CW500 電源品質アナライザ

CW500は、電流クランプを使用する現場型の電力計として、消費電力測定と、電源品質の測定機能を併せ持ちます。
測定対象に応じた結線や多様な測定と記録の設定はナビゲーション画面で強力にサポート。
測定時には表示画面を測定値一覧、ベクトル図、波形やトレンドグラフに切り替えるダイレクトキーが現場での確認作業を容易にします。
また付属のPCソフトウェアは効率的なデータ解析やレポート作成に貢献します。

What's New


電力測定

電力測定
  • 電圧入力3CH、電流クランプ入力4CH、DCV入力2CHを同時に測定して記録。
  • 各相の電圧/電流/電力/力率/位相角/目標力率に対する進相コンデンサ容量/DCV入力を瞬時、最大、最小、平均のリスト表示やトレンド表示に切替。
  • 積算電力量は有効、皮相、無効電力の消費と回生成分ごとに表示。
  • デマンドは、設定目標値(契約電力)と電力使用状況のグラフ化により簡易監視が可能。

ユーザーサポート

スタートナビ機能

  • ナビ機能により測定前の確実な結線と本体設定が可能
  • 電流クランプ自動識別機能により、クランプ種類の誤設定防止

ベクトル表示

  • 各CHの電圧と電流の位相差と大きさの関係をベクトル表示
  • 結線状態のOK/NG判定と対応方法を指示

電源品質測定

瞬時に変動する電源異常を的確に捕捉

  • 機器の異常動作や破損を引き起こす電源異常(電圧スウェル、電圧ディップ、電圧瞬停、トランジェント・オーバー電圧、インラッシュカレント)を24µsの高速サンプリングと実効値演算により捕捉
  • 電源異常は、開始時点と終了時点を各々1イベントとして捉え、それぞれの時刻、実効値、全CH約200msの電圧と電流の波形データを記録
  • 電源品質測定の国際規格 IEC61000-4-30 Class Sに適合

連続する電源異常を捕捉

高調波測定

  • 50次までの電圧・電流・電力、含有率と位相角を演 算し一覧とバーグラフを表示

波形測定

  • 各CHの電圧/電流波形を最大10波形または12波形表示し、拡大表示も可能

フリッカ測定

  • 1分電圧フリッカ(Pst, 1min)、短期フリッカ(Pst)、長期フリッカ(Plt)測定

電圧と電流の不平衡率表示(3相結線時)

電圧と電流の不平衡率表示(3相結線時)

測定データの解析・レポート作成

解析・設定用PCソフトウェアを標準付属(CW500Viewer)

  • 記録データからワンクリック操作でグラフ、リストとレポートを作成
  • 設定データの一元管理
  • 通信によるリアルタイム測定

対象データ

  • 電力測定データ、電源品質イベントデータ、本体設定データ、画面キャプチャーデータ

外部メモリー・インタフェース

  • SDカード、USB通信、Bluetooth通信

電力測定機能

測定相線と入力CH

3CH電圧入力と4CH電流入力により多様な相線測定が可能。使用しない電流CHは、リーク電流や別の負荷電流測定に使用できます。

  • 単相2線(最大4系統)
  • 単相3線(最大2系統)
  • 三相3線2電流(最大2系統)
  • 三相3線3電流
  • 三相4線

電力測定演算項目

電圧/電流/電力(有効、無効、皮相)/力率/位相角/周波数/進相コンデンサ値/DC電圧信号2CH各々の瞬時、平均、最大、最小。
有効電力量、無効電力量、皮相電力量、各々の消費と回生。最大デマンドの発生時刻、現在デマンド値、予想デマンド値。

データ記録のインターバル

1/2/5/10/15/20/30秒、1/2/5/10/15/20/30分、1時間、2時間

データ記録の設定方法

手動、日時設定、時間帯設定

データ記録時間の目安

インターバル

電力記録

+高調波

1秒

13日

3日

1分

1年以上

3ヶ月

30分

10年以上

7年以上

  • 電源品質のイベントデータが発生する回数により少なくなります。
  • 付属SDカード以外の動作保証はしておりません。

多様な測定表示

  • 一覧/4分割または8分割拡大/トレンドグラフ表示
  • 積算電力のCH合算及びCH別の測定値一覧
  • デマンド測定値、デマンド時間内推移図、デマンド推移図

