エアコン向けカロリーメーターにおける利便性を支える高精度電流センサー

エアコン向けカロリーメーターにおける 利便性を支える高精度電流センサー

1. 背景

カロリーメーターを用いたエアコンの消費熱量評価は、エアコン開発・設計で広く採用される基本的な試験方法の1つです。カロリーメーターには消費電力を高精度に測定できるパワーアナライザが組み込まれ、大電流測定時には高精度なAC/DC電流センサーが使用されます。カロリーメーターに組み込まれた測定器は測定精度を維持するため、定期的な校正が求められます。
また、カロリーメーターでは複数台のパワーアナライザを用いた構成もあり、昨今では脱炭素社会の実現に向けて、エアコンの消費電力低減が求められることから、カロリーメーターにもより高精度なAC/DC 電流センサーとパワーアナライザが採用されることが増えています。

 

2. 課題

カロリーメーター内の計測機器は大型のラック内に測定系ごと組み込まれるため、校正時に測定対象を分解することは非常に手間がかかります。特に、電流センサーを使用して測定するような大電流が流れる測定系では、取り回しの難しい太く硬いケーブルや強固な固定が必要となり、分解作業がさらに難しくなります。そのため、極力購入後のメンテナンス管理が簡単になるような設計が望まれます。

課題

また、カロリーメーター内の機器や仕様を更新する際に、取り外しが容易にできる電流センサーであれば既設のカロリーメーターから流用可能な設備が多くなり、コスト低減に繋がります。

 

3. CT1000S、WT5000による課題解決

CT1000S

● 設置が容易になる開閉機構
● 固定用板金の取り付け可能な本体設計
● 被測定導体位置の影響を低減する導体位置アジャスタ

WT5000

● 世界最高クラスの確度を誇るパワーアナライザ
● 柔軟な運用が可能な最大7入力モジュラー構造

 

4. CT1000Sによる提案

4.1 設置が容易になる開閉機構

AC/DCスプリットコア電流センサーCT1000Sは開閉機構をもつ、高精度なAC/DC電流センサーです。これにより、測定対象のケーブルを切断することなく電流センサーを取り外しすることが可能です。
カロリーメーターはラック内に測定系が組み込まれているため、電流測定ケーブルを容易に取り外すことはできません。しかし、電流センサーも定期的に校正を行う必要があることから、通常の貫通型電流センサーでは校正のたびに測定系を分解する必要があります。CT1000Sを採用することで、センサーを取り外す際に測定系を分解せず取り外すことができます。

図1 CT1000Sの開閉操作イメージ

図1 CT1000Sの開閉操作イメージ

 

4.2 固定用板金の取り付け可能な本体設計

CT1000Sは、メインユニットにネジ穴(M4)が計6箇所あるため、センサー本体を板金と固定することができます。カロリーメーターに開閉機構をもつ電流センサーを採用する際、通常の貫通型電流センサーに比べて固定が難しいことが多いですがCT1000Sを採用すると、この問題を解決することができます。
図2はCT1000Sを1 台、壁面に固定したイメージです。本来では配置できない中空領域にも配置可能になります。
図3はこの機能を活かした三相電流測定時のラック内での配置イメージです。このように、ネジ穴と本体ロックレバーに容易にアクセスできるよう配置することで、安定した測定と容易なメンテナンス管理を両立できます。

図2 ネジを活用した壁面への固定イメージ

図2 ネジを活用した壁面への固定イメージ

図3 三相電流測定時のラック内配置イメージ

図3 三相電流測定時のラック内配置イメージ

 

4.3 被測定導体位置の影響を低減する導体位置アジャスタ

CT1000Sでは、被測定導体位置の影響を低減できるアジャスタを標準で付属しています。
電流センサーの原理上、被測定ケーブルが電流センサーの中心を通っていることが理想です。しかし、実際の測定では常に中心を通すことは難しく、ケーブルの位置による影響が測定値へ現れます。
CT1000Sでは導体位置アジャスタを取り付けることにより、被測定ケーブルの軸位置を制限し、軸位置のずれによる影響を軽減します。導体位置の影響は、導体位置アジャスタ未使用時は±0.2% of reading 以下ですが、アジャスタ使用時には±0.1% of reading 以下となり、導体位置の影響を軽減できます。

図4 導体位置アジャスタ(左)と取付イメージ(右)

図4 導体位置アジャスタ(左)と取付イメージ(右)

 

5. WT5000による提案

5.1 世界最高クラスの確度を誇るパワーアナライザ

WT5000は世界最高クラスの測定確度となるトータル±0.03%(50/60 Hz、定格入力時)を実現したパワーアナライザです。
最大7エレメントまで搭載可能で、広いダイナミックレンジを備えており、機器の省エネルギー設計時には欠かせない大きく変化する電流値にも対応可能です。
また、電流センサーエレメント760903を使用することで大電流測定で必要となる、AC/DC 電流センサーや電流クランププローブ接続が可能になります。760903はプローブ電源端子を備えていますので、外部DC電源や手間のかかる配線の準備が不要となり、センサーやプローブと本体1台で大電流測定が可能となります。

図5 プレシジョンパワーアナライザWT5000

図5 プレシジョンパワーアナライザWT5000

図6 電流センサーエレメント760903

図6 電流センサーエレメント760903

 

5.2 柔軟な運用が可能な最大7入力モジュラー構造

WT5000は従来モデルと同等サイズながら、最大7入力の電力測定を実現しました。これにより、現在運用しているカロリーメーターのスペースを活用しつつ、電力入力を増設することが可能です。また、モジュラー構造を採用しており、電流直接入力30 Aエレメント、5 Aエレメント、電流センサーエレメントの3種類から、測定対象に応じて選択いただけます。エレメントは、お客様にて入れ替えや増設が可能です。各エレメント単体での校正も可能であるため、エレメントを必要台数ご用意いただくことで、校正の空白期間を最小化できます。

図7 モジュール入れ替えのイメージ

図7 モジュール入れ替えのイメージ

横河計測ではWT5000以外にも、高精度かつ最大6系統の電力測定が可能なWT1800Rや、コンパクトながら高い信頼性と多彩な機能をもつWT300Eシリーズなど豊富なラインアップをご用意しています。求められる測定精度や、必要な機能に応じて最適な製品を選択していただくことが可能です。

図8 測定精度によるWTシリーズのラインアップ比較

図8 測定精度によるWTシリーズのラインアップ比較

 

電力センサー比較表

電力センサー比較表

 

CT1000Sの特性例

ディレーティング特性例

外部磁界なし、導体位置中心で規定
*動作環境温度 MAX +40℃では DC1500 A(連続)、DC1700 A(1分間)を許容

ディレーティング特性例

周波数特性例

周波数特性例

位相特性例

位相特性例

関連業種

関連製品とソリューション

AC/DCスプリットコア電流センサー CT1000S

AC/DCスプリットコア電流センサーは被測定対象のケーブルを切断することなく大電流を測定できます。電力計、波形測定器での使用が可能です。

プレシジョンパワーアナライザ WT5000

持続可能な社会の実現に向けて、COP21におけるパリ協定の採択、既存エンジン車の販売停止計画発表など、グローバルで太陽光/風力発電に代表される再生可能エネルギーへのシフトと、EVやPHVおよびそのインフラ網の開発が加速しています。それらの更なる省電力化と高効率化を支援するために、従来機種の性能と機能を格段に向上させた高精度電力計です。

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