回転センサーを用いたEVモーターの回転角度測定

回転センサーを用いたEVモーターの回転角度測定

背景

回転センサーは物体の回転速度や角度を測定するためのセンサーで、さまざまな産業におけるアプリケーションで使用されています。自動車向け用途では車輪の回転速度や角度を測定したり、EV駆動用モーターの回転制御状況を評価するために使用されています。さらにステアリング操作と組み合わせて車両の安定性を向上させるためのシステムにも利用されます。その他、航空機や船舶、鉄道車両などの輸送機器のモーター制御にも使用されています。
また、工業分野ではタービンやコンベヤベルトなどの回転機器の監視や制御において必要です。回転センサーはこれらの回転部分の動きを監視し、制御システムにフィードバックすることで安定した操業が出来ています。
その他にも、手術用ロボットの動作制御などの医療分野、および洗濯機や冷蔵庫といった家電製品などにも使われております。このように回転センサーは広範な産業や用途で利用されており、さまざまな技術の発展に貢献しています。

課題

回転角度センサーはエンコーダやレゾルバ、ホールセンサーなどの種類があります。コストや性能、製品のサイズや動作環境によって採用されるセンサーが異なります。回転センサーは直接角度として出力されないため、角度変換にはカウンタやコンバータなどの変換器を用いたり、測定した信号から計算する必要があります。
また、モーターなどの回転部品を使用した製品の制御や動作を評価する場合、回転角度とともに制御信号や、他の物理量を同時に測定して検証することがあります。その場合、各センサーごとに測定器を用意したり、異なる測定器で測定したデータを解析するには多くの時間を費やしてしまい効率的な評価ができません。また、回転センサー信号を回転角度にするために変換器を使用する場合、他の信号に対して遅延時間が発生し正確な検証ができないこともあります。

DL950による課題解決

  • エンコーダの回転角度演算
  • ホールセンサーの回転角度演算
  • レゾルバの回転角度演算
  • さまざまな信号との同期測定

DL950による課題解決

DL950による提案

エンコーダの回転角度演算

エンコーダには相対角度を検知するインクリメンタル形と絶対角度を検知するアブソリュート形の2 種類があります。
インクリメンタル形エンコーダはエンコーダによって出力信号数が異なり、1 相タイプ(A 相)、2 相タイプ(A 相、B 相)、3 相タイプ(A相、B相、Z相)があります。DL950はすべてのタイプで回転角度の算出ができます。エンコーダからの出力はすべてパルス波となっています。A 相とB 相はエンコーダごとに1回転あたりのパルス数が決まっており、位相が90°ずれて出力されます。A相とB相の出力パターンから回転方向が判別できます。また、Z相は1回転に1パルス出力されるため、基準位置としての信号になります。DL950では各相の電圧出力された信号を電圧入力モジュールに取り込み、回転角度としてリアルタイムに波形表示できます。
アブソリュート形エンコーダは、複数列のスリットがある円盤が使用されており、各列のON/OFFの出力を合わせて2 進数として表現することで絶対位置がわかるようになっています。アブソリュート形エンコーダの出力信号は主にバイナリコードとグレーコードの形式で表されます。DL950ではどちらも最大16 bitまでのエンコーダに対応しています。エンコーダからパラレル出力された信号をDL950のロジックモジュールに取り込み、回転角度としてリアルタイムに波形表示できます。

図1 エンコーダとDL950の接続図

図1 エンコーダとDL950の接続図

図2 エンコーダの回転角度演算測定例

図2 エンコーダの回転角度演算測定例

ホールセンサーの回転角度演算

ホールセンサーはホール効果と呼ばれる電流磁気効果を利用して磁場の変化を電気信号に変換して出力するセンサーです。
モーターなどの回転によって磁界が変化することで、一般的にはホールセンサーからパルス波として信号が出力されます。
この信号をDL950の電圧入力モジュールに取り込み、回転角度(電気角)としてリアルタイムに波形表示できます。

図3 ホールセンサーの出力信号

図3 ホールセンサーの出力信号

図4 ホールセンサーの回転角度演算測定例

図4 ホールセンサーの回転角度演算測定例

レゾルバの回転角度演算

レゾルバは、励磁信号を入力することにより、回転子の角度に応じて2つの検出用コイルからそれぞれsinθおよびcosθに依存した2つの信号を出力する回転角センサーです。ローターの回転に伴い、ローターの2 相コイルから出力される電圧の位相が変化することを利用して角度を検出します。出力信号(sinθ、cosθ)は、図5のように回転角に応じた包絡線に、励磁信号がキャリアとして重畳された信号として出力されます。通常レゾルバの回転角を算出するためにはレゾルバ/ディジタル(RD)コンバータが必要となります。DL950のレゾルバ演算機能を使用することでレゾルバから出力される励磁信号、sin信号、cos信号から回転角度をリアルタイムに演算して波形表示することができます。さらに軸倍角の設定もできるため、軸倍角を考慮した回転角度の演算ができます。

図5 レゾルバの出力信号

図5 レゾルバの出力信号

図6 レゾルバの回転角度演算測定例

図6 レゾルバの回転角度演算測定例

さまざまな信号との同期測定

モーター・インバータ測定ではモーターの位置の情報だけでなくインバータからの出力電圧や電流、温度、振動などのパラメータを同時に測定することでさまざまな解析や相関関係を確認することができます。
また、本資料にて紹介した回転センサーの角度演算は、リアルタイム演算の機能を使用しています。リアルタイム演算は入力信号を取り込みながら演算することで入力信号と同時に演算結果を表示する機能です。リアルタイム演算は最大16個の演算が可能です。回転角度演算以外にも同時に他の演算を行うこともできます。

図7 エンコーダの回転角度演算とさまざまな信号の測定例

図7 エンコーダの回転角度演算とさまざまな信号の測定例

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