「不確かさ」はじめの一歩 (THE T&M LINK(Vol.15)2004年10月20日掲載)
通信・測定器事業本部 第1開発本部 プラットフォーム技術部 霞 芳伸
はじめに
我々は、計測によって得られる測定値には必ず誤差が含まれていることを認識しています。そのため、得られた結果は、「測定値+誤差」という形で利用します。他の人が行った結果を利用するときにも同様の方法を用いています。
ところが、誤差の表現方法は、人(国)や分野で異なります。すると、我々は測定結果を利用するたびにその誤差の表現方法を学ばなければなりません。こうした不便さを解消するために考え出されたのが「不確かさ」の概念であり、その表現方法を統一し示したものが、GUM*1(計測における不確かさの表現のガイド)です。GUMが、国際標準化機構(ISO)から1993年に発行されて以来、日本国内においても「不確かさ」という言葉は広く普及してきましたが、その理解はあまり広まっていないように思われます。
この理由として、不確かさの考え方や算出方法の難しさが挙げられますが、どこからはじめていいか分からないという人が圧倒的に多いのではないでしょうか。
そこで、本稿では不確かさの算出方法について簡単に紹介します。
*1 Guide to the expression of Uncertainty in Measurement
不確かさの不備を指摘してみる
直流電圧発生器を用いてディジタルマルチメータの10Vレンジを校正した場合の結果と不確かさを[表1]に示します。おそらく、不確かさや誤差を少しでもご存知の方ならば、この結果に異議を唱えられるでしょう。そして、測定手順の記載不備や温度、測定器の長期安定性や分解能などの不確かさ(誤差)要因の分析が行われていないことを指摘されるに違いありません。このような指摘を一つ一つ解決していくことが不確かさ解析であり、このような指摘ができれば、不確かさを求めることが可能なのです。
GUMでは、"不確かさの評価は、測定量や測定の性質についての知識の詳しさに依存する。測定の結果に付けられる不確かさの質と効用は、その値付けに携わる人々の理解、鑑識眼のある解析、そして誠実さにかかっている。[注1]"と述べられています。言い換えると、「不確かさとは、その評価を行った人々の、測定に関する知識と誠実さをしめす値」なのです。知識に自信を持てる人は少ないかもしれませんが、それを恐れずに誠実に不確かさを算出するようにしましょう。
[注1] GUM章番号 3-4-8
表1 不確かさ算出例 |
|