脱炭素社会の実現に向けて、家電製品の高効率化・省エネルギー化が重要視されています。省エネルギー化の実現には、稼働時の省電力化だけでなく、電源OFFの停止時や低消費電力稼働時の消費電力低減も重要なポイントです。
また、エアコンの室外機のように直射日光や風雨にさらされる環境を想定する必要がある製品においては、信頼性試験も重要になります。信頼性を評価するための試験には、長期間にわたる安定性試験や、短期間で長期間の劣化や故障を再現する加速試験などさまざまな種類があります。これらの試験では、温度や可動部の振動、ひずみなどの物理量と電圧・電流を同時に測定する必要があります。
稼働時と電源OFFの停止時や低消費電力稼働時を比較すると、電流の振幅差が大きく、適切な電流測定用のセンサーやプローブを用意する必要があります。さらに、稼働条件の変化による過渡的な応答を評価する場合は、最大電流の条件に合わせた選定が求められ、ダイナミックレンジの広いセンサー・プローブが必要となります。一般的に、過渡的な応答を測定する際にはオシロスコープなどの波形測定器を使いますが、電流プローブは環境条件によってオフセットの変動が発生しやすいため、環境変動が起きる室外での長時間測定では誤差が大きくなる可能性があります。
一方、高性能なパワーアナライザで使われている高精度シャン ト、あるいは組み合わせて使用される高精度電流センサーは、 温度による影響は非常に小さくオフセット変動が抑えられているため、これらの問題を解決することが可能です。また、待機時から稼働時までの測定が必要となるため、ダイナミックレンジが広く直線性に優れた電流センサーが求められます。また、複数台の測定器を使って温度や振動(加速度)と電圧・電流の測定を行う場合、測定後の同期となるため、1つの測定器でさまざまな物理量を同期測定でき、リアルタイムで監視できる計測システムの構築が望まれます。
CT1000S
DL950
AC/DCスプリットコア電流センサーCT1000Sは、優れた耐ノイズ性により、厳しいノイズ環境下でも高精度測定が可能です。
そのため、数A程度の微小電流の波形測定用途でも使用することができます(図1)。
CT1000Sでは高い安定性を誇るフラックスゲートセンサーを採用していますが、フィードバック回路や測定器本体と組み合せた際のノイズ経路を最適化することで、出力ノイズの低減を実現しています。これにより、数A程度の微小電流から1000 Aの大電流の波形測定が可能です。
たとえば、CT1000SとDL950などの波形測定器を組み合わせることで、待機時から稼働時までの過渡的な電流変動の評価を、1つのセンサーで行うことができます。
図1 CT1000Sの出力ノイズ(代表値)
主に電流波形測定に用いられる電流プローブは、ホールセンサーを採用しています。ホールセンサーは原理的に出力ノイズが小さいため、数十mA程度の微小電流も測定可能です。
しかし、センサーの構造上、温度変化によるオフセットへの影響が懸念されます。そのため、室外で長時間測定を行う場合、CT1000Sでは安定した測定データの取得が期待できます。
図2 採用センサーごとの比較
DL950は多彩なモジュールから8枚のモジュールを選定し、温度や加速度、ひずみなどの物理量と電圧・電流の信号を1台で測定することができます。また、メモリー拡張8 Gポイント(/M2オプション)や内蔵ストレージ(512 GB)(/ST1オプション)を用いることで、最長50日の長時間記録も可能です。
CT1000Sのオフセット変動が少ない特性と、DL950の多チャネル測定を用いることで信頼性試験などの長時間測定を行うことが可能です。
図3 エアコン室外機の屋外環境試験イメージ
DL950は、DL850E/EVの機能・仕様を大幅に改善し、タッチパネルによる直観的操作を可能した新時代のスコープコーダです。
200MS/s高速サンプルレート、最大8Gポイントメモリー、複数台同期で最大160CHが可能で、お客様の様々なニーズにお応えします。