インバータ効率試験における短時間評価の実現

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

1背景Introduction
xEV(電動車)の進化に伴い、自動車の航行距離は年々伸びてきている。バッテリーの容量向上やモーターの損失低減などもあるが、モーターを駆動するインバータの効率アップも1つの要因である。モーターを駆動するためのインバータ効率は、様々な負荷条件があるため一定の効率ではない。
市街地などの低速運転領域、高速道路の高速運転時やモーター・インバータに負荷のかかる上り坂、あるいは、回生電力をバッテリーに充電できる下り坂などの各種条件での効率評価が求められている。
また、効率が悪くなる条件下でもインバータ制御を最適化することで、よりエネルギー効率を高くし航行距離を伸ばすための開発・評価が進められている。

 

背景

2課題Challenges
電力の変換効率試験は、様々な条件において損失がどれぐらいであるかを算出するために行われている。特にxEV(電動車)におけるインバータ効率試験ではトルク、回転速度の条件を変えて、多くの試験を行う場合がある。
一方、長時間モーターを稼働させたままの試験はできないこともある。なぜなら効率はモーターの発熱などの温度による影響を受けるため、同じ条件においても効率の値が変わってしまう。
したがって、できるだけモーター自体を同じ温度範囲に保ちながら試験を行う必要がある。理想的には非常に短い時間で多くの試験パターンを繰り返すことができればよいが、回転速度の変更やトルクの変更は時間がかかることもあるため、休止しながら効率試験を進めていく。
また、電力計で取得するデータは数値データであり、インバータの入出力間の電圧、電流、電力や効率などのデータを取得しても転送時間が問題になることはない。しかし、波形測定器を使ったインバータ波形のPC転送は、大量データのためリアルタイムに転送することは困難なことがあり、画像データでの保存のみ、あるいはデータは波形測定器本体に保存することも多い。
効率データを含む各種電力データとともにインバータの波形データをPCにて同時取得ができる仕組みがあれば、短時間でいろいろなパターンの試験ができるため試験時間の短縮につながる。

3IS8000による課題解決Solution

IEEE1588規格によるDL/WT時刻同期測定
DL950 10Gbit高速転送による作業効率向上
任意の場所のデータをCSV/mf4にファイル変換
相関関係を把握する信号群別にグループ分けし、グループ単位で波形を表示
リンクファイル/分割ファイルによるデータ管理

4.IS8000による提案Detailed description
4.1 IEEE1588規格*によるDL/WT時刻同期
波形測定器の波形演算機能を使って電力値を表示させる方法により電力値の検証を行うケースがあるが、測定波形とトレーサビリティのとれた高精度な電力値としての結果を得ることはできない。IS8000統合計測ソフトウェアプラットフォームはIEEE1588時刻同期を使いDL950WT5000を同時に接続*することで同期測定が簡単に可能になる。DL950WT5000の同期誤差10μs*である。
DL950で取得できる最速20MS/s8ch同時の連続波形データとともにWT5000の電力データをPCの同一時間軸上に表示できる。そのため、電力計データは波形データとともに時系列のトレンド表示ができるので微妙な電力変動を確認できる。
たとえば実際に起こっている電力変動から異常波形データを確認し問題を発見することも可能になる。


* IEEE1588規格:ネットワーク上でつながる機器間の時刻同期に使用される高精度
 時間プロトコル(PTP)。PTP=Precision Time Protocol
* DL950 IEEE1588マスター機能(時刻同期)(/C40オプション)が必要
* DL950 2台のIEEE1588同期の誤差は±150ns
* DL950 10Gbpsイーサネット(/C60オプション)が必要
* 2台の同期計測はIS8000 複数台同期オプション(/SY1)が必要

4.2 DL950 10Gbit高速転送による作業効率向上
スコープコーダDL95010Gイーサネットインタフェースオプション(/C60)により10Gbpsの高速データ転送*を実現した。従来機種DL850Eでは100kS/s16ch)でのPCストリーミングであったが、DL950100倍の20MS/s8ch)の高速データ転送*が可能になり、PCソフトウェア上にリアルタイムに測定データを表示できる。特にインバータ測定においてはスイッチング周波数が高速な信号であるため早いサンプルレートでデータ取得する必要がある。最速20MS/sPC連続データ転送の性能は、試験を中断することなくデータ出力ができる。データ転送のためだけに何分間も待つ必要はない。さらに、高精度電力計WT5000と組み合わせることで高速波形データと電力データを同期させて電力のトレーサビリティの取れた高精度電力計測を実現できる業界初の性能・機能を実現できる。