一覧表示

一覧表示

1画面に表示した複数の測定値は、項目の選択や表示位置の変更が可能

拡大表示

拡大表示

拡大表示は電力測定項目をそれぞれ選択して4分割と8分割表示が可能

トレンド表示

拡大表示

測定記録をしながら電圧/電流/電力/力率/位相角/周波数/進相コンデンサ値、DC電圧信号のトレンド表示。

積算電力表示

拡大表示

有効電力量、皮相電力量、無効電力量の消費と回生を表示

デマンド測定

デマンドは、定めた期間(通常30分間)ごとの平均電力です。最大デマンド値が契約電力内にあることが求められます。本機では、目標最大デマンド値を設定して負荷率の表示やグラフ表示、予想値も演算しながら目標値超過見込み時にアラームを発することができますので、計画的な電力消費の確認や運用に便利です。

デマンド測定値画面

デマンド測定値画面
 

デマンド時間内推移図

デマンド時間内推移図
 

デマンド推移図

デマンド時間内推移図

 

測定データのPCソフトウェアでの表示例

記録したデータをPCソフトウェア(CW500Viewer、標準付属)でワンクリック表示します。
電圧、電流、電力、力率の平均、最大、最小の演算値のトレンド解析に加えて換算値(電力料金、石油、CO2)をレポート形式に自動作成します。
レポート形式では、日中と夜間の時間設定や、平日と休日の曜日を設定することでそれぞれの集計値を示すことができます。

各測定値のトレンド解析画面

各測定値のトレンド解析画面
 

データのテストレポート

データのテストレポート

電源品質測定機能

過渡的な電源異常の捕捉

24µsの高速サンプリングと半周期ごとにオーバーラップして検波する実効値演算により電源異常を捕捉します。その種類別に発生時刻と正常復帰時刻および波形データの記録ができます。

  • 本体で発生イベントごと、種類ごとのリスト表示が可能。
  • 記録したデータは、付属のPCソフトウェアでデータ解析とレポート作成が可能。
過渡的な電源異常の捕捉

 

連続している電源異常の捕捉

高調波測定

  • 高調波は50次まで、電圧/電流/電力の高調波成分、含有率、電力位相角をそれぞれCH別または全表示します。
  • 記録中に高調波成分が最大となった点をグラフ上に表示します。
グラフ表示

グラフ表示

リスト表示

リスト表示

波形測定

波形測定

電圧/電流/CHごとあるいは全入力波形を切替表示します。波形(縦方向)と時間軸(横方向)は固定の倍率で拡大が可能です。

縦方向: 0.1、0.5、1、2、5、10倍
横方向:1、2、5、10倍

フリッカ測定

フリッカ測定

リスト表示

1分電圧フリッカ(Pst, 1min)、短期フリッカ(Pst)、長期フリッカ(Plt)をリスト表示やグラフ表示します。

ユーザーサポート機能

簡単設定で測定と記録を開始

スタートナビ機能と電流クランププローブ自動識別機能

被測定回路に合わせた結線や各種設定をスタートナビ機能でガイダンス。画面表示に沿った作業で設定ミスを防止します。また、別売の電流クランププローブを接続すると機種に合わせた電流レンジ(最大)を設定します。

ガイド開始

ガイド開始

START/STOPキーを押し、かんたんナビゲーションを選択します。記録項目の選択画面が表示されます。

結線接続

結線接続

結線方法を選択後、結線図に従い電圧プローブと電流クランププローブを本体と被測定回路に接続します。

結線確認・自己診断・センサー識別

結線確認・自己診断・センサー識別

接続状態を判定します。自己診断後、電流クランププローブを自動識別して最大レンジが設定されます。NGの詳細は項目ごとにENTERキーで確認ができます。

インターバルの設定

インターバルの設定

SDカードに記録可能な時間を確認しながら、インターバル時間と記録の開始と終了方法を設定します。

測定ラインから電源供給

測定ラインから電源供給

電源供給アダプタ(別売)を使用して、測定ラインから本体への電源供給が可能です。
(但し240V以下)

