
再生可能エネルギー設備やデータセンター、電動化機器の増加に伴い、商用電源に接続される各種パワーエレクトロニクス機器において、電圧・電流・周波数が瞬時に変動する過渡現象が、これまで以上に発生するようになっています。特に、UPS、インバータ、EV充電器などの容量が大型化したことにより、電源切替時や負荷急変時の挙動は一層複雑化しており、電力品質への影響が懸念されています。
たとえば、データセンターにおいて多数のUPSが一斉に切り替わる場面では、瞬間的な電圧低下や過渡電流が発生し、システム全体の安定動作に影響を及ぼす可能性があります。一方で、最新のパワーエレクトロニクス機器では、変換効率の向上や損失低減が市場競争力を左右する重要な指標となっており、効率評価には電圧変動試験、周波数変動試験、温度上昇試験などの多面的な評価が不可欠です。これらの評価では、電力計による高精度な電力測定に加え、波形測定器を用いた過渡波形の同時計測が求められます。さらに近年では、系統電源側の変動に対しても安定した動作を維持する制御が重視されており、電源喪失・復帰時の瞬時応答や過渡電力の挙動把握、制御信号との相関解析など、より高度なデータ計測が必要となっています。
このように、再生可能エネルギーやディジタルインフラの拡大を背景として、電力系統や電源装置の過渡挙動を多角的に評価するニーズは高まり続けています。瞬時的な電力変動を高確度で長時間記録し、電力値と波形データを統合して解析できる計測環境の重要性は、従来にも増して高まっています。
UPS、インバータ、EV充電器などのパワーエレクトロニクス機器の多くは、外部環境や負荷条件の変化によって動作状態が大きく変動するため、電圧値、周波数、力率、有効電力・無効電力、効率といった各種パラメータの変動を詳細に把握することが求められます。
特に、電源喪失や急激な負荷変動が発生した際には、周期ごとの電力変化や電流の瞬間的なピーク、周波数の追従挙動といった過渡現象を確実に捉えることが重要です。しかし、従来の波形測定器を用いて長時間の監視を行う場合、データ量が膨大となり、異常が発生した箇所を効率よく特定することは容易ではありません。また、電力計による数値データと波形測定器による波形データが別々に取得される場合、「どの瞬間に、どの電力値となっていたのか」を同一の時間軸上で確認できないという課題もありました。
このような背景から、電力値と波形を同時に、かつ長時間にわたって高確度で計測し、過渡現象を逃さず可視化したいという要求が高まっています。電源喪失・復帰、負荷急変、周波数変動などの瞬時現象を周期ごとで捉えながら、異常波形の自動抽出や長時間監視を同時に実現できる計測ソリューションが求められています。

高速・高精度の電圧測定から温度、加速度、ひずみ、周波数、ロジック、およびCAN/CAN FD/LIN/SENT 車載シリアル通信データの計測など、多彩なプラグインモジュールをご用意しています。DL950本体の8つのスロットに装着し、お客様の測定ニーズにあわせて柔軟に構成を組むことができます。
また、メインユニット1 台に対し、最大4台のサブユニットを光ファイバーコードで接続すると、最大160チャネルまで拡張が可能です。測定スタート/ストップ、トリガタイミング、サンプルクロックを同期できます。

図1 スコープコーダ DL950

図2 多彩なプラグインモジュール
耐久試験などでは長時間のトレンドを把握するために、低速サンプリングによりデータ収集を行います。しかし、突発的に発生する高速な過渡現象は、高速サンプリングで測定する必要があります。デュアルキャプチャ機能は、2つの独立したサンプリングを同時に実行することが可能です。
本機能はアプリケーションメニューに登録されており、簡単に設定、実行できます。

