メガソーラー用多系統連系パワーコンディショナ計測

メガソーラー用多系統連系パワーコンディショナ計測

背景

太陽光発電システムでは、パワーコンディショナ(インバータ、PCS、パワコンなどとも呼ぶ)を用いて、発電された直流電力を交流電力に変換します。この変換効率(変換ロス)は市場競争力の重要な指標の1つです。メガソーラーなどの大容量太陽光発電システムでは、数百kW~数MWクラスの入出力を複数同時に取り扱うことが基本となります。複数系統を連系する際、大容量のパワーコンディショナに複数の入出力を搭載する方法と、小容量のパワーコンディショナを並列に配置して連系する方法があります。いずれの場合でも、入出力の効率測定を高精度に行うことが重要です。
さらに、太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電システムは天候の影響を受けやすく、発電容量の急増による電力系統の不安定化や、系統への落雷による電力品質悪化などを想定する必要があります。
そのため、これらの効率評価では電力計測はもちろんのこと、電圧変動、周波数変動、温度上昇などのさまざまな試験を行うため、波形測定器を用いた瞬時変動波形の観測や温度の時間変化トレンド測定などが行われています。

課題

天候急変などの状況下においても、有効電力、無効電力、電圧値、周波数、力率、効率などの変動を電力測定器で正確に捉えたいという要望があり、多系統連系されたパワーコンディショナの測定時には高い信頼性と多くのチャネル数が求められます。
また、系統を長時間連続監視しつつ瞬時的な変動を捉えるためには波形測定器も必要です。こちらも同様に多くのチャネル数が求められますが、それに加えて高速サンプリングによる波形測定、データ量の最小化なども課題となります。たとえば、データ量に関しては高速に変動する電圧と、変動が比較的遅い温度を同時に計測する場合、一般的な測定器では高速な信号に合わせて早いサンプルレートで測定する必要があります。また、波形測定器の電力測定結果ではデータの信頼性が不足することがあるため、信頼性の高い電力測定を使うとともに、同期した波形測定器によるデータ解析を行いたいという要望もあります。

WT5000、DL950による課題解決

  • 信頼性の高い高確度な電力データの活用
  • 多チャネルかつ結線自由度の高い電力測定
  • 多種多様な物理量と過渡的な電力の同時測定
  • マルチサンプルレートによるデータ量の抑制
  • IS8000との組合せによる5台同期モニタリング

WT5000、DL950による提案

信頼性の高い高確度な電力データの活用

WT5000は電力基本確度±0.03%を誇る、世界最高クラスの高精度電力測定器です。また、WT5000を含む横河の電力計は国家標準につながる計測標準を高い精度で確立・維持しており、電力計データの電圧、電流、有効電力などにおいて信頼性の高い測定を保証しています。さて、近年では過渡的な現象との同時性を確保するため、波形測定器にも電力演算機能を搭載する機器が増えています。これらは大変便利ですが、国家標準につながった電力値の確度保証については注意する必要があります。波形測定器は電圧プローブや電流プローブを使って、高帯域・高サンプルレートにより測定信号の形状を、より正確に捉えることが主な目的となっています。したがって、波形測定器を使って電力演算した結果は電力計で測定したデータとは異なり、確度保証がなく信頼性については慎重に検証する必要があります。
参考: 高精度電力計WT5000の性能を支える校正技術について
「高精度電力計を支える横河電機の電力校正技術」

多チャネルかつ自由度の高い電力測定系構築

WT5000は最大7チャネルの入力により、多チャネル測定が必要なメガソーラー用パワーコンディショナ測定にご活用いただけます。7チャネル入力の結線は柔軟に対応可能で、直流7相の測定はもちろん、交流三相を2系統と直流信号の組合せのように自由に構成することが可能です。また、WT5000の入力エレメントはモジュラー構造のためエレメントの増設や差し替えにより、最大電流入力の変更を容易に行うことも可能です。たとえば、本体購入時には三相1系統の測定のみを行うために3つのエレメントを使用し、単相を測定したくなった場合でも、エレメントを1つ購入するだけで増設が完了します。入力エレメントは電流の入力方法に応じて、5 A、30 A、電流センサー専用と3種類ラインアップしており、各エレメントの組合せ変更においても改造期間を要さず、自由度の高い運用が可能です。

