入力信号の基本波成分およびその整数倍成分が正確に測定することができる。以下に基本波成分の演算式を示します。

式

この演算式の特徴は無効電力Qを直接求めることが可能なことです。ひずみ波の皮相電力や無効電力は正確には定義されていませんが、各周波数成分においては有効電力、無効電力、皮相電力の関係は2.1項に示す基本的な定義を満たします。

4. 実際の計測事例でのポイント インバータ消費電力測定

インバータとは電力変換器の一つで、簡単に言うと直流を交流に変換する装置です。直流信号を交流信号に変換する場合、スイッチング回路を用いてパルス幅を変化させて出力を擬似的な交流信号を作ります。このようにパルス幅を変化させる変調方式をPWM変調方式と呼びます。図10に変調のイメージを図示します。

インバータ変調イメージ図
図10:インバータ変調イメージ図


●インバータ測定で必要な測定帯域の考え方 
インバータの用途でもっとも主流な対象はモータで、モータは抵抗とインダクタンスが直列につながった負荷です。R-L負荷の例としてR:1Ω、L:1mHに基本周波数30Hz、キャリア周波数10kHzのPWM電圧を印加した場合、R-L負荷の周波数特性、PWM電圧信号含有率と有効電力含有率のスペクトラムは図11のとおりです。
R-L負荷に高周波成分を有するPWM電圧を印加しても、高周波電流は負荷特性のためほとんど流れません。2.2項で述べたように有効電力測定には電圧あるいは電流のいずれか低い方の周波数帯域の特性をもつ測定器を使用すれば良いので、電圧PWM信号に極めて高い周波数成分が含まれていても電流信号には含まれないため、高い測定帯域が必ずしも必要とは言えません。図11の例から考えるとモータ駆動インバータの場合、ある程度の高精度測定を可能にするにはキャリア周波数の数倍までの測定帯域があればいいと言うことになります。

最新のインバータ駆動モータでは電圧測定に注意
インバータモータを試験する場合、モータの駆動特性はインバータ出力電圧の基本波実効値に左右されると考えられています。また、正弦波制御PWMの基本波実効値は平均値整流実効値校正(電圧MEAN)で得られる測定値とほぼ一致するので、インバータの電圧測定は平均値整流実効値校正で測定することが一般化しているようです。ただし近年の可変調PWM制御など正弦波PWM以外の変調信号では平均値整流実効値校正が基本波とはかけ離れた測定値となる場合があります。このようなケースでは3.4項のとおり電力計では高調波測定という機能を使えば正確な基本波測定が可能です。従来の電力計では定常的に電力を測定する場合と高調波の測定をする場合で、測定はモードを切り替える必要があったが、最新の電力計では電圧、電流、電力と、高調波測定が同時におこなえるようになっております。そのため、測定が容易になっただけでなく、電力測定値と基本波測定値の時間的同時性が保たれます。インバータ駆動回路では時間経過とともに変化する発熱が機器の特性に大きく影響するので同時にデータが取れることは大変重要であると言えます。

 

RL負荷 FFT結果 インピーダンス実数部
RL負荷 FFT結果 インピーダンス実数部

モータはR-L負荷なので周波数が高いとインピーダンスが増える


PWM FFT結果 電圧 電力含有率
PWM FFT結果 電圧 電力含有率
電力のスペクトルは基本成分に対してキャリア成分は極めて少ない
図11:PWMインバータの電圧、電力含有率とR-L負荷の周波数特性例

 

5. まとめ

インバータや電源などのパワーエレクトロニクスでは大電圧、大電流で駆動することが多く動作時に発熱を伴うため、回路特性の変化や配線のロスが影響することもあります。また複雑な制御回路を構成し、測定状態は時間変動とともに変化してしまうので同じ状態を保つことが大変困難になってきています。したがって、測定対象をより正確に測定するには入出力間の同時測定や各測定項目を時間的に同時に測定するという基本的な測定手段が実は極めて重要です。扱う信号のレベルや周波数に応じた最適な結線方法、測定のための条件設定などが測定器の選定以上に重要であるケースもあるので注意が必要です。

クランプ電力計 CW240
クランプ電力計 CW240

プレシジョンパワーアナライザ WT3000
プレシジョンパワーアナライザ WT3000

概要:

近年、家電機器や産業用機器などの電子機器回路はインバータの普及により複雑になっており、多チャネル、広帯域、高精度な測定器の要望が高まってきている。特に、地球環境問題としてCO2排出量の削減は大きなテーマとなっており、エネルギー消費の削減は非常に重要であり、それらを確認するための電力計計測の需要は増えてきている。
そこで、電力を計測する電力計、あるいは電力計測の基礎について説明する。

1.電力技術の動向

パワーエレクトロニクス分野のインバータ制御技術は家電製品、輸送機器などあらゆる分野で活用されている。また、パワー半導体など代替エネルギー分野へのインバータ技術製品も近年増えてきている。2000年以降になると、高効率化の追求が進み、省エネルギーへの関心の高まりやエナジースター、国際的な高調波規格、フリッカ規格などを背景に、さらに最適制御・効率改善・低騒音化のためにさまざまな改良が加えられてきている。

2.電力計の用途

電力計はさまざまな機器の消費電力を測定する製品であり、製品開発、評価、品質保証などの局面で広く使用されている。また、IEC61000-3-2,IEC61000-3-3などの高調波規格、フリッカ規格などにより電力系統に繋がる機器の高調波ひずみの問題などがあり、電力計での高調波測定、高調波規格試験などが重要になってきている。従って、電力計では従来の電圧、電流、電力の一般的なパラメータだけでなく、波形品位の測定を行う機能も電力計に求められている。

3.電力の基礎

電力は大きく分けると、一般家庭に普及している単相電力と、工場など産業用で使用される三相電力があり、三相電力は交流信号でかつ信号ラインが3本あるのでやや難しくなる。したがって、電力を理解するには、まずその物理的意味を把握した上で測定することが重要である。

3.1電力の基礎

一般に有効電力(以下電力)は電圧と電流の瞬時値(各々e(t)、i(t))の積である瞬時電力を積分し、1周期Tで平均したものである。

  式1

 上式において、電圧、電流が正弦波の場合には次のように表される。

   式2

ここで、Pはe(t)の実効値、Iはi(t)の実効値、φはe(t)、i(t)の位相差である。

この式は、電力を演算するために、電圧実効値と電流実効値、および電圧と電流の間の位相差φのパラメータcosΦを含んでいることを示している。このcosΦは力率である。従って、理想的なトランス、キャパシタ等の負荷の場合には力率が0に等しくなり、電圧と電流が0でない場合でも、電力が0に近い力率ゼロの状態となる。つまり、電力計としては位相の影響が重要な要素であることがわかる電圧、電流がひずみ波の場合の電力は、理想的には次のような式になる。

 式3

ここで、E0, I0は直流成分、Ek, Ik, φkはひずみ波成分(高調波成分)

この数式の意味は、任意の波形の電力が“同じ周波数成分をもつ電圧と電流でつくられる電力の総和”であることを示し、“異なる周波数成分は互いに独立しており電力とはならない”ことを意味する。従って、電力は電圧、電流のいずれか低い方の周波数帯域で制限されることがわかる。

3.2電力測定技術の変遷

従来、電力計は商用電源から供給される機器の消費電力の測定向けに指示計器が広く用いられてきた。この指示計器の原理は、コイルに流れる電流によって生じる磁束の力を利用して、電圧と電流の積を求める簡単な構造であった。1990年代、電子回路によるアナログ演算回路により電力値を求めディジタル表示するディジタル電力計が登場したが、2000年以降は、ディジタルオシロスコープの技術を応用したディジタルサンプリングにより電力値を求める製品が発売された。ディジタルサンプリング方式の電力計は、電圧実効値、電流実効値、電力(三相の場合は各相の値や三相電力)だけでなく、位相角、力率、電力積算値、電流積算値、周波数など同時に多くのパラメータを測定できる。また、規格に対応した高調波、フリッカ測定などができる機種(WT3000)などもあり、また、大型のカラー表示を採用する電力計も普及してきた。

プレシジョンパワーアナライザ WT3000

プレシジョンパワーアナライザ WT1800

ディジタルサンプリング方式の電力計
プレシジョンパワーアナライザ WT3000(左)とプレシジョンパワーアナライザ WT1800(右)

