波形データと電力値のリモートモニター

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

1背景Introduction
モーター・インバータ評価試験では、試験室内の波形測定器、電力計を実際に操作してデータ収集を行っているケースがある。実作業者は操作にも慣れていることが多く、波形測定器のサンプリングレート、メモリ長、T/divフィルタ、アベレージなどの設定を変更し、実際の画面表示と測定条件を比べながら測定作業を進めていく。また、電力計も同様に、入力側のDC電圧・電流・電力、および出力側の三相電圧・電流・電力、周波数、力率、インバータ効率、モーター効率などの見たい電力計データを決定し、データ更新レート、周期検出用フィルタ、波形表示などの設定を変更した後、測定作業を開始し進めていく。

2課題Challenges
試験室内の波形測定器および電力計は、製品操作に慣れた作業者が操作をするが、実際にモーター・インバータを稼働させたときに危険であるため、試験室への入室はできないことが多い。測定前に仮設定した設定条件で実際に測定した場合に設定不足となっているケースも意外に多くある。
このようなケースでは、試験室に再度入室するため一旦モーター・インバータや周辺装置の電源を停止させ安全性を確保したのち波形測定器と電力計の設置場所に移動して波形表示設定や数値設定を行うことになり、数分程度かかることもある。その結果稼働・停止を繰り返すことになり、作業効率が悪くなってしまうことがある
一方、PCソフトウェアを使った通信経由のデータ収集では手軽にデータ収集できるが、PCソフトウェアはオシロスコープと電力計では別々のソフトウェアとなってしまうことが多い。そのため、それぞれのソフトウェアを起動して計測器を操作しなければならない。一般的にオシロスコープは波形測定の設定項目が多く、電力計では数値測定の設定項目が多いため、操作方法がそれぞれ異なる。
さらに、オシロスコープ本体、電力計本体の設定方法とPCソフトウェア設定方法や操作は異なることが多い。したがって、作業者は製品本体操作PCソフトウェアの操作性の違いが多いため、PC操作では設定に時間がかかるなど苦慮することがある。

3IS8000による課題解決Solution

オンラインモニターによるデータ確認と操作
DLソフトウェアとWTソフトウェアの統合
IEEE1588によるWT/DL時刻同期表示
リンクファイル/分割ファイルによるデータ管理
確度保証された信頼性の高い電力データの活用
波形と電力計データを使って自動レポート作成

 

IS8000による課題解決

4. IS8000による提案Detailed description
4.1 オンラインモニターによるデータ確認と操作
オンラインモニター操作は、通信インタフェース経由で計測器をPCからリモートコントロールできる。
スコープコーダDL950あるいは電力計WT5000本体のタッチパネルスクリーン(コントロール画面)がPC画面に表示される。計測器本体の操作と同じように離れた場所にあるPC上で設定を自由に変更でき、測定波形や電力計データも確認できる。したがって、製品本体と異なるソフトウェアの操作を新たに覚える必要はない*
2台接続したときも同時に2画面、PC上に表示できる。設定に問題がないようであれば、その後、波形データあるいは電力計データを収集できる。
コントロール室から離れた場所にあるDL950の波形をPC上で確認できるので、実験室とコントロール室を往復しながら波形データの保存や設定条件を変更するなどの手間を減らすことができ、効率的データ収集が可能になる。
*本体のタッチパネル操作と一部機能のみ。ハードキー操作は除く

図1 DL950のリモートコントロール画面(2台表示可)

1 DL950のリモートコントロール画面2台表示可)

図2  WT5000のリモートコントロール画面(2台表示可)

2  WT5000のリモートコントロール画面(2台表示可)

4.2  DLソフトウェアとWTソフトウェアの統合
オシロスコープと電力計のソフトウェアは別々のソフトウェアでデータ収集を行うため一般的にファイル形式が異なる。今回、新たに開発した統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000波形データと電力計データの同期測定という測定ニーズに合わせて1つの統合計測ソフトウェアとして使用できる。データ収集ソフトウェアを統一することでオシロスコープと電力計の設定方法を可能な限り同じ操作にしている。今までは別々に測定して保存していた方法に比べてファイルの整理や管理の業務を大幅に削減することが可能となる。