漏れ電流測定

当社独自の技術により、隣接電線でも磁界影響量30ppmを実現(100Aにて)。三相4線の測定例。
96060はCH4を使用してニュートラル線を測定。

漏れ電流測定

 

多系統測定

4系統負荷を同時測定

単相2線の場合、最大4系統まで。
単相3線、三相3線なら最大2系統まで。

電源品質調査+電力調査

生産設備の電源品質監視と消費電力調査

  • 工場の生産設備の主電源の異常を監視し、発生時に記録されるデータを基に対策を行いたい。
  • 同時に消費電力のトレンドも調査し、省エネ対策を実施する。

CW500は高調波の連続測定のほか、過渡的な電圧変動などの電源異常の発生時には発生/終了の時刻の波形データを記録します。
同時に電力データやN相の漏れ電流も記録。加えて、アナログ入力2CHに周辺装置の稼働信号を取り込めば生産設備の測定データと周辺装置の稼働状態を同期して確認することも可能です。

生産設備の電源品質監視と消費電力調査

電力調査

LED照明導入省エネ効果確認

照明設備をLED照明に置き換えする省エネ効果確認をすることができます。導入前の測定と導入後の測定をして、比較をすることで効果を確認提示することができます。

LED照明導入省エネ効果確認
 

生産ラインの搬送用ポンプ工程の消費電力調査

液体製品の生産工程内に多数設置しているポンプをインバータ化。省エネ効果の測定確認には、導入前後のデータが必要です。被測定対象が多い場合も、PCソフトウェアで管理している設定データを使用して効率的な作業が実施できます。更にインバータ導入による電源の健全性の確認が可能なので安心です。

電源品質調査

印刷工場の高調波測定診断改善の例

目的:定期的に印刷機が故障する原因調査
電源ラインに発生する高調波が原因?

測定:CW500の使用メリット

  • 小形で持ち運びが容易
  • 50次までの高調波測定
  • 長期データ収集
  • ベクトル図表示

結果:高調波第5次、第7次に高調波発生を確認
さらに…高調波が工場内の負荷で発生していることも判明!特に第5次高調波は、力率改善コンデンサの直列リアクト ルを焼損させるなどの影響をもたらす

電源品質調査

その他

力率改善による電源ラインの効率化

CW500は、力率の測定値から進相コンデンサ容量の目標として設定した力率になるための進相コンデンサ容量を表示、記録。
進相コンデンサの導入検討に役立ちます。受電契約者は、力率が向上することで消費電流が減少し、配電設備に余裕ができ、負荷設備全体の効率化が図れます。

外観

外観

電流クランプ プローブ 96060

Φ40mm AC2A、 リーク電流測定用
販売単位:1
価格¥18,000(税抜)

電流クランプ プローブ 96061

Φ18mm AC50A、 負荷電流測定用
販売単位:1
価格¥18,000(税抜)

電流クランプ プローブ 96062

Φ24㎜ AC100A、 負荷電流測定用用
販売単位:1
価格¥17,000(税抜)

電流クランプ プローブ 96063

Φ30mm AC200A、 負荷電流測定用
販売単位:1
価格¥18,000(税抜)

電流クランプ プローブ 96064

Φ40mm AC500A、 負荷電流測定用
販売単位:1
価格¥20,000(税抜)

電流クランプ プローブ 96065

最大約110mm AC1000A
フレキシブルタイプ負荷電流 測定用
販売単位:1
価格¥39,000(税抜)

電流クランプ プローブ 96066

最大約150mm AC3000A 3CH負荷 電流測定用
販売単位:1
価格¥115,000(税抜)

電源供給 アダプタ 98031

測定ライン(100〜240V)から電源供給
販売単位:1
価格 ¥10,000(税抜)

携帯ケース 93047

マグネット付携帯ケース
販売単位:1
価格 ¥8,300 (税抜)

バナナーDIN 変換ケーブル 99073

96030、96033、 96036用
販売単位:1
価格 ¥5,000 (税抜)

キャリングケース 93046

CW500本体とクランプを 同時に入れられます。
販売単位:1
価格 ¥5,800 (税抜)

SDカード (2 GB) 97060

2GB SDカード
販売単位:1
価格 ¥5,000 (税抜)

