世界の電気エネルギーの消費量は、再生可能エネルギーの利用拡大に伴い、ますます増加する見込みです。特に太陽光発電や風力発電などの分散型エネルギーシステムの導入が進む中、これらのシステムの効率的な運用が求められています。
一方、再生可能エネルギーは天候や環境条件に大きく左右されるため、発電量が変動することが多く、安定した電力供給を実現するためには、精密なエネルギー管理が不可欠です。さらに、これらのエネルギーシステムでは、蓄電池やパワーコンディショナなどの周辺機器も重要な役割を果たしており、それらの機器の制御と動作状況の監視が必要です。特に、過渡的な状態や負荷変動時におけるエネルギーの効率的な変換と管理が求められており、総合的な波形測定と解析が重要となります。また、再生可能エネルギーシステムの評価には、多くの測定ポイントを同時に観測できる多チャネル波形測定が不可欠です。
これにより、エネルギーシステム全体の効率を最大化し、安定した電力供給を確保することが可能となります。従来の測定器では、これらの複雑なシステムを総合的に解析することは困難であり、新たな測定技術が必要とされています。
再生可能エネルギーシステムは、多くのコンポーネントが連携して動作するため、それぞれのデバイスやシステム全体の動作を多チャネルで同時に観測する必要があります。従来の4チャネルオシロスコープでは、複雑なシステムの動作を一度に解析することが困難です。さらに、再生可能エネルギーシステムの評価には、長時間にわたる波形の記録と詳細な波形解析が必要であり、ロングメモリーを搭載したオシロスコープが求められます。各種コンポーネントの性能を最大限に引き出すためには、制御信号や電力変換信号を様々な視点から確認する必要があります。たとえば、パワーコンディショナの設計やトラブルシューティングでは、各ポイントの電圧・電流信号を正確に捉える必要があります。
図1 インバータの測定ポイント例
2台のDLM5000HD(/SYオプション付き)または、2台のDLM5000(/SYNオプション付き)を専用接続ケーブル(701982)で接続することにより、最大でアナログ16チャネル、ロジック64 bitの同期測定が可能になります。
専用インタフェースは本体に標準装備のため、後からオプション追加ライセンスで追加も可能です。捕捉波形はそれぞれのユニットで表⽰されます。
トリガは共通に動作し、レコード長やサンプルレート、アクイジションの設定、横軸スケールの設定など共通項目は連動するので、まるで 1台の16チャネルオシロスコープのように使えます。
※ DLM5000とDLM5000HD は、DLMsync機能での接続はできません。
図2 専用ケーブルによる2台連結
同期した2台の測定器は連携状態になり、いくつかの操作はメインとサブで共有されます。たとえば波形をズームして表⽰した場合、もう一方も自動で同じ位置をズームして表⽰することができます。測定データはまとめて出力することができるので、統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000と組み合わせることで16チャネルを一度に確認することができます。
図3 統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000
12 bitの測定器は特にオーバーシュート後のリンギングなどの現象を正確に計測するのには非常に効果的です。波形の全体像を確認しながら、微細な変化を正確にとらえる最適なレンジ設定が可能となります。
サンプルレート2.5 GS/sで最大0.2 秒、50 MS/sで最大10 秒の波形を捕捉できます(DLM5000)。
サンプルレート2.5 GS/sで最大0.2 秒、50 MS/sで最大20 秒の波形を捕捉できます(DLM5000HD)。
※DLM5000では、オプション付加により最大メモリー 500Mポイント
※DLM5000HDでは、オプション付加により最大メモリー1G ポイント
過去に取り込んだ波形を最大100,000 個、アクイジションメモリーに自動で保持します。後から抽出して解析が可能です(DLM5000HDでは、最大200,000 個)。
取り込んだ波形は、指定した1 波形を画面に表⽰またはすべての波形を一括表⽰が可能です。
ヒストリ波形に対しては、カーソル測定、演算などができます。ヒストリ機能により、トリガで捕捉しにくい波形に対しても、さかのぼって波形を確認できます。
ヒストリ機能
また膨大なヒストリ波形から、条件に合う波形を呼び出すために、強力なヒストリサーチ機能があります。
画面上に注目する波形の一部をとらえる四角いゾーンを指定する方法、測定した波形全体を取り囲むようなゾーンを指定する方法、多角形(ポリゴン)のゾーン指定など、直観的で簡単な波形サーチ機能が用意されています。また、電圧やパルス幅の異常値など注目する値が分かっているときは、波形パラメータでのサーチも可能です。
図4 ヒストリサーチ機能
ロングメモリーに取り込んだ多チャネルの波形は、横軸にも縦軸にも拡大して詳細を観測する必要があります。DLMシリーズではズーム専用のキーと拡大縮小のノブがあるので、見たい箇所をすぐにズームアップできます。また、タッチスクリーンを使ってスクリーン上で拡大したい領域を指定することでズームアップも可能です。
時間軸スケールの違う拡大波形を2箇所同時に表示することができます。また、Auto Scroll機能で、ズーム表示位置を自動的にスクロールさせることができます。ある現象の「原因」と「結果」といったように離れた箇所を同時に拡大したり、拡大率を変えて表示できるので、ソフトウェアのデバッグには大変有効です。
図5 2か所同時ズーム
電圧・電流波形から、スイッチング損失[V(t)×(i t)]を演算します。ターンオン/オフの個別損失計算、導通損失を含めた損失、50 Hz/60 Hz周期の長周期での損失など、多様な解析手法に対応しています。また、サイクルモードを用いることで、損失を求める積分演算の範囲をスイッチング周期で切り出せるため、より正確な解析が可能です。
図6 スイッチング損失の解析画面
最大4 組の電圧、電流波形に対して有効電力/ 皮相電力/ 無効電力/力率などの電力パラメータを自動測定できます。二電力計法による三相電力のΣ演算や測定結果の統計処理なども可能です。
図7 電力パラメータの測定画面
図8 スコープコーダ DL950とモジュール
DLM5000シリーズは、DLM4000シリーズの機能・操作性を継承しつつ、タッチパネル搭載により使いやすさに磨きをかけた新設計の大画面アナログ 8ch 入力 オシロスコープです。新たに4chモデルも追加されました。2台連結同期により、最大16chの測定が可能で、高度化・高速化するパワーエレクトロニクス、カーエレクトロニクス、メカトロニクス開発に最適です。