概要
太陽光発電システムでは、太陽光パネルから出力される直流をパワーコンディショナや充放電コントローラで一般的に利用可能な交流へと変換します。発電システムの性能を表す項目には、主に実際の発電量と変換効率があります。
市販の太陽光パネルの変換効率は10%~20%程度であり、パネルの出力を交流へ変換する時のロスを最小限にすることが発電システム全体の高効率化へ繋がります。
近年は、家庭用太陽光発電システムでも後付けの蓄電池用パワーコンディショナや1台で蓄電池制御も行うハイブリッド型パワーコンディショナも発売され、蓄電池と連携した発電システムが主流になってきました。
パワーコンディショナの変換効率は95~98%で、0.1%の効率向上を目指すためには、より高精度な電力計による評価が必要となります。
課題 / 要望
パワーコンディショナの変換効率測定は、IEC 61683やEN 50530、JIS C 8961などの規格で規定されています。また、ユーロ効率*1やCEC効率*2では、最大効率だけでなく軽負荷時から定格負荷時までの複数点の効率を測定し、負荷率に応じて重み付けをする、より実際の使用状況に近い効率測定も求められます。
パワーコンディショナの変換効率測定
MPPT制御*3の測定
蓄電池の充放電の測定
パワーコンディショナ出力の電力品質の測定
*1 ユーロ効率(Euro-eta、部分負荷効率):異なる負荷率における変換効率におのおの重み付け(欧州の気候パターンに基づいた値)を行い、それらを加算して算出する効率。実際の運転状態に近い変換効率を表すと言われます。
*2 CEC(California Energy Commission)効率:アメリカ、カリフォルニア州エネルギー効率委員会(CEC)が独自に定めるエネルギー効率規制。カリフォルニア州で流通する製品は、この規制への適合が求められます。
*3 MPPT(Maximum Power Point Tracking, 最大電力点追従)制御:パワーコンディショナなどに搭載され、それぞれの日射量で太陽光発電電力が最大となるよう電圧と電流の組み合わせ条件を追跡して制御する機能です。主に大規模なシステムで採用されています。
ソリューション / ご提案
横河計測のWT5000/WT1800Eは、太陽光発電システムの電力変換効率測定において最適な計測ソリューションを提供します。
WT5000は最大7入力、WT1800Eは6入力が可能で、パワーコンディショナの入出力および内部の電圧、電流、電力、周波数、効率などを1台で測定、画面に表示できます。また、変換効率は最大効率だけでなく、ユーロ効率やCEC効率にも対応します。
電力や効率の変動を数値とトレンドグラフで表示、直感的な変動の把握に有効です。
別売アクセサリの電流センサーを使い、最大2000Aまでの大電流測定が可能です。
パワーコンディショナから発生する高調波をIEC規格に基づき測定できます。
MPPT制御の評価において、電圧、電流、電力値とともに、電圧ピーク値、電流ピーク値(それぞれ+側、-側)や瞬時電力最大値(+側、-側)が役立ちます。
バッテリの充放電評価では、積算機能を使って正と負の瞬時の電力からそれぞれの電力量を演算をします。
WT5000 数値表示画面例 Urms1/Irms1/P1:太陽電池モジュールの出力 Urms2/Irms2/P2:昇圧コンバータの出力 Urms3/Irms3/P3 /λ3/fU3/Idc3/Uthd3:インバータ出力と電源品質 η1:昇圧コンバータの効率 η2:インバータの効率 η3:パワーコンディショナ全体の効率 |
WT5000 効率η1/η2/η3のトレンドグラフ表示例
WT5000を使った7系統の同時直接測定
オシロスコープを使うことなく入力信号の波形を表示でき、実際の入力信号を確認しながらフィルターなど詳細な設定が可能です。
また、WT5000 データストリーミング(/DSオプション)は、電力パラメータ測定と同期して、電力演算の元になる同区間の電圧/電流波形データを最高2MS/sでデッドタイムなく連続でPCに取り込む機能です。波形上のノイズや制御状態の変化を把握でき、電力値や各パラメータへの影響など、より詳細な解析が可能です。
電流センサーは貫通式の構造で、1次側配線に流れる電流を電流センサーの電磁コアの巻線で検出するため、以下の点に注意が必要です。
AC/DC電流センサーや電流クランププローブを用いる場合、それらの振幅誤差の補正や電圧信号と電流信号間の位相差を補正することで、より高精度な電力測定が可能です。
Nullは、結線した状態で外部電流センサーを含めてオフセット値をゼロにする機能です。入力ごとに個別でNullをON/ HOLD/ OFFができます。Nullを実行する前に、ゼロレベル補正(内部回路のゼロレベルを補正する機能)を実行することをおすすめします。
大電流機器測定の配線をスッキリと実現
WT5000の760903 電流センサーエレメントは、大電流機器の測定で必要なAC/DC電流センサーや電流クランププローブ接続専用の入力エレメントです。センサー用DC電源供給機能を備えていますので、外部DC電源の確保や手間のかかる配線の準備が不要となり、センサー/プローブと本体1台で大電流測定が可能です。
WT1800Eでは、/PD2(センサー用電源オプション)と専用ケーブルとシャント抵抗BOXを使うことで、センサーと本体1台で大電流測定が可能です。
WTViewerE アプリケーションソフトウェア
測定画面例
統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000
DL950波形データとWT5000電力データの同期表示例
電流センサーの選び方
計測する直流・交流電流の定格電流と測定帯域で選択します。
ラインアップ
持続可能な社会の実現に向けて、COP21におけるパリ協定の採択、既存エンジン車の販売停止計画発表など、グローバルで太陽光/風力発電に代表される再生可能エネルギーへのシフトと、EVやPHVおよびそのインフラ網の開発が加速しています。それらの更なる省電力化と高効率化を支援するために、従来機種の性能と機能を格段に向上させた高精度電力計です。
WT1800Eプレシジョンパワーアナライザは、最先端の研究開発で求められる高い性能と豊富な機能、拡張性を兼ね備えたモデルです。 EV/PHV/FCVなど自動車の電動化や再生可能エネルギー向けパワーコンディショナーなどの技術開発や各種規格試験など、 パワーエレクトロニクスに関わる幅広いアプリケーションにお使いいただけます。
炭素排出量削減に貢献
いま世界は急速な変化にさらされており、エネルギー問題もその一つです。たとえば、自動車などの移動手段は、炭素排出量の削減のため今後より一層化石燃料からの脱却が進み、再生可能エネルギーにシフトしていきます。
よりクリーンでより環境に優しい世界へ。YOKOGAWAは持続可能なエネルギー供給の実現に向けて、高精度計測で貢献しています。
電気機器の消費電力を測定する電力測定器は、電気自動車、クリーンエネルギー、冷凍空調機器、産業用機器などの研究開発、生産ライン等の場面で、幅広く使用されています。
僅かな電気エネルギーのロスを正確に評価するため、測定器には高い精度が必要とされます。
YOKOGAWAは様々な用途をカバーする、パワーアナライザ、パワーメーター、パワースコープなどの幅広い製品ラインアップをご用意しています。