図1 WT5000エレメント変更時のイメージ

図1 WT5000エレメント変更時のイメージ

多種多様な物理量と過渡的な電力の同時測定

DL950はWT5000同様モジュラー構造の波形測定器で、多種多様なモジュールから最大8枚のモジュールを選択して使用することが可能です。温度/高精度電圧モジュール 701265や、16 CH 温度/ 電圧入力モジュール 720221による温度測定、周波数モジュール 720281による周波数測定など、DL950 1台で多くの物理量を電圧波形と同時に測定することができます。さらに、DL950は電力演算オプション(/G05)により過渡的な電力データの解析を行うことができます。これも後述するIS8000と組合わせることで、正確な値をWT5000で測定しつつ、過渡的な応答を同時に波形でモニターすることが可能となります。

図2 多種多様なスコープコーダ用モジュール

図2 多種多様なスコープコーダ用モジュール

図3 DL950(/G05)による電力解析画面例

図3 DL950(/G05)による電力解析画面例

マルチサンプルレートによるデータ量の抑制

多チャネルの波形測定を行うにあたって、サンプルレートは最も速い信号を見落とすことがないように設定する必要があります。しかし、たとえば温度のデータは電圧に比べると変動が遅いため、長時間の測定に対して不要なデータが積み重なってしまいます。DL950のマルチサンプルレートは、このような問題を解決します。図のように、本来であれば最速のサンプルレートに合わせて補完されるはずのデータを削減し、最適化されたデータサイズでの運用が可能となります。また、この機能はバイナリ保存だけでなくアスキー保存でも有効になっています。CSVのデータ上では、実サンプルデータ以外をスペースとすることでデータ量を抑制しています。

図4 マルチサンプルレートによるデータ抑制イメージ

図4 マルチサンプルレートによるデータ抑制イメージ

IS8000との組合せによる5台同期モニタリング

ここまで述べた通り、WT5000とDL950はいずれも多系統に連系されたパワーコンディショナ測定に対して強力なツールとなります。ここで、統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000を活用した、計測データの統合をご紹介します。
IS8000は、DL950とWT5000を同時に接続*1することで同期測定を簡単に実現します。この同期はIEEE1588 規格*2に則った高精度なものであり、DL950とWT5000の同期誤差は約10 μs*3で実現されます。これにより、高精度な電力測定結果と過渡的な電力変化ならびに電圧・電流波形を同じ時間軸で解析することが可能です。
*1: 2 台以上の同期計測は、IS8000 計測器複数台同期オプション(/SY1)、DL950 IEEE1588マスター機能(時刻同期)(/C40オプション)が必要です。
*2: ネットワーク上でつながる機器間の時刻同期に使用される高精度時間プロトコ
ル(PTP)です。PTP = Precision Time Protocol
*3:DL950 2 台のIEEE1588同期の誤差は±150 nsです。

図5 複数台測定における接続例

図5 複数台測定における接続例*

* 複数台における高精度な時刻同期はPTP/IEEE1588 グランドマスターが必要になります。

関連業種

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200MS/s高速サンプルレート、最大8Gポイントメモリー、複数台同期で最大160CHが可能で、お客様の様々なニーズにお応えします。

プレシジョンパワーアナライザ WT5000

持続可能な社会の実現に向けて、COP21におけるパリ協定の採択、既存エンジン車の販売停止計画発表など、グローバルで太陽光/風力発電に代表される再生可能エネルギーへのシフトと、EVやPHVおよびそのインフラ網の開発が加速しています。それらの更なる省電力化と高効率化を支援するために、従来機種の性能と機能を格段に向上させた高精度電力計です。

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