電圧プローブ 98078

1セット4本 赤黒白青
Φ4mm 約3m
販売単位:1
価格 ¥6,000 (税抜)

延長コード 98082

電流クランププローブ用 延長ケーブル
販売単位:1
価格 ¥4,300 (税抜)
概要:

(月刊「トランジスタ技術」2005年2月号掲載)
横河M&C株式会社 MCC技術部 河崎 誠
通信測定器事業部第2開発PJTセンター 数見 昌弘

1.概要

電力測定器は、電気機器や電力設備の消費電力を測定する装置であり、家電製品、照明器具、産業用機器などの研究開発、生産ライン、受配電設備などの分野で、幅広く使用されています。
近年の地球環境問題やエネルギー資源の有効活用の観点から電気機器の省エネルギー化の要求が高まっています。そのため、機器の高効率化、小型化が進められる中、高周波駆動の電力変換部を持つ機器が増えており、より広い周波数帯域、より高精度の電力計測が求められています。
さらに高効率化のために、電力変換器は複雑な電力制御を行っており、その電力変換回路内の変換過程ごとに消費される電力を細かく測定する必要性が高まってきています。
一方、環境マネージメントシステム(ISO14001)の認定企業や省エネルギー法の規定により、電力量の管理も必要になってきています。

2.電力測定原理

2. 1. 交流信号の基本原理

●有効電力は瞬時電圧と瞬時電流の積の平均。
交流の電力は、負荷が容量性(コンデンサ)の場合や誘導性(インダクタンス)の場合は電圧と電流の間に位相差が生じます。電圧の瞬時値u(t)および電流の瞬時値i(t)がそれぞれ正弦波形であり、式1 と表せる場合、交流の電力の瞬時値 p は、次のように表されます。
式2
U:電圧実効値 I:電流実効値 φは電圧と電流の位相差
pは時間に無関係の「UIcosφ」と、電圧や電流の2倍の周波数の交流分「-UIcos(2ωt-φ)」の和になります。負荷で消費される単位時間あたりの電力Pは、pの平均値であるため、pの交流分「-UIcos(2ωt-φ)」はゼロとなり、電力Pは、P=UIcosφ[W]になります。上記をまとめると、単位時間あたりの電力は以下の式になります。
式3

負荷の種類と電圧、電流の位相差の関係
図1:負荷の種類と電圧、電流の位相差の関係

●有効電力、無効電力、皮相電力
交流では、電圧と電流の積UIすべてが負荷で消費される電力ではありません。同じ電圧と電流でも、その位相差φによって消費される電力が異なります。図1に負荷が抵抗、インダクタンス、キャパシタンスの場合の電圧と電流の関係を示します。電圧実効値と電流実効値の積UIは、皮相電力S(apparent power単位:VA)といわれ、見かけの電力を表します。皮相電力は、機器の電気容量を表すのに用いられます。皮相電力のうち、前述の負荷で消費される電力を有効電力P(active powerまたはeffective power 単位:W)、消費に寄与しない電力を無効Q(reactive power 単位:var)といいます。
皮相電力、有効電力、無効電力の関係は以下の式で表されます。

ここで、cosφは、皮相電力に対して実際に負荷で消費された電力の割合を示したもので、これを力率λ(power factor)といいます。

式4

皮相電力、有効電力、無効電力の関係

図2:皮相電力、有効電力、無効電力の関係

 

2. 2. ひずみ波の電力 有効電力は各周波数成分ごとの電圧、電流、位相の積の総和。

有効電力は、瞬時電圧と瞬時電流の積を電圧または電流の一周期の区間平均することで表されます。ひずみ波の電圧、電流および電力が含まれる場合には、電圧、電流、有効電力は、次の式で表されます。

式1

nは高調波成分の次数、U,Iはn次成分の電圧、電流実効値、φnはn次成分の電圧と電流間の位相差

ひずみ波電圧とひずみ波電流による有効電力は、同じ高調波成分(周波数)の電圧、電流と力率の積から得られる有効電力の総和であることが分かります。異なる周波数成分による電圧と電流の積の平均値はゼロ となり、有効電力にならないことを表しています。有効電力を測定する場合には、電圧あるいは電流の一方が高い周波数成分が含まれていたとしても、低い方の周波数帯域の特性をもつ測定器を使用すれば良いことになります。

