家電・エアコン用モーターの回転軸負荷影響時における統合計測評価

家電・エアコン用モーターの回転軸負荷影響時における統合計測評価

背景

エアコンをはじめとする家電には多数のモーターが搭載されており、製品の高機能化に伴いモーターの高性能化も進んでいます。特にモーターの回転軸に関わる性能と信頼性の向上は、品質保証において重要な要素です。
昨今ではモーターの軸受における摩擦を低減するため、変位センサーと電磁石を活用した磁気軸受*を採用することが増えています。特に長い回転軸を制御する場合、三次元的な位置情報を監視・制御するために複数の変位センサーと電磁石が必要です。
このような場合、モーターへの過負荷による脱調のリスクを考慮する必要があります。たとえば、エアコンの室外機に使用されるファンモーターは、風雨にさらされる環境下にあり、強風の影響を受けてモーターの脱調が発生する可能性があります。またミシンでは、布の厚さや縫い方、針や糸の太さ、布の送り速度など、さまざまな要因に対して、可動部モーターが脱調しないように設計する必要があります。
* 本資料では能動型磁気軸受を磁気軸受と呼称します。

 

課題

磁気軸受は、変位センサーの信号と電磁石に流れる電流の同期測定が必要です。そのため波形測定器は、最低でも6チャネル以上の入力が必要になります。また、複数のモーターを同期評価するためにはさらに多くのチャネル入力が必要になります。
また、信頼性評価や異常発生時のスムーズなデバッグを行うためには、電磁石に使用しているコイルの温度や、モーター本体の振動(加速度)と同時に変位センサーや電磁石の電気信号を同期させて測定することが求められます。
モーター回転軸への外的負荷の影響を評価するためには、高速度カメラが有効です。波形測定器と高速度カメラを同期計測することで、外的影響や稼働条件に対するモーターの過渡的な回転変化を観察することができます。
また、磁気軸受の評価同様に、スムーズなデバッグを実現するためには、高速度カメラの映像とモーターの電圧・電流、レゾルバなどの位置センサー信号やトルクセンサーの信号を同期させることが、課題解決に向けた重要な要素となります。

 

DL950、IS8000による課題解決

DL950

  • 多チャネルアナログ入力による変位センサー出力の同期測定
  • 多彩なプラグインモジュールによる多点測定や異なる物理量の同時測定
  • 複数台同期による複数モーターの同期測定

IS8000

  • 異なる機種間の同期計測
  • 高速度カメラとの同期によるモーター脱調の評価

 

4. DL950による提案

4.1 多チャネルアナログ入力による変位センサー出力の同期測定

図1は磁気軸受の断面イメージ図です。磁気軸受は回転軸を一定位置に保つため、変位センサーの信号をもとに電磁石の磁力を制御します。そのため磁気軸受モーターの測定では、変位センサーの信号と電磁石の電流を同時に測定する必要があります。
DL950は最大32チャネルを同時に測定可能なため、1 台で変位センサーと電磁石の信号を同期測定できます。また図2のように長い回転軸を持つモーターでは、軸方向に複数の変位センサーや電磁石を配置する場合があります。このような場合でも、DL950を使用すると、1 台で十分な測定環境を構築できます。

図1 磁気軸受の断面イメージ

図1 磁気軸受の断面イメージ

図2 長い回転軸を持つモーターの磁気軸受測定イメージ

図2 長い回転軸を持つモーターの磁気軸受測定イメージ

 

4.2 多彩なプラグインモジュールによる多点測定や異なる物理量の同時測定

DL950には多彩なプラグインモジュールがあり、多点測定やさまざまな物理量の同時測定ができます。たとえば、4 CH10 MS/sモジュール(形名:720256)を8台装着することで、最大32チャネルの多点測定が可能です。
さらに、16 CH 温度/電圧入力モジュール(形名:720221)や加速度/ 電圧モジュール(形名:701275)を使用することで、電圧アナログ入力と温度や振動(加速度)を同期して測定することができます。さらにモジュール構成を変更するだけで、複数の変位センサーに加えて、電磁石のコイル温度やモーター全体の振動の同期測定を容易に実現します。

図3 DL950のプラグインモジュール

図3 DL950のプラグインモジュール

図4 4 CH 10 MS/sモジュール(形名:720256)を8 台装着したDL950

図4 4CH 10MS/sモジュール(形名:720256)を8台装着したDL950

 

4.3 複数台同期(/C50オプション)による複数モーターの同期測定

DL950はメインユニット1 台に対し、最大4台のサブユニットを光ファイバーコードで接続*することで、最大160チャネルまで拡張が可能です。測定スタート/ストップ、トリガタイミング、サンプルクロックを同期でき、複数モーターを用いた複雑な制御系信号測定にも対応します。
* 光トランシーバモジュール720941と光ファイバーコード720942を使用

図5 光ファイバーコードによる接続イメージ

図5 光ファイバーコードによる接続イメージ

 

5. IS8000による提案

5.1 IS8000による異なる機種間の同期計測

統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000は、DL950をはじめ弊社電力計や他社製高速度カメラなどと同期計測が可能なソフトウェアです。複数の測定器のタイミング、制御、データ収集を1つのソフトウェアで統合し、高い信頼性、効率性、統一性を実現する包括的な測定結果を得ることができます。
高速度カメラとの同期は、DL950からのトリガ出力信号を高速度カメラに入力し、両機器をイーサネットハブを介してPCへ接続することで実現できます(図6)。

図6 高速度カメラとのオンライン接続

図6 高速度カメラとのオンライン接続

 

5.2 高速度カメラとの同期によるモーター脱調の評価

モーターの過負荷や急加減速による脱調の検証は、トルクセンサーやロータリエンコーダ、レゾルバの信号の測定と同時に、負荷側での異常発生をカメラで監視することにより、スムーズなデバッグが可能になります。
IS8000とDL950、株式会社フォトロン製高速度カメラFASTCAMシリーズを使うことにより、エアコン室外機のファン稼働状況をカメラで監視し、トルクセンサーなどのセンサー出力を同時に測定可能です。異常発生時のデバッグに加え、脱調に至るまでの過渡特性を記録することで、予兆検知に向けた効果的なシステム構築を検討できます。

図7 IS8000による動画データと波形データとの同期イメージ

図7 IS8000による動画データと波形データとの同期イメージ

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