発電システムと電力系統の電力パラメータ測定

発電システムと電力系統の電力パラメータ測定

背景

近年、持続可能な社会の実現に向けて、クリーンなエネルギーとして再生可能エネルギーが注目されています。世界各国では、化石燃料に替わるエネルギーとして再生可能エネルギーの開発が進められています。
再生可能エネルギーの発電方法の1つに太陽光発電があり、太陽光発電ではソーラーパネルに当たる太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換して発電します。しかし、それだけでは我々の生活で使用することができません。発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナや、夜間や停電時にも電力を使用できるように電力を蓄えておく蓄電システムなどが必要です。太陽光以外の発電システムにおいても、発電装置と周辺設備を組み合わせることで、自然エネルギーから変換された電力を使用目的に適した形で取り出すことができます。
発電された電気は、電力系統を通じて各家庭や会社、工場に送られます。再生可能エネルギーは気象状況により発電量が変動するため、大量導入が進むと電力需給のバランスの維持が難しくなります。需給バランスが崩れると電力系統の周波数に乱れが生じ、発電機や工場の機器に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、この電力系統への影響が大きくなると大規模な停電に繋がる可能性もあるため、電力の需給バランスを監視し、蓄電システムなどを使用して制御する必要があります。

課題

再生可能エネルギーでは、発電した電気が消費者の元に届くまでに多くの損失が発生しています。たとえば、発電装置がエネルギーを電気に変換する過程で、一部のエネルギーが熱や振動として放出され、損失が生じます。さらに、発電した電気は送電線の電気抵抗でも損失が発生します。これらの損失を抑えることは、電力の安定供給や発電コストの低減に繋がります。
一方で、落雷や暴風雨などが原因で電力系統の事故が発生することがあります。事故の区間を的確に検出することで早期復旧が期待できるため、広範囲かつ高精度な電力系統の監視が必要になります。また、各変電所などで電圧及び電流波形をモニターし、その変動や電力ピークの情報から電力系統の効率的な運用や省エネへ向けた分析を行うことが求められています。

DL950による課題解決

  • 高電圧・大電流の波形測定
  • 電力演算機能を用いた電力パラメータ測定
  • 複数台の高精度同期による多チャネル計測
  • PCへの10 Gbps高速データ転送による作業効率向上

DL950による提案

高電圧・大電流の波形測定

DL950は高電圧・大電流の波形測定ができます。DL950はモジュールタイプの入力形式となっており、モジュールによって測定できる電圧範囲が異なります。
高速200 MS/s 14ビット絶縁モジュール(720212)および絶縁入力モジュール用の安全型パッシブプローブ (702902/700929/701947)を組み合わせることで1000 V(DC + ACPeak)までの測定ができます。その他の電圧測定用モジュールにおいても600 Vまで、あるいは800 Vまで測定可能なモジュールがあります。

図1 高速200MS/s 14ビット絶縁モジュール(720212) 絶縁入力モジュール用パッシブプローブ(702902/700929/701947)

図1 高速200MS/s 14ビット絶縁モジュール(720212)
絶縁入力モジュール用パッシブプローブ(702902/700929/701947)

電流測定については、各種電圧測定モジュールとたとえばAC/ DCスプリットコア電流センサー(CT1000S)を組み合わせることで、最大AC1000 A/DC1500 A*までの大電流を測定することができます。開閉式の電流センサーのため、測定ケーブルを切断することなく計測が可能です。
またCT1000Sへの電源供給は、DL950本体にプローブ用電源を搭載することで対応できます(/P4または/P8オプション)。
また、CT1000Sはフラックスゲートタイプの構造であり、当社独自の技術で低ノイズ化を実現しているため、波形測定器においても低ノイズで高精度な計測が可能となります。したがって、CT1000Sが波形測定器と電力測定器のいずれにおいても使用できることは特長の1つです。
* 動作環境温度 MAX+40℃ではDC1500 A(連続)