2. 3. 三相電力

●基本は各相の総和
三相の電力は、各相の電力を3台の電力計を用いて測定し、それぞれの電力を加算すれば求まります(図3参照)。しかし、実際の電力系統では図4のように、中線が存在しないことがあります。このような場合はブロンデルの定理より図4のように電力計を2台使用してその和から求めることができます。

3つの電力計を用いた三相電力測定方式
図3:3つの電力計を用いた三相電力測定方式

2電力計法による三相3線結線
図4:2電力計法による三相3線結線

●ブロンデルの定理
「多相の電力は送っている電線の数がn本の時、n-1台の電力計で測定することができる」

3つの電力計による測定では、中線を基準にした各相電圧と各相電流から電力を測定しているのに対して、2電力計法の場合は、各線間電圧と関係する相電流から電力を測定することになります。理論上は、いずれの方法でも三相のトータル電力の値は同じになります。これをベクトル式(図5参照)を用いて以下に説明します。

式2

2電力計法の場合、線間電圧と相電流の位相差がそれぞれ異なるため、各々の電力計で表示される値は異なります。また、相電圧と相電流の位相関係により、線間電圧と相電流との位相差が90度以上になる場合もあるため、この場合は負の電力を表示することになります。よって電力の値は、あくまで三相電力のトータル値のみが意味を持つことになります。また、2電力計法を用いた場合、基本的には三相不平衡状態でも有効電力は正しく測定できますが、各相電流のベクトル和が零にならない状態(例えば、中線電流が流れる場合など)では、上記の式のUT×(IR+IS+IT)の項が零にならないため、この部分が電力計表示値に対して測定誤差となります。

三相電圧、電流ベクトル図
図5:三相電圧、電流ベクトル図

3. 電力測定器の仕組み

3. 1. 電力計の種類 ベンチトップ型とポータブル型

電力計は一般的にポータブル型(携帯型)とベンチトップ型(ラックマウント型)に大別されます。ポータブル型は小形化、軽量化設計により携帯に適しており、クランプオンプローブを装着し、現場での活線状態での測定が可能となります(写真1参照)。特に、近年における省エネルギー政策や環境保全に関する国際規格ISO14000を推進していく上で、工場、オフィスサイドでの簡易的な電力量管理、及び電力ラインの品質管理にはこのタイプを使用すれば測定が可能です。
一方、ベンチトップ型では単相測定用の1チャネル入力モデルから、三相測定用の2または3チャネル用、さらには1台で三相2系統(最大6チャネル)を同時に測定できるモデルまで多数の機種が用意されています。こちらのタイプは、一般に電流が直接入力式になっているためにポータブル型よりも測定精度が良く、他の測定器類とともに計測しシステムとしてラックに組込まれて製品の評価試験などに使用される場合が多いようです。(写真2参照)

ポータブル型電力計 CW240
写真1:ポータブル型電力計(CW240)
ベンチトップ型電力計 WT3000
写真2:ベンチトップ型電力計(WT3000)

●電力計の構成
一般的なディジタル方式の回路をもった電力計の構成を図6に示します。電圧入力部(VOLTAGE INPUT)、電流入力部(CURRENT INPUT)、DSP部、CPU部、表示部、およびインタフェース部で構成されています。電圧入力回路では、入力電圧は分圧器とOPアンプで正規化された電圧になり、A/D変換器に入力されます。電流入力回路では、分流器により閉路になっており、分流器の両端電圧はOPアンプで増幅/正規化されてA/D変換器に入力されます。この方式により電流レンジを切り替えても電流入力回路は開路にならないので、通電したままでも安全にレンジ切り替えができ、通信によるリモート制御も可能となります。電圧回路と電流回路のA/D変換器の出力であるディジタルデータは、絶縁素子(ISOLATOR)を使って絶縁され、DSP(Digital Signal Processor)に送られます。 DSPでは、サンプリングしたディジタル値を電圧、電流、有効電力に変換処理したものを一定期間加算し、その加算値をサンプリング数で除して、電圧、電流、有効電力の測定値を求めています。  
電圧入力方式には、図6に示した抵抗分圧方式の他にVT(変圧器)方式などがあります。測定対象に合わせて、適切な入力形式をもつ測定器を選択する必要があります。また、電流入力方式には、シャント入力方式、CT(変流器)方式などがあります。特にポータブルタイプの場合、電流入力方式はクランプオンプローブになります。VT方式、CT方式およびクランププローブでは、その入力部で一次側と絶縁されるため、電力計本体は絶縁素子を持ちません。