図3 デュアルキャプチャ機能による波形取得のイメージ
リアルタイム演算(/G03オプション)では、取り込んだ信号にさまざまな演算を施し、結果をリアルタイムにトレンド表示します。演算結果に対してトリガをかけたり、波形パラメータの自動測定やカーソル測定をすることも可能です。また入力信号および演算結果へのフィルター処理が可能です。さらにリアルタイム演算は、入力チャネルとは独立しているので、入力32チャネル + 16チャネルのリアルタイム演算結果を同時に表示・解析できます。
電力演算(/G05オプション)では、リアルタイムに1周期ごとの実効値、有効電力、積算電力、高調波など最大118種類の電力パラメータを演算し、測定する電圧、電流信号と、演算した電力パラメータのトレンド波形を、同時にリアルタイム表示します。電力パラメータのトレンド波形でトリガをかけることも可能です。
※電力演算オプションには、リアルタイム演算オプションが含まれています。

図4 単相電圧・電流波形と電⼒パラメータ演算の例
電力計測1MS/s 16ビット絶縁モジュール 720301は、DL950、SL2000、DL350で使用可能な電力計測モジュー ルです。AIデータセンター、UPS、産業ロボット、EV、再生可能エネルギー用電源などの普及に伴い、開発段階から電圧・電流波形と電力を同時に評価したいニーズが高まっています。本モジュールは、こうした要求に対応することを目的として開発されました。
1MS/sの高速サンプリングと16 bitの高分解能、ならびに300 kHzの周波数帯域により、DCからACの電圧・電流を高 確度で測定することが可能です。自動車(オンボードチャージャ、インバータ)、UPS/APF、産業機器、空調・家電など、幅広いアプリケーションに適用できます。

図5 電力計測モジュールの対応表
720301による確度保証付き電力測定を行うには、電力演算(/G05オプション)またはモーターdq解析(/MT1オプション)が必要です。DL950、SL2000では、専用の電力解析アプリケーションメニューが追加され、チャネル設定、結線方式、センサー設定、フィルター設定などを1つの画面でまとめて行うことができます。また、複数台を同期させることで、UPSや多系統インバータなど、入力および出力が複数存在する機器に対しても同時に電力解析を行うことが可能です。DL950またはSL2000では、本体1台あたり2系統まで、確度保証付きの電力測定に対応しています。3系統以上の同時測定が必要な際には、本体を2台以上接続することで対応可能です。

図6 専用のアプリケーションメニュー
電力計測モジュールを用いた電力測定では、電流センサー固有の位相遅延が電力値に影響を及ぼす場合があります。そのため、DL950、SL2000では新たに電流センサー位相遅延補正機能を搭載し、高周波領域における電力解析精度を大幅に向上させます。さらに、500 Hz以上の高周波領域では複数周期分のデータを区間演算に使用する高周波安定化機能を追加することで、周期検出誤差による電力値のばらつきを抑えて定常状態における電力評価の信頼性を一層高めることが可能です。

図7 高周波安定化機能による計測値のばらつきの減少
電力計測モジュールを用いることで、UPSが商用電源の喪失から復帰に至るまでの過渡電力を1台で測定することが可能です。周期ごとの計測により、電圧・電流・電力・周波数の急峻な変化を詳細に可視化し、UPSの切替応答や保護動作の最適化に役立ちます。
さらに、多チャネル同期測定により、入力系統、出力系統、制御信号を同時に解析することができ、データセンターや非常用電源の信頼性評価を効率的に行えます。

図8 UPSの過渡電力の測定事例
電力計は高い測定確度を有する一方で、同時に取得できる信号種類やチャネル数に制約があります。オシロスコープの電力演算機能は柔軟な波形解析が可能ですが、確度保証や長時間計測の点では用途が限定されます。DL950に電力計測モジュールを組み合わせることで、確度保証付きの電力測定と、多チャネル波形・制御信号の同時計測を両立でき、開発・検証・評価業務を効率化できます。

DL950は、DL850E/EVの機能・仕様を大幅に改善し、タッチパネルによる直観的操作を可能した新時代のスコープコーダです。
200 MS/s高速サンプルレート、最大8Gポイントメモリー、複数台同期で最大160CHが可能で、お客様の様々なニーズにお応えします。