図3 波形チャネルと電力データの表示&保存設定

3 波形チャネルと電力データの表示&保存設定

図4 DL950とWT5000の複合測定データ表示例

4 DL950WT5000の複合測定データ表示例

4.3  IEEE1588規格*WT/DL時刻同期表示
波形測定器の波形演算機能を使って電力値を表示させる方法により電力値の検証を行うケースがあるが、測定波形とトレーサビリティのとれた高精度な電力値としての結果を得ることはできない。IS8000統合計測ソフトウェアプラットフォームはIEEE1588時刻同期を使いDL950WT5000を同時に接続*することで同期測定が簡単に可能になる。DL950WT5000の同期誤差10μs*である。
DL950で取得できる最速20MS/s8ch同時の連続波形データとともにWT5000の電力データをPCの同一時間軸上に表示できる。そのため、電力計データは波形データとともに時系列のトレンド表示ができるので微妙な電力変動を確認できる。
たとえば実際に起こっている電力変動から異常波形データを確認し問題を発見することも可能になる。
* IEEE1588規格:ネットワーク上でつながる機器間の時刻同期に使用される高精度
 時間プロトコル(PTP)。PTP=Precision Time Protocol
* DL950 IEEE1588マスター機能(時刻同期)(/C40オプション)が必要
* DL950 2台のIEEE1588同期の誤差は±150ns
* DL950 10Gbpsイーサネット(/C60オプション)が必要
* 2台の同期計測はIS8000 複数台同期オプション(/SY1)が必要

図5 波形と電力の同期測定(オフライン解析)

5 波形と電力の同期測定(オフライン解析)
 

図6 DL/WTのオンラインモニター表示例

6 DL/WTのオンラインモニター表示例

4.4 リンクファイル/分割ファイルによるデータ管理
IS8000は、測定したデータを1つのリンクファイルとして管理できる。従来のように別々に測定した波形データファイルと電力データファイルを関連づけるために同じ名前をつけて保存する、あるいは測定データごとにフォルダを作成し、その中に波形ファイルと電力データファイルを入れて管理するなどの作業は不要となる。IS8000を使って同時に測定することで波形データも電力データも1つの統合ファイルとして管理できる。
また、便利なファイル分割機能もある。ファイルを分割する時間やサイズを設定することで、分割ファイルを作りながら全時間のデータファイルを一元管理できる。測定の途中で解析をしたい場合は、分割ボタンを押すことでファイルを分割させて解析することもできる。たとえば、24時間の測定を行っているときに1時間ごとのファイル分割時間を設定することで測定しながら測定終了した時間分のデータを解析できる。測定終了後は分割ファイルのみでは扱いにくいため、1つのリンクファイルとして管理することができる。

図7 リンクファイルと分割ファイルの統合イメージ

7 リンクファイルと分割ファイルの統合イメージ

図8 リンクファイルの表示例(画面左側)

8 リンクファイルの表示例(画面左側)

4.5 確度保証された信頼性の高い電力データの活用
波形測定器の中に電力計データを演算する機能を搭載する機器が増えている。過渡的な現象においてもデータの同時性を確保できるため波形測定器で電力演算できることは大変便利であるが気をつけなければならない点がある。それは国家標準につながった電力データの確度保証である。
波形測定器は電圧プローブ、電流プローブを使って高帯域・高サンプルレートにより測定信号の形状を、より正確に捉えることが主な目的となっている。したがって、波形測定器を使って電力演算した結果は電力計で測定したデータとは異なり確度保証がなく信頼性については慎重に検証する必要がある。一方、横河の電力計は国家標準につながる計測標準高い精度で確立・維持しており、電力計データの電圧、電流、有効電力などにおいて信頼性の高いデータを提供している。
統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000は、電力トレーサビリティ*の取れたWT5000による電力計測とともにDL950による最速20MS/s8chのデータ転送を可能としており、信頼性の高い電力計データと波形データを同一時間軸上に同時表示できる。
*電力のトレーサビリティ:高精度電力計WT5000の性能を支える校正技術について
高精度電力計を支える横河電機の電力校正技術

図9 新電力校正システムのトレーサビリティ体系図

9 新電力校正システムのトレーサビリティ体系図

表1 電力データ校正成績表の例(一部抜粋)

1 電力データ校正成績表の例(一部抜粋)

4.6 波形と電力計データを使って自動レポート作成
自動レポート作成オプション(/RP1)を組み込むことによりPC上でレポートを作成し出力できる。レポートの構成は、レポート作成ウィザード機能を使うことで、レイアウト設定(イメージ表示付き)ができ簡単にレポートが作成できる。スコープコーダDL950あるいはプレシジョンパワーアナライザWT5000で測定、および保存したファイルをもとに、測定条件、波形出力や測定結果などを選択し、報告書をPDFEXCELに出力することができる。

図10 レポート作成中の波形画像の挿入イメージ

10 レポート作成中の波形画像の挿入イメージ
 

*掲載されている画像等は実際の製品とは一部異なる場合があります。
*本アプリケーションの仕様は測定チャネル数や測定条件などにより制限されることがあります。
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