電力計の構成
図6:電力計の構成
 

3. 2. 電圧入力回路の 発熱と電圧係数に注意しなければならない大電圧測定

一般的な抵抗分圧方式の電圧入力部を図7に示します。入力電圧は内部で扱いやすい低電圧に分圧するための初段回路と正規化するためのレンジ切り替え回路で構成されます。電力計の入力精度は初段アンプの性能で大きく左右されます。初段アンプおよび入力抵抗はそれ自身の誤差だけでなく、1000Vまでという大電圧が直接入力されるため耐圧特性、自己発熱による温度ドリフトに影響する温度係数、電圧係数に注意して部品を選定する必要があります。また電圧回路を測定回路に接続すると、電源側から見れば電圧入力抵抗が負荷に見えてしまいます。そのため抵抗値はできるだけ大きな抵抗であることが望ましいと言えます。抵抗が大きくなる一方で、入力回路の周波数特性は悪くなる傾向になります。これは入力の抵抗と実装面との浮遊容量のため、あたかも入力抵抗と浮遊容量による微分回路が構成され、抵抗が大きいほど周波数特性に影響を与えてしまい低くなります。この影響を軽減させるためには、リファレンス抵抗(図7中R2,R3)にコンデンサ(図7中C2,C3)を挿入し周波数特性を補正します。安定した性能を得るには、入力抵抗と実装面との距離を離したり、入力抵抗に大きい容量や安定した容量結合させるためのシールドをあえて近くに実装するなどして、浮遊容量という不確定な要因を少なくすることが必要です。

電圧入力回路
図7:電圧入力回路(簡略図:抵抗分圧方式)

3. 3. 電流入力回路 シャント抵抗、クランプセンサ、CTなどの電流センシング

電流入力回路は電流信号を扱いやすい信号に変換します。測定する電流値や目的により、シャント抵抗、CT、クランプオンセンサを使用します。以下にそれぞれの特徴を示します。

●シャント抵抗
 シャント抵抗に電流を通電したときの両端電圧を検出します。抵抗体での測定は他の方法と比べて技術的に確立されており、部品も豊富なため高精度な測定ができます。しかし、抵抗に電流を流すため発熱によるドリフトが問題になります。発熱を抑えるためには抵抗値を小さくする必要があります。一方、低抵抗になったときには抵抗体内部のインダクタンス成分が相対的に大きく見えてくるため周波数特性の平坦度の維持が困難になります。また出力側の電圧が微小になるため、抵抗体内部の熱起電力に注意する必要があります。熱起電力は抵抗内部の抵抗体と導電部の接合点が異種金属であるために発生する起電力で、高精度な測定をするためには抵抗体と導体の材質の選定が重要になります。

●クランプオンプローブ
クランプオンプローブは活線状態のケーブルを断線することなくクランプし、一次側の電流を絶縁して、正確に二次側に信号を伝達する目的があります。基本的には、一次側が1ターンの変流器と考えられるため、回路図と等価回路は図8となります。この図では巻線数2000ターン、負荷抵抗10Ωですから、たとえば一次側が200Aの時に二次側に1Vの電圧が得られます。しかしこの値は変流器が理想的に動作した場合で、実際にはE0=K×I1/n×R で示されます。ここでE0は二次側電圧、I1は一次電流、nは二次側巻線数、Rは負荷抵抗、Kは結合係数を表します。
結合係数は、鉄心材料(透磁率や磁束密度)、鉄心断面積、鉄心開閉部のギャップ、巻線数、線径、平均磁路長、負荷抵抗や構造などで決まります。一般的に鉄心は透磁率の高いパーマロイを使用する場合が多いようです。
一次電流と二次電圧、クランプする線径などから鉄心断面積、巻線数、平均磁路長、負荷抵抗を決めていきますが、巻線によるインダクタンスや抵抗は位相特性や周波数特性に影響を与えます。これらの影響を補正するために図8のようなC-R回路を追加する場合もあります。また、巻線数を調整したり、巻線抵抗を減らすために線径を太くする方法がありますが、クランプ部分が太くなり過ぎて実使用に耐えないものになってしまうため注意が必要です。
一方、隣接する銅線に流れる電流による磁界やクランプ内部の導線位置の影響を軽減するために、シールドを追加したり巻線の位置を極力均等にします。
 