*HiSLIP通信 :High-Speed LAN Instrument Protocol
 1000BASE-T1Gbps)に比べて理論上10倍高速なデータ転送が可能。
* DL950 10Gbpsイーサネット(/C60オプション)が必要。オプションがない場合、200kS/s(16ch)

図1 DL850EとDL950(10GbE)のデータ転送比較

1 DL850EDL95010GbEのデータ転送比較

図2 DL950とPCとの接続図

2 DL950PCとの接続図

4.3 任意の場所のデータをCSV/mf4にファイル変換
効率試験を行う場合、モーターの温度上昇による効率データへの影響を避けるため短時間で評価を進めたいことがある。たとえば、20MS/s8ch*で、トルク、回転速度を短時間だけ一定時間に保ちながら何パターンか取りたい場合がある。このような試験データの解析・保存は、後解析による特定データを切り出す方法が便利である。
測定終了後、特定のエリアをズームすることでそのエリアだけのデータを保存できる。ズーム範囲は拡大縮小ボタンを使うことで5秒間、10秒間と決まった時間分、電力計データは100個、200個など決まった個数分だけCSV/mf4ファイルに保存できる。ズーム範囲は同時に最大4個表示できるので、4パターン分のデータを一度に保存できる。CSVファイルは波形データと電力計データはサンプルレートが異なるため別々のファイルが作成される。
* DL950 10Gbpsイーサネット(/C60オプション)が必要。

図3 モーター回転数変更時の効率と電圧・電流波形

3 モーター回転数変更時の効率と電圧・電流波形

図4 特定データを切り出すためのズーム範囲指定

4 特定データを切り出すためのズーム範囲指定

図5 最大同時に4つのズーム表示例

5 最大同時に4つのズーム表示例

図6 指定したズーム範囲のCSV/mf4ファイル保存例

6 指定したズーム範囲のCSV/mf4ファイル保存例

4.4 相関関係を把握する信号群別にグループ分けし、グループ単位で波形を表示
インバータ測定では数多くの信号、数値データをモニターする必要があるが、限られた波形表示エリアではすべてを同時に観測することが難しい。よって関連性する信号のグループに分けて観測する必要がある。IS8000による波形観測であれば、波形表示ウィンドウを自由に配置することができ、また複数のグループに関連する信号はそれぞれの波形ウィンドウに重複させて表示させることもできる。

図7 チャネル設定とグループの表示トレース選択

図7 チャネル設定とグループの表示トレース選択

図8 グループ設定Group1の測定データ表示例

図8 グループ設定Group1の測定データ表示例

図9 グループ設定Group2の波形データ表示例

図9 グループ設定Group2の波形データ表示例

図10 グループ設定Group3の各電圧RMSの比較例

10 グループ設定Group3の各電圧RMSの比較例

図11 電力データのトレンドとX-Y表示例

11 電力データのトレンドとX-Y表示例

4.5 リンクファイル/分割ファイルによるデータ管理
IS8000は、測定したデータを1つのリンクファイルとして管理できる。従来のように別々に測定した波形データファイルと電力データファイルを関連づけるために同じ名前をつけて保存する、あるいは測定データごとにフォルダを作成し、その中に波形ファイルと電力データファイルを入れて管理するなどの作業は不要となる。IS8000を使って同時に測定することで波形データも電力データも1つの統合ファイルとして管理できる。
また、便利なファイル分割機能もある。ファイルを分割する時間やサイズを設定することで、分割ファイルを作りながら全時間のデータファイルを一元管理できる。測定の途中で解析をしたい場合は、分割ボタンを押すことでファイルを分割させて解析することもできる。たとえば、24時間の測定を行っているときに1時間ごとのファイル分割時間を設定することで測定しながら測定終了した時間分のデータを解析できる。測定終了後は分割ファイルのみでは扱いにくいため、1つのリンクファイルとして管理することができる。

図12 リンクファイルと分割ファイルの統合イメージ

12 リンクファイルと分割ファイルの統合イメージ

図13 3分割したファイルのリンクファイル(左上)と表示例

13 3分割したファイルのリンクファイル(左上)と表示例

*掲載されている画像等は実際の製品とは一部異なる場合があります。
*本アプリケーションの仕様は測定チャネル数や測定条件などにより制限されることがあります。  
 詳細についてはお問い合わせください。

関連業種

関連製品とソリューション

統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000

IS8000統合計測ソフトウェアプラットフォームは、エンジニアリングワークフローを加速する統合ソリューションソフトウェアです。

Precision Making

トップ