再生可能エネルギーにおける系統擾乱時の長時間電力評価

再生可能エネルギーにおける系統擾乱時の長時間電力評価

背景

再生可能エネルギーの普及が進む中で、系統擾乱が発生することがあります。これは、電力系統において電圧や周波数が急激に変動する現象であり、電力品質に大きな影響を与えることがあります。特に、太陽光発電や風力発電などの出力が大量に電力系統に連系された場合、これらの擾乱が頻発することが懸念されています。たとえば、一斉に解列(切り離し)することで電力品質に重大な影響を与えます。
メガソーラーを含む太陽光発電システムや風力発電システムなどの再生可能エネルギーを利用した発電システムでは、発電された電力を効率的に変換し供給する必要があります。この変換効率は年々向上しており、変換ロスの低減が市場競争力を高める重要な指標となっています。このような問題を防ぐためには、瞬時的な電圧低下が発生しても運転を継続する運転継続性能が重要です。さらに、系統擾乱時においても電力品質を確保するために必要となる分散電源の運転継続性能要件の整備が引き続き進められています。これらの効率評価には、電圧変動や周波数変動試験、温度上昇試験などがあり、電力計を使った電力計測、および波形測定器を使った瞬時波形変動の確認や、温度の測定などの試験が世界各国で行われています。
再生可能エネルギーの導入が進む中で、これらの系統擾乱時の課題を解決するための技術的な取り組みが重要性を増しています。たとえば、分散型電源の増加に伴い、系統全体の安定性を維持するためのリアルタイム監視システムの導入が進められています。これにより、発電所ごとの発電量の変動を迅速に把握し、需給バランスを適切に保つことが可能になります。

課題

再生可能エネルギーの発電量は、自然の状況により変動するケースが多いため、発電容量の急増により電力系統が不安定になることがあります。また、系統に落雷があり発電システム側が一斉に解列する場合なども電力系統に影響を与えます。このような現象が起こった時の有効電力、無効電力、電圧値、周波数、力率、効率などの変動を捉えて詳細に確認したいという要望があります。
また、波形測定器は系統を長時間連続監視して異常な波形データを捉えることが主な目的でありますが、長時間に渡る波形観測ではデータ量が多くなり、気になる波形や異常データを探しにくくなる問題もあります。
このような問題を解決したいため、電力計の数値データと波形データを長時間、同一時間軸上で測定して異常データなどを確認・監視をしたいケースが増えてきています。

DL950による課題解決

  • 多彩なプラグインモジュール
  • デュアルキャプチャ機能
  • リアルタイム演算・電力演算
  • 測定器ごとの電力測定機能の比較
  • IEEE1588による同期計測
  • 分散型電源の測定アプリケーション例

DL950による提案

多彩なプラグインモジュール

高速・高精度の電圧測定から温度、加速度、ひずみ、周波数、ロジック、およびCAN/CAN FD/LIN/SENT車載シリアル通信データの計測など、多彩なプラグインモジュールをご用意しています。DL950本体の8つのスロットに装着し、お客様の測定ニーズにあわせて柔軟に構成を組むことができます。
また、メインユニット1台に対し、最大4台のサブユニットを光ファイバーコードで接続すると、最大160チャネルまで拡張が可能です。測定スタート/ストップ、トリガタイミング、サンプルクロックを同期できます。

図1 スコープコーダ DL950

図1 スコープコーダ DL950

図2 多彩なプラグインモジュール

図2 多彩なプラグインモジュール

デュアルキャプチャ機能

耐久試験などでは長時間のトレンドを把握するために、低速サンプリングによりデータ収集を行います。しかし突発的に発生する高速な過渡現象は、高速サンプリングで測定する必要があります。デュアルキャプチャ機能は、2つの独立したサンプリングを同時に実行することが可能です。
本機能はアプリケーションメニューに登録されており、簡単に設定、実行できます。

図3 デュアルキャプチャ機能による波形取得のイメージ

図3 デュアルキャプチャ機能による波形取得のイメージ

リアルタイム演算・電力演算

リアルタイム演算(/G03オプション)では、取り込んだ信号にさまざまな演算を施し、結果をリアルタイムにトレンド表示します。演算結果に対してトリガをかけたり、波形パラメータの自動測定やカーソル測定をすることも可能です。また入力信号および演算結果へのフィルター処理が可能です。さらにリアルタイム演算は、入力チャネルとは独立しているので、入力32チャネル + 16チャネルのリアルタイム演算結果を同時に表示・解析できます。
電力演算(/G05オプション)では、リアルタイムに1周期ごとの実効値、有効電力、積算電力、高調波など最大126種類の電力パラメータを演算し、測定する電圧、電流信号と、演算した電力パラメータのトレンド波形を、同時にリアルタイム表示します。電力パラメータのトレンド波形でトリガをかけることも可能です。
※電力演算オプションには、リアルタイム演算オプションが含まれています。

図4 単相電圧・電流波形と電⼒パラメータ演算の例

図4 単相電圧・電流波形と電⼒パラメータ演算の例

電⼒測定機能の⽐較

モーターやデバイスなどの電⼒を測定するには、⾼精度測定が可能な専⽤の電⼒計やオシロスコープの演算機能を利⽤する場合もあり、それぞれ⻑所・短所があります。
DL950の電⼒演算(/G05オプション)は、温度や振動などと⼀緒に、総合的な電⼒測定する場合に最適です。

