太陽光・風力発電のパワーコンディショナ評価

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

1. 背景Introduction
地球環境問題への対応としてメガソーラーを含む太陽光発電システム、あるいは風力発電システムなどが導入されている再生可能エネルギーにおいては、パワーコンディショナ(インバータ、PCSあるいはパワコンとも呼ぶ)を使って、太陽光モジュールや風車により発電された直流電力を交流電力に変換する。この変換効率は年々高くなっており、変換ロスの少ない製品が市場での競争力を高める1つの指標となっている
太陽光発電用パワーコンディショナの効率測定方法については、日本ではJIS C 8961国際規格ではIEC 61683などで規定されている。また、効率測定においても、最大効率だけではなく、欧州効率、あるいは米国のCEC効率が規定されている場合があり、各国でそれぞれの規制があることが多い。
一般的に最大効率は効率が最大となる特定条件における評価データであるが、たとえば欧州効率やCEC効率は、軽負荷時から定格負荷時までの複数における効率を測定し、負荷率に応じて重み付けをして算出している。
系統連系においてもさまざまな問題を抱えている。太陽光発電、風力発電などの出力が大量に電力系統に連系された場合、電力系統の擾乱により一斉に解列(切り離し)すると電力品質に大きな影響を与える。このような一斉解列等による問題を防止するため、瞬時的な電圧低下が起こっても運転を継続する運転継続性能が重要となっている。系統擾乱時においても電力品質を確保するために必要となる分散電源の運転継続性能要件の整備が引き続き進められている。これらの効率評価では電圧変動、周波数変動試験、温度上昇試験などがあり、電力計を使った電力計測、および波形測定器を使った瞬時波形変動確認や温度測定などの試験が世界各国で行われている。

2. 課題Challenges
発電される再生可能エネルギーの量は、自然の状況により変動するケースが多いため、発電容量の急増により電力系統が不安定になることがある。また、系統落雷があり発電システム側が一斉に解列する場合なども電力系統に影響を与える。
このような現象が起こった時の有効電力、無効電力、電圧値、周波数、力率、効率などの変動を捉えて詳細に確認したい要望がある
また、波形測定器系統を長時間連続監視して異常な波形データを捉えることが主な目的であるが、長時間に渡った波形観測ではデータ量が多くなってしまい、気になる波形や異常データを探しにくくなる、という問題もある
このような問題を解決したいため、電力計の数値データと波形データを長時間、同一時間軸上で測定して異常データなどを確認・監視をしたいケースが増えてきている。

3. IS8000による課題解決Solution

オンラインモニターによるデータ確認と操作
DLソフトウェアとWTソフトウェアの統合
IEEE1588によるWT/DL時刻同期表示
リンクファイル/分割ファイルによるデータ管理
確度保証された信頼性の高い電力データの活用
波形と電力計データを使って自動レポート作成

 

IS8000による課題解決

4. IS8000による提案Detailed description
4.1 オンラインモニターによるデータ確認と操作
オンラインモニター操作は、通信インタフェース経由で計測器をPCからリモートコントロールできる。
スコープコーダDL950あるいは電力計WT5000本体のタッチパネルスクリーン(コントロール画面)がPC画面に表示される。計測器本体の操作と同じように離れた場所にあるPC上で設定を自由に変更でき、測定波形や電力計データも確認できる。したがって、製品本体と異なるソフトウェアの操作を新たに覚える必要はない*
2台接続したときも同時に2画面、PC上に表示できる。設定に問題がないようであれば、その後、波形データあるいは電力計データを収集できる。
コントロール室から離れた場所にあるDL950の波形をPC上で確認できるので、実験室とコントロール室を往復しながら波形データの保存や設定条件を変更するなどの手間を減らすことができ、効率的データ収集が可能になる。
*本体のタッチパネル操作と一部機能のみ。ハードキー操作は除く

図1 DL950のリモートコントロール画面

1 DL950のリモートコントロール画面

図2 WT5000のリモートコントロール画面

2 WT5000のリモートコントロール画面

4.2 DLソフトウェアとWTソフトウェアの統合
オシロスコープと電力計のソフトウェアは別々のソフトウェアでデータ収集を行うため一般的にファイル形式が異なる。今回、新たに開発した統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000波形データと電力計データの同期測定という測定ニーズに合わせて1つの統合計測ソフトウェアとして使用できる。データ収集ソフトウェアを統一することでオシロスコープと電力計の設定方法を可能な限り同じ操作にしている。今までは別々に測定して保存していた方法に比べてファイルの整理や管理の業務を大幅に削減することが可能となる。

図3 波形チャネルと電力データの表示&保存設定

3 波形チャネルと電力データの表示&保存設定

図4 電圧波形変動時の電圧・電力値変動の確認例

4 電圧波形変動時の電圧・電力値変動の確認例

4.3  IEEE1588規格*WT/DL時刻同期表示
波形測定器の波形演算機能を使って電力値を表示させる方法により電力値の検証を行うケースがあるが、測定波形とトレーサビリティのとれた高精度な電力値としての結果を得ることはできない。IS8000統合計測ソフトウェアプラットフォームはIEEE1588時刻同期を使いDL950WT5000を同時に接続*することで同期測定が簡単に可能になる。DL950WT5000の同期誤差10μs*である。
DL950で取得できる最速20MS/s8ch同時の連続波形データとともにWT5000の電力データをPCの同一時間軸上に表示できる。そのため、電力計データは波形データとともに時系列のトレンド表示ができるので微妙な電力変動を確認できる。
たとえば実際に起こっている電力変動から異常波形データを確認し問題を発見することも可能になる。