クランプオンプローブの回路図例
クランプオンプローブの回路図例

クランプオンプローブの等価回路
クランプオンプローブの等価回路

L1:一次側の漏洩インダクタンス
L2:二次側の漏洩インダクタンス
R1:一次側の巻線抵抗
R2:二次側の巻線抵抗
LM:相互インダクタンス
RM:鉄損

図8:電流入力回路図と等価回路(クランプオンプローブ)

●CT
 原理はクランプオンプローブと同じです。クランプオンプローブと大きく異なるのは測定対象に貫通させるなど活線状態のまま接続できない点です。一方で巻き線部が固定されているため特性が極めて安定しています。DCを測定するための回路が搭載されたものもあり、より高精度な大電流測定に適します。

3. 4. 演算部

有効電力は電圧と電流の瞬時値の積を平均化することで求められます。
旧来のアナログタイプの電力測定器の場合は、電圧、電流をアナログ掛け算器で掛け算し、LPFで平均化して電力測定を実現していました。現在ではディジタルサンプリング、ディジタル平均方式の電力計が主流となっています。ディジタル方式のメリットは以下のとおりです。

 ・アナログ素子が少ないため高精度化が容易で製品ごとの個体差が少ない。
 ・測定、演算項目間の同時性がある。
 ・微小入力時での精度(直線性)が良く力率誤差が小さい。
 ・サンプルデータをディジタル的に処理できるので、波形表示、解析などが可能になる。

ディジタルサンプリング方式の電力計には平均化の手法上、
FIR 型 (Finite Impulse Response : 有限長インパルス応答)ディジタルフィルタ方式と
IIR (Infinite Impulse Response : 無限長インパルス応答)型ディジタルフィルタ方式があります。

●高速な応答を実現しやすいFIR型ディジタルフィルタ方式 
FIR 型ディジタルフィルタ方式ではサンプル区間中の全サンプルデータの総和を平均して電力値を算出します。正確に測定するためにはサンプル区間を入力周期の1周期または数周期と同じにする必要があります。そのため入力信号をコンパレータ回路で信号のゼロレベル(ゼロクロスポイント)を検出し入力周期に同期した有効サンプル区間を検出します。この有効サンプル区間にあるサンプルデータの総和をサンプル数Nで割ることで電力値を得ます。

式

この方式では原理的に1周期の結果を平均することで有効電力が算出できるため高速応答を実現できます。

●安定した測定値を得やすいIIR型ディジタルフィルタ方式
IIR 型デジタルフィルタ方式では算出した瞬時電力の結果をIIR 型デジタルフィルタにて平滑することで有効電力を求めています。入力の周期を検出する必要がなく、原理的には測定休止期間がありません。そのためより安定した測定値が得られるという特長があります。

式
式

3. 5. 高調波測定機能 電力測定と電力品位の評価を実現するPLL回路とFFT演算

測定原理はFFTアナライザと同等です。FFTアナライザが周波数基準の解析を行うのに対して、電力計の高調波解析機能は基本波の倍数成分にある高調波次数の解析を行います。このために基本波周波数に同期したサンプルを実現する必要があります。この同期したサンプルを実現するのがPLL回路です。図9にPLL回路の概要を示します。

PLL回路による入力信号周期に周期下サンプルブロック生成
図9:PLL回路による入力信号周期に周期下サンプルブロック生成

 

位相コンパレータは2つの入力されたクロックの位相を比較し位相差信号をパルス出力します。電圧を印加することで発振周波数を変化させることが出来る電圧制御発信器(VCO)に位相差信号をループフィルタを通して直流化した信号を印加します。VCOの出力は位相比較器に入力されます。このときVCOの出力周波数を1/Nに分周して位相比較器に入力することで、VCOの出力は入力周波数のN倍の周波数になります。
これにより入力信号に同期したサンプルが可能になり、入力信号の基本波成分およびその整数倍成分が正確に測定することができる。以下に基本波成分の演算式を示します。