4.電力計の原理と使い方

4.1電力計の原理と内部構造

ディジタルサンプリング方式の電力計内部の演算方法は3項にて説明しているが、ディジタルサンプリング方式を採用しているため、以下のように近似できる。

 式4

サンプリング間隔Δtの瞬時電力が1周期分の区間分すべてを加算(総和)し、その周期Tで平均する。
そして、このサンプリングの間隔Δtが小さくなればなるほど演算としてはより正確になる。
電力計の内部構造は入力電圧・電流の波形が入力回路内にてディジタル値に変換される。それらのデータはDSPまたはCPUなどの演算回路にて演算を実施する。一方、旧方式であるアナログ演算式の電力計の場合には、瞬時電力の演算部分をアナログスイッチ回路により実現している。この方法は時分割掛算法と呼び、電圧(または電流)の入力レベルに比例する周期一定のパルス幅変調波形を作成し、電流(または電圧)入力波形をそのパルス波形に重畳させることで電圧波形と電流波形の積を演算している。
現実的には、利用するパルスの周期を先のディジタルサンプリング周波数と同レベルに設計して周波数応答性を確保しようとするが、この掛算回路での瞬時電力データをさらにをアナログのフィルタ回路を用いて平均化して電力値を得るために、ディジタルサンプリング方式よりも応答性が悪い。

4.2電力計の使用上の注意

測定値が正しくない場合、結線が間違っているケースが意外に多い。
従って、結線は十分注意する必要がある。

■ 単相電力
単相電力を測定するときには、電圧は負荷対して並列に、電流は直列に接続する。結線時は取扱説明書に配線例が記載されているのでこれを参考に結線すると良い。

単相電力結線図

■ 三相電力
三相3線の電力は、3台の電力計を用いて測定できるが、電力計を2台使用してその和から求めることもできる。これは2電力計法と呼ばれ、ブロンデルの定理"多相の電力は送っている電線の数がn本の時、n-1台の電力計で測定することができる"にて証明される。

三相電力結線図

特に、3つの相の電圧、電流全てを測定する必要がある場合には、三相3線の3電圧、3電流測定(2電力計法)を用いる。

結線図

三相電力測定の結線の場合、電流については相電流を測定しているが、電圧は各相の間の線間電圧を測定している。したがって、各チャネルの電力値は位相の状態により異なった値を示す場合もある。また、低力率時の評価では電圧・電流間の位相差の関係から電力値が負(マイナス)になる場合もあるが理論的には正しいので、結線ミスではないことに注意したい。 また、ベクトル表示は三相の電圧、電流の位相の状態を簡単に把握できるので便利である。

キーワード

有効電力

負荷の純抵抗分で消費される電力エネルギーで、運動・熱・光エネルギーに変換されて外部に対して仕事を行う電力値を意味する。電力の定義式に示されるように、瞬時の電圧値と電流値の積を平均して求まる。
これに対して、電圧の実効値と電流の実効値との積を皮相電力、また皮相電力と有効電力間の次式の関係からも求まる値を無効電力という。

式:無効電力

力率

入力波形が正弦波の場合、電圧・電流間の位相差をΦとしたときcosΦを力率と言う。
皮相電力に対する有効電力の比で示すこともできる。この場合は、入力されたエネルギーに対して仕事に変換されたエネルギーの比率を意味する。

力率誤差

電力計を用いて電力を求める場合、入力された電圧・電流波形間の位相差の他に、電力計側で生じる電圧・電流間の位相のズレによって起こる誤差を示す(図Aを参照)。
実際には、電圧・電流の各々の入力アナログ回路の入・出力間での位相遅れ(波形の遅れ)に起因し、その遅れの度合いが電圧・電流間各々の入力回路間でズレているために、あたかも入力の位相差が最初から大きくズレているように表示される。
位相遅れの特性は入力周波数に大きく依存するため、電力計にはより広い周波数帯域が求められる。さらに、力率の定義式からも明らかなように、入力波形での位相差が大きく90度に近い状態(力率が悪い)ほど、その影饗が大きくなる。

力率誤差

計器損失

測定器によって消費される電力値のことを意味する。
この値が小さいほど測定系に与える影響が少なく、誤差も小さくなる。一般には電圧側は入力抵抗値で表し、大きいほど望ましく、電流側は入力抵抗値またはその抵抗で消費されるVA値で表すが、小さいほど望ましい。

PT・CT比

PT(Potential Transformer)は変圧器を意味し、l次と2次の巻線比で1次電圧を2次電圧に正確にまた安全に変換する。CT(Current Transformer)は同様に変流器を意味する。
これらの変換器を用いることで.高電圧、大電流を測定し易い値に変換できる。PT比・CT比は使用される変換器のl次と2次の巻線比を示し、その値を測定器に入力することで、PT・CTを介す前の入力値への換算が自動的に計算され、直読が可能となる

