環境性能を追求したEV、HEV開発で役立つ測定器

1.概要

二酸化炭素ガスの排出増に関わる地球温暖化問題、国家のエネルギー政策に深く関わる石油枯渇問題は、ますます深刻な事態になっています。このような背景から、日常生活に欠かせない自動車の環境、快適さ、安全に関する性能の向上のために、自動車の電動化・電子化が急速に進んでいます。 モータを主動力として利用する電気自動車(EV)やハイブリット車(HEV)は、減速時の回生電力を二次電池に蓄え有効利用することで、燃費性能を格段に改善することができます。また、エンジン制御やハイブリッドの制御に加え、情報機器や先進安全システムとの融合が進んでいます。ここでは、電動化、電子化が著しい車両開発における自動車計測について解説します。

2.インバータ・モータの評価

モータを駆動するモータドライバにはインバータ技術が用いられており、直流電力を交流電力に高効率で変換する性能が求められます。その大容量化に伴い、大電流による導電ロス低減のために、昇圧コンバータを併用して高電圧化するケースも増えていることから、装置全体としてモータドライブ方式は複雑になっています。その要となるインバータを評価するうえで、入出力間の効率測定は欠かせない項目ですが、それに伴う重要なポイントを挙げると以下のようになります。

  • 高電圧・大電流のセンシシング技術
  • 測定系統全体での耐ノイズ性能
  • 基本波成分の測定確度
    モータはL負荷のため、電力としては基本波成分が支配的となり、測定帯域よりも重要なポイントとなる
  • 入出力間の同時測定
    ノイズの影響もあるが、インバータでは出力変動が激しいため安定した測定データが得られ難い
  • 駆動方式に直結し、不具合解析に役立つ周波数解析性能

プレシジョンパワーアナライザWT3000図1の「プレシジョンパワーアナライザWT3000」は、変換効率を高精度に測定するために多チャネル入力モデルでは世界最高クラスの高精度±0.06%を実現した電力計です。最大4chまで入力できるため、三相系統の入出力間(いずれも三相3線式)や直流入力に対する三相出力等の(三相3線式もしくは三相4線式)インバータの電力変換効率およびモータ効率をより高精度に評価できます。電圧は1,000Vまでを直接入力することが可能で、電流は専用の電流センサユニットを組み合わせて600Aまで測定可能となっています。パワーアナライザと専用電流センサとは、その組合せにより優れた耐ノイズ性が得られます。その他の機能として、波形観測機能や高調波解析機能、FFT機能を有し、電力の測定だけではなく周波数成分解析を同時に行えるため、ドライバの駆動波形観測によって不具合の解析装置としても活用できます。

モータおよびモータドライバの設計においては、制御パラメータの一つとしてモータのインピーダンスを必要とする場合があります。この際、一般的にはLCRメータ等でモータの静的特性を測定しますが、大容量のモータの場合は、負荷電流による発熱の影響によって静特性と異なる場合もあります。パワーアナライザには、演算機能によってインピーダンスを算出する機能が搭載されているので、実負荷状態のインピーダンスを測定でき、設計段階での効率的な評価が可能となります。

3.乗り心地を含めた車両の評価

自動車の乗り心地の観点では、低速走行時の滑らかさと加速時等での優れたレスポンスが求められます。レスポンスの確認では、モータの過渡特性に対する駆動波形との関連から解析することが必要です。
図3の「スコープコーダDL750P 」は、最高10MS/s、最大16チャネルの絶縁型のオシロスコープで、高圧インバータの駆動波形を直接入力し、スイッチング制御信号とあわせた波形解析が可能です。ロングメモリや内蔵ハードディスクを生かしてレコーダとしても活用できることから、各種センサーとひずみ入力や温度入力モジュール等を任意に組み合わせて、車両の機械的変化と電気的変化を同時に捉えることが出来ます。物理信号から電気信号まで幅広い入力が可能なため、短い時間での効率が求められる開発や評価の場面で有用なツールとなります。

以上、環境性能を高めたEV、HEV等自動車分野の動向と、計測器を用いた評価ソリューション例について説明しました。これらをまとめると図4のようになります。

計測器を用いた評価ソリューション例

今後のEV、HEV開発においては、評価方法がさらに専用化し複雑化していくことが予想されます。
計測器もこれらの要求に対応した不可欠な機能を取り揃えたソリューションが求められると考えられます。

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