式

この演算式の特徴は無効電力Qを直接求めることが可能なことです。ひずみ波の皮相電力や無効電力は正確には定義されていませんが、各周波数成分においては有効電力、無効電力、皮相電力の関係は2.1項に示す基本的な定義を満たします。

4. 実際の計測事例でのポイント インバータ消費電力測定

インバータとは電力変換器の一つで、簡単に言うと直流を交流に変換する装置です。直流信号を交流信号に変換する場合、スイッチング回路を用いてパルス幅を変化させて出力を擬似的な交流信号を作ります。このようにパルス幅を変化させる変調方式をPWM変調方式と呼びます。図10に変調のイメージを図示します。

インバータ変調イメージ図
図10:インバータ変調イメージ図


●インバータ測定で必要な測定帯域の考え方 
インバータの用途でもっとも主流な対象はモータで、モータは抵抗とインダクタンスが直列につながった負荷です。R-L負荷の例としてR:1Ω、L:1mHに基本周波数30Hz、キャリア周波数10kHzのPWM電圧を印加した場合、R-L負荷の周波数特性、PWM電圧信号含有率と有効電力含有率のスペクトラムは図11のとおりです。
R-L負荷に高周波成分を有するPWM電圧を印加しても、高周波電流は負荷特性のためほとんど流れません。2.2項で述べたように有効電力測定には電圧あるいは電流のいずれか低い方の周波数帯域の特性をもつ測定器を使用すれば良いので、電圧PWM信号に極めて高い周波数成分が含まれていても電流信号には含まれないため、高い測定帯域が必ずしも必要とは言えません。図11の例から考えるとモータ駆動インバータの場合、ある程度の高精度測定を可能にするにはキャリア周波数の数倍までの測定帯域があればいいと言うことになります。

最新のインバータ駆動モータでは電圧測定に注意
インバータモータを試験する場合、モータの駆動特性はインバータ出力電圧の基本波実効値に左右されると考えられています。また、正弦波制御PWMの基本波実効値は平均値整流実効値校正(電圧MEAN)で得られる測定値とほぼ一致するので、インバータの電圧測定は平均値整流実効値校正で測定することが一般化しているようです。ただし近年の可変調PWM制御など正弦波PWM以外の変調信号では平均値整流実効値校正が基本波とはかけ離れた測定値となる場合があります。このようなケースでは3.4項のとおり電力計では高調波測定という機能を使えば正確な基本波測定が可能です。従来の電力計では定常的に電力を測定する場合と高調波の測定をする場合で、測定はモードを切り替える必要があったが、最新の電力計では電圧、電流、電力と、高調波測定が同時におこなえるようになっております。そのため、測定が容易になっただけでなく、電力測定値と基本波測定値の時間的同時性が保たれます。インバータ駆動回路では時間経過とともに変化する発熱が機器の特性に大きく影響するので同時にデータが取れることは大変重要であると言えます。

 

RL負荷 FFT結果 インピーダンス実数部
RL負荷 FFT結果 インピーダンス実数部

モータはR-L負荷なので周波数が高いとインピーダンスが増える


PWM FFT結果 電圧 電力含有率
PWM FFT結果 電圧 電力含有率
電力のスペクトルは基本成分に対してキャリア成分は極めて少ない
図11:PWMインバータの電圧、電力含有率とR-L負荷の周波数特性例

 

5. まとめ

インバータや電源などのパワーエレクトロニクスでは大電圧、大電流で駆動することが多く動作時に発熱を伴うため、回路特性の変化や配線のロスが影響することもあります。また複雑な制御回路を構成し、測定状態は時間変動とともに変化してしまうので同じ状態を保つことが大変困難になってきています。したがって、測定対象をより正確に測定するには入出力間の同時測定や各測定項目を時間的に同時に測定するという基本的な測定手段が実は極めて重要です。扱う信号のレベルや周波数に応じた最適な結線方法、測定のための条件設定などが測定器の選定以上に重要であるケースもあるので注意が必要です。

クランプ電力計 CW240
クランプ電力計 CW240

プレシジョンパワーアナライザ WT3000
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