  スコープコーダ 電⼒計 オシロスコープ
代表モデル
(オプション)
DL950
電⼒演算オプション(/G05)
WT5000 DLM5000 /DLM5000HD
電源解析機能オプション(/G03、/G3)
DL950 電⼒演算オプション(/G05) WT5000 DLM5000 /DLM5000HD 電源解析機能オプション(/G03、/G3)
電⼒測定機能 最⼤三相2系統を同時演算
結線⽅式:
1P 2 W、1P 3 W、3 P 3 W、
3 P 3 W(3 V 3 A)、3 P 4 W
最⼤三相3系統を同時演算
結線⽅式:
1P 2 W、1P 3 W、3 P 3 W、
3 P3 W(3 V 3 A)、3 P 4 W
最⼤4系統の電圧、電流波形に対し
電⼒パラメータの⾃動測定
統計処理や演算可
その他の機能 ● ⾼調波解析
● 同期チャネルフィルター
● 同時⾼調波解析
● IEC⾼調波フリッカ測定
● モーター評価機能
● DA出⼒
● 電源解析機能:
スイッチング損失、安全動作領域、
⾼調波解析、ジュール積分
● オートデスキュー機能
チャネル数 最⼤16 最⼤ 7
(電圧と電流ペア)
8または4
※DLM3000 /DLM3000HDは4または2
同期運転台数 最⼤5 最⼤ 4 最⼤ 2
電圧・電流波形観測 /DSオプション(最⼤2 MS/s)
サンプリングレート 最⼤200 MS/s* 10 MS/s(電力演算用) 2.5 GS/s
ADC 分解能 12/14/16 Bit * 18 bit DLM5000:8 bit
DLM5000HD:12 bit
最⼤⼊⼒電圧 1000 V(DC + Acpeak) 1000 V、1500 Vdc 300 Vrms/400 Vpeak
利⽤シーン ● ⼤きな電⼒変動の評価
● 温度や振動、⾞載バスデータ
などとの統合計測
⾼精度電⼒測定 ⾼速サンプリングでの波形観測と
合わせた、おおまかな特性の評価
  * 使用するモジュールによる ※仕様の詳細については、各製品カタログにてご確認ください。

■ プレシジョンパワースコープ PX8000

PX8000は、最⼤100 MS/sの⾼速サンプリングと20 MHzの測定周波数帯域で、過渡的な電圧・電流および電⼒の測定および解析が可能です。

主な特長

  • カーソルで指定された区間の電⼒演算
  • 1サイクルごとのトレンド電⼒演算
  • 最⼤500次の⾼調波解析
  • FFT波形解析
  • ユーザー定義演算機能
プレシジョンパワースコープ PX8000
プレシジョンパワースコープ PX8000

IEEE1588による同期計測

IEEE1588は、ネットワークに接続された測定器と制御システムの高精度時刻同期のプロトコル(Precision Time Protocol、以下PTP)のための規格です。LANネットワークに接続された測定器同士もしくは制御システム間において、誤差1μs以下の高精度なクロック同期を実現します。GPS衛星の基準クロックをPTPグランドマスターを通じて各測定器に供給することで、ネットワーク内だけでなく遠隔地の測定器のクロックとも同期させることが可能です。スコープコーダDL950はこのPTPにおけるマスター機能を有しているため*、PTPグランドマスターがない場合でもローカルネットワーク内の対応測定器の高精度なクロック同期が可能です。また、IS8000はこれらのクロック同期された各測定器の同時測定データを同一ウィンドウに合成する機能も有しています。
*/C40 IEEE1588マスター機能オプションが必要です。
* DL950、DLM5000、WT5000は、標準仕様としてIEEE1588のスレーブ機能が搭載されています。

図5 同期測定のイメージ

図5 同期測定のイメージ

分散型電源の測定アプリケーション例

水力、太陽光、風力などの再生可能エネルギーは電力網(グリッド)に接続され、持続可能な社会の実現に貢献しています。DL950は電力の長時間記録や解析機能により、そのサポートをしています。たとえば風力発電タービンでは、複数箇所での発電効率を時刻同期して観測する必要がありますが、GPS *やIRIG信号*により高精度に時刻同期することができます。また、太陽光パネルで発電された直流電力をグリッドに載せるためのDC/AC 変換効率は高精度電力アナライザWT5000により高精度に計測することができ、DL950の電力解析結果とともにIS8000で統合的に検証することができます。
*/C35 IRIG、GPSインタフェースオプションが必要です。

分散型電源の測定アプリケーション例

図6 IS8000、DL950、WT5000を使った同期測定例

図6 IS8000、DL950、WT5000を使った同期測定例

関連業種

関連製品とソリューション

スコープコーダ DL950

DL950は、DL850E/EVの機能・仕様を大幅に改善し、タッチパネルによる直観的操作を可能した新時代のスコープコーダです。
200MS/s高速サンプルレート、最大8Gポイントメモリー、複数台同期で最大160CHが可能で、お客様の様々なニーズにお応えします。

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