クレストファクタ

波高率とも言う。実効値に対する波高値の比を示す。
電力計等の交流波形の測定器では、内部回路のダイナミックレンジを意味していて、この値が大きいほど、ひずみの大きい波形の測定が可能となる。

CMRR

Common Mode Rejection Ratio入力信号源と測定器の接地(アース)間に発生する電圧(コモンモード電圧)によって出力にあらわれる影響をどの程度除去できるかを示す数値。
一般にはdBもしくは% of rangeにて表現される。
図Bに示すように、入力信号源の一端と測定器内の増幅器のアース間にコモンモード電圧Ecmがあるとき、このコモンモード電圧により測定器の対接地インピーダンスを通じて電流が流れ、入力端子間にノーマルモードの電圧Enとなって現れる。この値が増幅され出力に誤差分に生じさせる。

CMRR

電力校正体系

400Hz以下の電力測定については、国家標準が確立していて標準電力変換器を通じてトレーサビリティが確保されている。
しかし、それ以上の測定帯域を持つ機種は国家より直接標準電力の供給が受けられないため、電圧・電流・位相の各国家標準より理論的に電力標準値を求めて校正している(図C)。

電力校正体系


※日刊工業新聞社「電子技術」誌  1995年9月号掲載より一部引用

概要:

1.概要

地球温暖化は、毎日消費するエネルギーと密接な関係にあります。とくに近年は、長時間スイッチを入れた状態になりがちなオフィス機器のエネルギー消費が問題になっています。
「国際エネルギースタープログラム」は、これらの機器の消費電力を削減するために生まれた制度です。
国際エネルギースタープログラムは、1995年10月から日米両政府の合意のもとに実施されています。EU、カナダ、オーストラリア、台湾など世界7カ国で実施されているオフィス機器の国際省エネルギー制度です。
コンピュータ、ディスプレイおよびプリンター、スキャナ、ファクシミリ等の画像機器が対象になります。
製品の稼動、スリープ、オフ時の消費電力などについて、省エネ性能の優れた上位25%の製品が適合するように基準が設定されて、この基準を満たす製品にロゴの使用が認められます。

このプログラムでは、機器の種類によって試験方法および測定器の性能を細かく規定しています。また省エネを実現した機器では稼動状態とスリープ状態の消費電力の差が激しく測定が難しくなるため、測定器の使用方法および選別には注意が必要です。

2.エネルギースター対象機器の試験条件

対象機器によって適合基準と試験方法が決められています。

 2.1.コンピュータおよびディスプレイ
消費電力と低消費電力モードへの移行時間が決められています。

■ コンピュータ

  • 消費電力
    アイドル時、スリー-プ時およびオフ時消費電力(W)
  • スリープまたはオフモードへの移行時間
    コンピュータが無動作状態になってから15分以内(ディスプレイ)、30分以内(コンピュータ)

■ ディスプレイ

  • 消費電力
    稼働時、スリープ時およびオフ時消費電力(W)
  • スリープまたはオフモードへの移行時間
    ディスプレイが無動作状態になってから30分以内

 2.2.画像機器
機器の種類によって試験手順と適合基準が決められています。

2.2.1.Typical Electricity Consumption (TEC)試験手順

● 対象機器
 電子写真(EP)や固体インク(SI)などの技術を使用する標準サイズの画像機器(IE)製品
  (複写機、デジタル印刷機、ファクシミリ、複合機(MFD)、プリンターなど)

● 判定基準
 概念的1週間の消費電力量を基準とします。
 1日の稼動状態を以下のように規定しています。

TEC測定で規定する1日の稼動状態

図1:TEC測定で規定する1日の稼動状態

 1回の測定での消費電力は以下の手順で測定します。

TEC測定の手順

図2:TEC測定の手順

 測定結果を元に1日あたりのジョブに必要な消費電力量を算出します。

 ジョブに必要な平均消費電力量
     =(ジョブ2+ジョブ3+ジョブ4)/3

 1日あたりのジョブに必要な消費電力量
     =(ジョブ1×2)+[(1日あたりのジョブ数-2)×ジョブに必要な平均消費電力量)]

