背景
再生可能エネルギーの普及が進む中、電力変換技術の開発が重要な役割を果たしています。再生可能エネルギー発電装置 (太陽光発電システムや風力発電システムなど)は通常直流で電力を生成しますが、一般的な家庭や産業用途では交流電力への変換が必要なため、電力変換回路(インバータ)は再生可能エネルギーの効率的な利用に欠かせない装置となっています。また、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、電力系統に直接接続されることが多く、その安定性を確保するためにもパワーコンディショナ* が必要です。
急速に進むカーボンニュートラル社会への貢献として、パワーコンディショナや再生可能エネルギー発電装置の開発は急務となっており、インバータ制御基板を含むハードウェアおよびソフトウェア開発においては信頼性の更なる向上および、電力変換効率の改善を行いながら、いかに開発スピードを高めていくかが重要なテーマになります。
*PCS、パワコン、インバータと呼ぶこともあります。
課題
制御基板の評価では、主にパワーコンディショナ内のインバータ制御の出力信号確認、電源電圧降下時の出力信号確認、制御信号と出力信号タイミング確認など、さまざまな評価仕様項目シートに従いながらオシロスコープによる波形測定を行います。
オシロスコープによる評価時、各種信号間のタイミング確認のため、入力信号のパラメータを変更しながら、制御基板の出力信号を複数測定することがありますが、データ測定後は表計算ソフトウェアなどによるデータ処理が必要になります。
このような評価では、測定回数が増えればファイル数も増えるだけでなく、長時間測定によるデータ数も同様に増えるため、表計算ソフトウェアなどによるデータ処理時間が課題になります。
また、制御基板に採用している電子部品を置き換える場合、変更前の部品と変更後の部品における特性比較のため波形測定を行います。このような比較評価では多くのデータを収集しなければならず、測定後のデータ処理時間が課題になります。そのため、評価における課題を解決するためには、データ処理工数を減らすことが開発スピードや開発効率を上げることに繋がっていきます。
IS8000 による課題解決
IS8000 による提案
複数波形データの同一時間軸表示・比較
オシロスコープDLMシリーズやスコープコーダDLで測定したデータは、オフライン解析にて各測定データの時間軸を合わせ表示することが可能です。同期方法には絶対時刻や波形の先頭、末尾に合わせる方法以外にも、各波形のトリガ位置の情報を元に基準時間軸を合わせることができます。
トリガ位置を基準とし表示することで、トリガが掛かった事象の前後関係を解析することなどに役立ちます。
図1 トリガ位置における2つのファイル表示例
ズーム表示による波形詳細確認
最大同時に4つまでズーム表示可能です。波形の立上り・立下りなど複数個所を同時に詳細確認が可能です。
図2 最大同時に4つのズーム表示例
演算による波形解析
波形確認後、パラメータ測定やカーソル測定だけでなく、拡張演算オプションでは波形演算、FFT 解析も可能です。
画像を用いたレポート作成
自動レポート作成オプションは測定データや波形、グラフ、実験条件など、記載項目をドラッグ・アンド・ドロップでシート上に並べるだけで、技術レポートのレイアウトが簡単に作成できます。また一度作成したレイアウトはひな形として他の測定データにも再利用できます。定形試験のレポート作成や、規格試験の報告書作成の工数の節約に効果を発揮します。
図4 レポート作成例