アプリケーションの概要
量子力学は、原子および原子の構成要素レベルで物理現象を論じる理論です。量子コンピュータはこの理論を利用して設計されており、マクロな世界、つまり私たちが生活を営む実社会の、さまざまな課題の解決を期待されています。
量子コンピュータは、2つの異なる状態を両方の状態で存在させる、重ね合わせの量子力学的な現象を効果的に利用したシステムです。
キュービット
通常のコンピュータは2進数、すなわち0または1で表されるビットを使用しますが、量子ビット(キュービット)は両方の状態のコヒーレントな重ね合わせとなり得ます。つまり、キュービット値は両者の中間にあるものと考えられています。量子ビットが重ね合わせ状態にある間、量子コンピュータとその最適なアルゴリズムは、それら両方の状態を利用します。
このことにより、量子コンピュータは、どのような古典コンピュータよりもはるかに高速に処理でき、さらには、古典コンピュータでは極めて困難だった問題を解決できる可能性を秘めているのです。
課題
量子状態、すなわち重ね合わせ状態にある粒子の状態を維持することは、量子コンピューティングの最大の課題です。外部環境との相互作用によりその状態維持が妨げられ、エラーが引き起こされます。
わずかな周辺ノイズが演算処理に悪影響を与え、その結果、コンピュータが使い物にならなくなることさえあります。したがってこの影響を最小限に抑える必要があり、量子コンピュータは電磁的にシールドされ、ほぼ絶対零度まで冷却されます。
不可欠な磁場の微調整
量子コンピュータの超伝導回路において、量子ビットは超伝導体 ―常伝導金属(等)― 超伝導体の配列から成る、いわゆるジョセフソン接合で構成されています。非線形ジョセフソン接合素子は、閉回路に組み込まれている場合、回路を通過する外部磁場の小さな変化に非常に敏感です。量子化されたエネルギーレベルをスムーズに遷移できるように、磁場を微調整することが課題のひとつとなっています。
GS200によるソリューション
量子コンピュータを初期化するためには避けられない「磁場の微調整」を行うため、超伝導ループ近傍のナノメートルサイズのワイヤーを使用して磁場を生成することで、量子ビットエネルギーを調整します。磁場を生成するための安定した微小電流の発生には、極めて低いノイズフロアを実現したGS200直流電圧/ 電流源が威力を発揮します。
高安定/低ノイズ出力を実現しているGS200
初期化アプリ事例
電流出力の設定後、回路に印加され微調整された微小電流(~10 mA)が磁場を生成し、量子ビットを初期化します。
GS200について
GS200は、非常に低ノイズで高安定な直流電圧および電流出力が可能なため、様々な最先端の学術研究および次世代機器開発で幅広くお使いいただいております。
100 nV / 10 nAの最小出力分解能により、エンジニアは出力信号に極めて小さなレベルの変更を加えることが可能です。さらに、GS200 はあらゆるレンジで優れた直線性を持ち合わせています。
主な特長
■電圧/電流発生範囲:±32 V/±200 mA
■出力分解能:5.5 桁、±120,000表示カウント
■低ノイズ
30 μVp-p( 10 mVレンジ、DC~10 kHz)
0.1 μAp-p( 1mAレンジ、DC~10 kHz)
■高安定性(90日)
±0.002% of setting + 3 μV
(10 mVレンジ、1日)
±0.0015% of setting + 0.03 μA
(100 mAレンジ、1日)
■最大10,000点のプログラム出力
■同期運転によるチャネル拡張
GS200が選ばれる理由
高性能─高精度、高分解能、低ノイズにより、エレクトロニク
スのさまざまな分野をカバー。
汎用性─電圧/電流源としてだけでなく、高精度な定電流
負荷としても使用可能。モニター機能により、電圧
と電流のロギングもできます。
操作性─各桁毎に独立の上下キーで個別に設定でき、出
力信号を直感的に素早く変更可能。
GS200があなたのアプリケーションをサポート
関連製品
光スペクトラムアナライザ
可視光(AQ6373B)から中赤外域(AQ6377)まで、精密で高感度なYokogawaのAQ6370シリーズ 7モデルは、幅広い波長帯域をカバーします。
パワーアナライザ
量子コンピュータの消費電力の測定・分析には、Yokogawaのパワーアナライザ製品ラインアップをご活用ください。
GS200は、高精度・高安定。高分解能の直流電圧/電流源です。優れたトレーサビリティと安定度、5.5桁の分解能を持ち、きわめて低ノイズの理想的な直流電圧及び電流を発生します。また、オプションのモニタ機能により、電圧・電流の測定が可能です。
電気機器の消費電力を測定する電力測定器は、電気自動車、クリーンエネルギー、冷凍空調機器、産業用機器などの研究開発、生産ライン等の場面で、幅広く使用されています。
僅かな電気エネルギーのロスを正確に評価するため、測定器には高い精度が必要とされます。
YOKOGAWAは様々な用途をカバーする、パワーアナライザ、パワーメーター、パワースコープなどの幅広い製品ラインアップをご用意しています。
YOKOGAWAの光スペクトラムアナライザは、高速で高性能な分散分光方式の光スペクトラムアナライザです。
可視から中赤外(350nm~5500nm)までの波長帯域をカバーする8種類の製品ラインアップを揃え、光ファイバー通信、バイオメディカル、環境計測など幅広いアプリケーションの光スペクトル測定ニーズにお応えします。