 TECは対象機器のよって計算方法が2通りあります。

● プリンタ, プリント機能付きデジタル印刷機, プリント機能付き複合機, およびファクシミリの場合

 1日あたりのスリープ時の消費電力量
     =[24時間-((1日あたりのジョブ数/4)+(最終時間×2))] ×スリープ時の消費電力

 1日あたりの消費電力量
    =1日あたりのジョブに必要な消費電力量+(2×最終時の消費電力量)
      +1日あたりのスリープ時の消費電力量

 TEC = (1日あたりの消費電力量×5)+(スリープ時の消費電力×48)

● 複写機, デジタル印刷機, プリント機能の無い複合機の場合

 1日あたりの自動オフ時の消費電力量
    =[24時間-((1日あたりのジョブ数/4)+(最終時間×2))] ×自動オフ時の消費電力

 1日あたりの消費電力量
    =1日あたりのジョブに必要な消費電力量+(2×最終時の消費電力量)
       +1日あたりの自動オフ時の消費電力量

 TEC = (1日あたりの消費電力量×5)+(自動オフ時の消費電力×48)

2.2.2.Operational Mode (OM)試験手順

以下対象機器に含まれる画像機器は、OM試験手順で決められた試験方法で
消費電力と低消費電力モードへの移行時間が評価されます。

● 対象機器
 インクジェット(IJ), ドットマトリックス, インパクト等のマーキング技術を使用する製品や
 スキャナ、すべての大判および小判機器
● 判定基準
 ・消費電力 : スリープ時および待機時の消費電力
 ・スリープ状態への移行時間 : 無動作状態になってから5~60分以内スリープ状態になること

Note : 参考文献
 “ENERGY STAR® Qualified Imaging Equipment Operational Mode (OM) Test Procedure”


 2.3.測定への要求事項

2.3.1.電源および周囲環境

・ 電源電圧
  北米/台湾 : 115V (±1%)  AC, 60 Hz (±1%)
  欧州/豪州/ニュージーランド : 230V(±1%) AC, 50 Hz (±1%)
  日本 : 100 V(±1%) AC, 50 Hz (±1%)/60 Hz (±1%)
  注:最大消費電力が1.5kWを超える製品に対して、電圧範囲は±4%である。

・ 全高調波歪み (THD)(電圧)< 2% THD
 (最大消費電力が1.5kWを超える製品に対しては、<5% THD)

・ 周囲温度 : 23℃ ± 5℃
・ 相対湿度 : 10 - 80 %

2.3.2.電力計への要求事項

・ 有効電力測定帯域
  有効電力測定帯域 3 kHz以上
  SW方式の電源を内蔵した機器を考慮する。

・ 有効電力測定分解能

  P≦10W 0.01W
  10W<P≦100W 0.1W
  100W<P≦1500W 1W
  1.5kW<P 10W

・ 積算消費電力量の測定値は、平均消費電力に変換された場合に、これらの値と一致する分解能でなくてはならい。
・ 精度  0.5%以内
・ 校正  12ヶ月ごとに校正を実施しなければならない。

Note : 参考文献
 “TEST CONDITIONS AND EQUIPMENT FOR ENERGY STAR® IMAGING EQUIPMENT PRODUCTS”

3.エネルギースター対象機器向けの電力計

3.1.積算機能

コピー機のようなOA機器では、感熱工程、紙送り工程などで大きなエネルギーを消費します。
省エネルギー化を実現している機器では、必要時のみエネルギーを消費し、必要以外のエネルギーを削減することで省エネを実現しています。そのため、稼動状態を測定する場合でも変動の激しい測定となります。
測定器の測定値表示をモニターしても値の変動が激しいため、平均的な稼動状態の電力を測定するのは困難です。
このため電力計の積算機能を使って測定します。
積算電力を時間換算することで稼動状態の平均的な電力を得ることができます。
式
   Pavg:稼動区間の平均的な電力(W)
   WP:稼動区間の積算電力(Wh)
   Ti:稼働時間(積算時間)(h)

変動する対象の積算で重要なことは、測定ギャップの有無です。
測定器によっては、データ更新区間中に有効データ区間と、測定していない無効データ区間(測定ギャップ)が存在するものがあるので注意が必要です。
測定ギャップがあるとその区間の変動を測定できないため、正しい結果が得られなくなります。
横河電機が現在販売しているWTシリーズは、すべてNo Gapで積算値を測定するので、安心して使用いただけます。