* IEEE1588規格:ネットワーク上でつながる機器間の時刻同期に使用される高精度
 時間プロトコル(PTP)。PTP=Precision Time Protocol
* DL950 IEEE1588マスター機能(時刻同期)(/C40オプション)が必要
* DL950 2台のIEEE1588同期の誤差は±150ns
* DL950 10Gbpsイーサネット(/C60オプション)が必要
* 2台の同期計測はIS8000 複数台同期オプション(/SY1)が必要

図5 波形と電力データの同期測定データの解析

5 波形と電力データの同期測定データの解析

 

 IEEE1588規格*のWT/DL時刻同期表示

4.4 リンクファイル/分割ファイルによるデータ管理
IS8000は、測定したデータを1つのリンクファイルとして管理できる。従来のように別々に測定した波形データファイルと電力データファイルを関連づけるために同じ名前をつけて保存する、あるいは測定データごとにフォルダを作成し、その中に波形ファイルと電力データファイルを入れて管理するなどの作業は不要となる。IS8000を使って同時に測定することで波形データも電力データも1つの統合ファイルとして管理できる。
また、便利なファイル分割機能もある。ファイルを分割する時間やサイズを設定することで、分割ファイルを作りながら全時間のデータファイルを一元管理できる。測定の途中で解析をしたい場合は、分割ボタンを押すことでファイルを分割させて解析することもできる。たとえば、24時間の測定を行っているときに1時間ごとのファイル分割時間を設定することで測定しながら測定終了した時間分のデータを解析できる。測定終了後は分割ファイルのみでは扱いにくいため、1つのリンクファイルとして管理することができる。

図6 リンクファイルと分割ファイルの統合イメージ

6 リンクファイルと分割ファイルの統合イメージ

図7 リンクファイルの表示例(画面左側)

7 リンクファイルの表示例(画面左側)

4.5 確度保証された信頼性の高い電力データの活用
波形測定器の中に電力計データを演算する機能を搭載する機器が増えている。過渡的な現象においてもデータの同時性を確保できるため波形測定器で電力演算できることは大変便利であるが気をつけなければならない点がある。それは国家標準につながった電力データの確度保証である。
波形測定器は電圧プローブ、電流プローブを使って高帯域・高サンプルレートにより測定信号の形状を、より正確に捉えることが主な目的となっている。したがって、波形測定器を使って電力演算した結果は電力計で測定したデータとは異なり確度保証がなく信頼性については慎重に検証する必要がある。一方、横河の電力計は国家標準につながる計測標準高い精度で確立・維持しており、電力計データの電圧、電流、有効電力などにおいて信頼性の高いデータを提供している。
IS8000は、電力トレーサビリティ*の取れたWT5000による電力計測とともにDL950による最速20MS/s8chのデータ転送を可能としており、信頼性の高い電力計データと波形データを同一時間軸上に同時表示できる。
*電力のトレーサビリティ:高精度電力計WT5000の性能を支える校正技術について
高精度電力計を支える横河電機の電力校正技術

図8 新電力校正システムのトレーサビリティ体系図

8 新電力校正システムのトレーサビリティ体系図

4.6 波形と電力計データを使って自動レポート作成
自動レポート作成オプション(/RP1)を組み込むことによりPC上でレポートを作成し出力できる。レポートの構成は、レポート作成ウィザード機能を使うことで、レイアウト設定(イメージ表示付き)ができ簡単にレポートが作成できる。スコープコーダDL950あるいはプレシジョンパワーアナライザWT5000で測定、および保存したファイルをもとに、測定条件、波形出力や測定結果などを選択し、報告書をPDFEXCELに出力することができる。

図9 レポートのテンプレート作成画面

9 レポートのテンプレート作成画面

図10 レポート作成中の波形画像の挿入イメージ

10 レポート作成中の波形画像の挿入イメージ

*掲載されている画像等は実際の製品とは一部異なる場合があります。
*本アプリケーションの仕様は測定チャネル数や測定条件などにより制限されることがあります。
 詳細についてはお問い合わせください。

関連業種

関連製品とソリューション

スコープコーダ DL950

DL950は、DL850E/EVの機能・仕様を大幅に改善し、タッチパネルによる直観的操作を可能した新時代のスコープコーダです。
200MS/s高速サンプルレート、最大8Gポイントメモリー、複数台同期で最大160CHが可能で、お客様の様々なニーズにお応えします。

プレシジョンパワーアナライザ WT5000

持続可能な社会の実現に向けて、COP21におけるパリ協定の採択、既存エンジン車の販売停止計画発表など、グローバルで太陽光/風力発電に代表される再生可能エネルギーへのシフトと、EVやPHVおよびそのインフラ網の開発が加速しています。それらの更なる省電力化と高効率化を支援するために、従来機種の性能と機能を格段に向上させた高精度電力計です。

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

IS8000統合計測ソフトウェアプラットフォームは、エンジニアリングワークフローを加速する統合ソリューションソフトウェアです。

Precision Making

トップ