光スペクトラムアナライザ「AQ6375B」開発・発売
光スペクトラムアナライザ「AQ6375B」
横河メータ&インスツルメンツ株式会社(本社:東京都武蔵野市 社長:山崎 正晴)は、波長範囲1.2~2.4㎛(マイクロメートル)のレーザの光スペクトルを従来機よりさらに精密に測定できる分散分光方式の光スペクトラムアナライザ※1「AQ6375B」を開発、本日発売しますのでお知らせします。
開発の背景
近年、地球環境問題がクローズアップされ、温室効果ガスや有毒ガス削減の取り組みが本格化しています。二酸化炭素やメタンガス等の地球環境を悪化させるガスを高感度に測定する技術としてレーザ吸収分光法※2が注目され、研究・開発が進められています。
レーザ吸収分光法では、波長2㎛の近赤外レーザの使用が不可欠であり、高感度な測定を実現するためにはこのレーザの発光スペクトルを高精度に測定する必要があります。
この波長2㎛帯の近赤外レーザの発光スペクトルを測定するためには分光器を用いた大掛かりな測定システムが一般的に使用されていました。当社は2007年11月から近赤外の波長領域に対応した世界唯一の分散分光方式のベンチトップ型光スペクトラムアナライザ「AQ6375」を投入し、この分野に貢献しています。
一方で、「空気中の水蒸気の影響により、光スペクトルが正しく測定できない領域がある」、あるいは「測定器に入力された測定波長範囲より短波長の光の高次回折光※3の影響で、本来の光スペクトルが正しく測定できないケースがある」という課題がありました。
光スペクトラムアナライザ「AQ6375B」はこれらの影響を排除する仕組みを加えることで、さらに精密に2㎛帯の光スペクトルを測定することを可能とします。
新製品の特長
- 分光器内の水蒸気除去による特定スペクトルの吸収の抑制
光スペクトラムアナライザに設けた給排気口より窒素ガスなどを連続的に供給することにより、分光器内部の空気に含まれる水蒸気を除去することで、水蒸気による特定スペクトルの吸収を抑え、被測定光本来の光スペクトルを測定することを可能としています。 - 光カットフィルタの搭載による高次回折光の影響の低減
入射光に含まれる測定波長範囲より短い波長の光を除去する光カットフィルタを搭載することにより、分光器の原理上発生する高次回折光(入力光波長の2倍や3倍の波長の光)の影響を低減した測定を可能としています。
主な対象ユーザ
大学・研究機関および光半導体デバイスメーカ、光モジュールメーカ
主な用途
- 半導体レーザ・ファイバレーザの発光スペクトル測定
- FBG※4(ファイバーブラッググレーティング)などの光フィルタの波長透過特性測定
光測定分野における当社の取り組み
当社は、1980年代に光測定器の市場に参入し、主に可視領域の光源や光パワーメータを中心に事業を展開してきました。2004年4月には、世界でトップクラスの光通信用測定器メーカである安藤電気を統合し、以降両社の強みを活かした製品を開発してきました。性能の決め手となるデバイスを自社開発することで他社との差別化を果たしています。
光スペクトラムアナライザ以外にも、世界トップクラスのシェアを誇るOTDR(光パルス試験機)や、光パワーメータ、レーザ光源など幅広い製品を揃え、お客様のニーズに応えています。
当社は今後も、最新の市場動向やユーザニーズを製品開発に反映させて、世界でトップクラスの光関連測定器メーカを目指します。
- ※1 分散分光方式光スペクトラムアナライザ:
- 分散分光方式は広範囲の波長の光をプリズムなどで分散させ、そのうちの狭い範囲の波長だけをスリットなどを通して取り出す方式。光スペクトラムアナライザは、その光の波長成分を波長ごとに分け、分布を測定する測定器
- ※2 レーザ吸収分光法:
- ある分子にレーザ光を当てたとき、分子の種別によって特定の波長の光を吸収することを利用し、光スペクトルを分析して、その分子の量を測定する方法
- ※3 高次回折光:
- 元の光の整数倍の波長の光
- ※4 FBG:
- 光ファイバーのコアの屈折率に周期的な屈折率変化が形成されているファイバー型デバイス
以上