変動測定対象と測定器の測定区間

図3 変動測定対象と測定器の測定区間

電力計によっては、測定ギャップが生じるものがあるので注意が必要です。
WTシリーズでも積算ではない通常測定ではギャップが生じます。
有効電力の測定データを収集してPCで積算演算するような処理をすると、WTシリーズ本体で積算した結果と異なることがありますので注意が必要です。
さらに、WTシリーズは豊富な演算機能により、積算区間内の平均電力をリアルタイムに表示できます。


3.2.確度

エネルギースター対象機器は電力測定では、測定精度0.5%以内という規定があります。
電力計の測定確度は読み値誤差とレンジ誤差で表現されます。
以下に測定器の設定と測定誤差についての例を示します。

条件例
  レンジ設定: 100V/1A レンジ
  電力計確度: 仕様 0.1% of reading + 0.05% of range
例1
  入力の条件: 100V,1A 力率1 有効電力 100W
  トータルの誤差:  
  100W×(0.1% of reading)+100Wレンジ×(0.05% of range)
    =0.1W+0.05W  =0.15W (0.15% of reading)
例2
  入力の条件: 100V,0.5A 力率1 有効電力 50W
  トータルの誤差 :  
  50W×(0.1% of reading)+100Wレンジ×(0.05% of range)
  =0.05W+0.05W =0.1W (0.2% of reading)

このように同じ測定レンジでも、測定レンジに対して入力が小さいときの方が測定誤差が悪くなることがわかります。 適正レンジで測定することが重要です。
機器の省エネ化、待機電力の削減が進むことにより、よりワイドな電流レンジが必要になってきます。
コンピュータやディスプレイ、OM 試験手順が適応される画像機器では、待機状態の微小電流を測定ことが多いため、最適な微小電流レンジを有する測定器が必要です。
変動の激しい測定を行うときにはレンジを固定にして、積算で測定を行います。このとき測定レンジはオーバーレンジにならないように、測定期間中の最大の値に合わせてレンジを設定します。
測定期間中に測定対象の消費電力が小さくなると、レンジに対して小さい入力になります。
この期間の測定は、測定精度が悪くなってしまいます。
以下に積算電力から平均電力を求めるときの測定誤差の考え方を示します。

変動する電力の誤差考察の例

図4 変動する電力の誤差考察の例

積算電力:100W×15/60+10W×135/60=25+22.5=47.5 (Wh)
平均電力:47.5 Wh/150×60 = 19 (W)
100Wレンジで19Wを測定したときの確度:
  電力計の仕様 0.1% of reading + 0.05% of range
  19W×0.1%+100W×0.05%=0.019W+0.05W=0.069W
  測定値 19Wに対して 0.36%

一般的に、レンジに対して測定入力が小さい区間が多いほど測定誤差が大きくなります。
仮に積算中にレンジを変更できたとしても、レンジ変更には時間がかかり測定ギャップができてしまいます。変動が激しい測定をしていると、レンジが頻繁に変更されて、かえって誤差が大きくなってしまう可能性もあります。
TEC試験手順が適応される画像機器では、固定レンジでダイナミックレンジの広い測定を行うことになりますので、レンジ誤差の小さい測定器を選択することが重要になります。
測定器のレンジ誤差を左右するのは測定回路の直線性の性能です。
現在発売している横河電機の電力計は、すべてディジタルサンプリング方式を採用しているため、アナログ掛け算方式など他の方式の電力計に比べて優れた直線性を示します。
また、測定器によっては、電力測定値が小さいときには測定値を強制的にゼロにしてしまい電力値が測定できない測定器もありますので注意が必要です。

3.3.横河電機の測定器と要求事項との比較

横河電機の測定器と要求事項との比較

4.まとめ

エネルギースター対象機器の適合試験についてと、測定器に求められる性能について説明しました。
エネルギースター対象機器の測定における横河のWTシリーズの優位性は、以下のとおりです。

  • ディジタルサンプリング方式による優れた直線性
    測定レンジに対して小さい入力でも高精度な測定値を示します。
  • ギャップのない積算機能
    測定ギャップのない積算により変動の激しい測定対象の正確な積算値を得ることができます。
    さらに演算機能により積算区間内の平均電力をリアルタイムに表示できます。

その優れた直線性とワイドレンジで、デジタルパワーメータ WT1600が日本国内の画像機器業界各社で多く
採用されています。

また横河電機は世界最高精度の電力測定精度に加えて、高調波電流およびフリッカ等の低周波EMCに関する最新の規格試験に対応するフラグシップ製品のプレシジョンパワーアナライザWT3000を提供しており、
より高い要求に対応しています。

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