図2 AC/DCスプリットコア電流センサー CT1000S

図2 AC/DCスプリットコア電流センサー CT1000S

電力演算機能を用いた電力パラメータ測定

DL950は、発電システムや電力系統の電力パラメータ解析ができます。DL950の電力演算機能(/G05オプション)は、波形を測定しながら118種類(1系統の場合)の電力パラメータをリアルタイムに演算するため、測定波形と同時に演算結果を波形データとして表示することができます。そのため、各種電力パラメータの変化を高速かつ正確に把握することが可能です。
電力パラメータは、電圧・電流実効値や有効電力量、皮相電力量、無効電力量、力率、位相角などを周期ごとに演算できます。周期は任意のチャネルを指定してゼロクロスを自動で検出して切り出すか、更新時間を指定して一定の時間間隔で切り出すことができます。

図3 電力演算機能を使用した測定例

図3 電力演算機能を使用した測定例

また、DL950では電圧・電流の実効値や有効電力に含まれる高調波成分の解析も可能です。
実効値は1~40 次、有効電力は1~35 次の成分に関して値や含有率、位相を求めることができます。演算結果は次数順にリスト表示することや、バーグラフで表示することができます。さらに、有効電力の解析では、電圧や電流をベクトル表示することも可能です。

図4 高調波解析機能を使用した測定例

図4 高調波解析機能を使用した測定例

複数台の高精度同期による多チャネル計測

DL950は、電力系統の離れた場所における波形や電力を同期して測定できるので、1台では足りない系統システムの信号を同時に測定することが可能です。
DL950のIRIG、あるいは、GPSインタフェース(/C35オプション)を搭載しGPSユニット(720940)を使うことで、GPSの時刻同期信号を受信し複数台を同期させて測定することができます。±200 ns(Typical値)の高確度で同期測定を行うことができ、測定データは統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000を使用して同時間軸上で表示・解析することができます。GPS信号による時刻同期計測は、各発電所や変電所、設備など離れた場所の測定に有効です。

図5 GPS 信号による時刻同期のイメージ図

図5 GPS 信号による時刻同期のイメージ図

また、DL950は複数台同期インタフェース(/C50オプション)により、光トランシーバモジュール(720941)と光ファイバーコード(720942)を使用して最大5台のDL950を同期接続して測定することができます。測定スタート/ストップやトリガータイミング、サンプルクロックを同期することができ、±(30ns +1サンプル)(Typical値)の高確度での同期計測を実現しています。

図6 光ファイバーコードによる同期接続のイメージ図

図6 光ファイバーコードによる同期接続のイメージ図

他にもIEEE1588による時刻同期*や、IRIGによる時刻同期にも対応しています。測定環境や必要な同期確度に応じて、複数 台のDL950の同期測定方法を提案することができます。
* DL950をIEEE1588のマスターとして使用する場合はIEEE1588マスター機能(/C40オプション)が必要です。

PCへの10 Gbps高速データ転送による作業効率向上

DL950は10 Gbpsイーサネットインタフェース(/C60オプション)により10 Gbpsの高速データ転送*を実現しています。従来機種DL850Eでは100 kS/s(16 ch)でのPCストリーミングでしたが、DL950は100倍の20 MS/s(8 ch)の高速データ転送が可能になり、統合計測ソフトウェアプラットフォー ムIS8000などのPCソフトウェア上で測定データをリアルタイムにロギングできます。特にパワーコンディショナのインバータ測定においては、スイッチング周波数が高速な信号であるため、早いサンプルレートでデータ取得する必要があります。最速 20 MS/sのPC連続データ転送の性能は、試験を中断することなくデータ出力ができます。データ転送のためだけに何分間も待つ必要はありません。
このようにDL950は、各種機能を用いることで、より高速かつ正確に、そして効率的に電力系統に関連するデータ測定・解析を行うことができます。
* HiSLIP通信:High-Speed LAN Instrument Protocol
1000BASE-T(1Gbps)に比べて理論上10 倍高速なデータ転送が可能です。
* DL950 10 Gbpsイーサネットインターフェス(/C60オプション)が必要です。
オプションがない場合、200 kS/s(16 ch)になります。
*USB3.0 通信での転送レートは64 MB/sです。

PCへの10 Gbps高速データ転送による 作業効率向上

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スコープコーダ DL950

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200MS/s高速サンプルレート、最大8Gポイントメモリー、複数台同期で最大160CHが可能で、お客様の様々なニーズにお応えします。

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