近年、家電やエアコン、OA機器はますます高機能化が進んでおり、消費者の利便性向上を図る一方で、エネルギー効率の向上と環境負荷の低減が大きな課題となっています。特にエアコンや大型OA機器は電力消費が大きく、各国のエネルギー規制の強化や省エネに対する消費者の期待が高まる中、エネルギー消費量を削減するための技術革新が求められています。
これらの製品は、制御回路、センサー、インバータ、冷却システムなど、複数のコンポーネントが連携して動作し、製品の性能を左右しています。機器全体のエネルギー消費を最適化するためには、各コンポーネントの動作を正確に管理し、システム全体の動作を統合的に把握することが不可欠です。特に、変動する負荷に対応した効率的な電力管理が求められており、これにより製品の省エネ性能を最大限に引き出すことが可能となります。
また、エアコンやOA機器のような機器では、長時間稼働することが多く、異常時の検出や過渡状態の監視が製品の信頼性向上に直結します。これを実現するためには、消費電力や電圧・電流の波形を正確に測定・解析する技術が求められており、波形測定技術はこれらの複雑なシステムの挙動を把握するために重要な役割を果たします。
家電やエアコン、OA機器において、設計や評価段階で直面する課題の1つは、複数のコンポーネントが連携する複雑なシステムの中で、エネルギー効率や信頼性を高めることです。システム全体が安定して動作するためには、各コンポーネントの電圧や電流、温度などのデータを正確に計測と解析を行い、設計時に潜在的な問題を洗い出すことが重要です。
特に、負荷変動や過渡的な状態でのコンポーネント動作の詳細な制御が求められます。これにより、各部品が急激な変動や外部の影響を受けた際の応答を把握し、製品の耐久性や長寿命化を図ることが可能です。また、新たな省エネ基準に適応するため、各コンポーネントの動作を多面的に理解し、システム全体の最適化が必要不可欠です。
これらを実現するためには、従来の測定器では難しかった複数チャネルによる同時測定が必要となります。
図1 インバータの測定ポイント例
2 台のDLM5000HD(/SYオプション付き)または、2台のDLM5000(/SYNオプション付き)を専用接続ケーブル(701982)で接続することにより、最大でアナログ16チャネル、ロジック64 bitの同期測定が可能になります。
専用インタフェースは本体に標準装備のため、後からオプション追加ライセンスで追加も可能です。捕捉波形はそれぞれのユニットで表示されます。
トリガは共通に動作し、レコード長やサンプルレート、アクイジションの設定、横軸スケールの設定など共通項目は連動するので、まるで1台の16チャネルオシロスコープのように使えます。
※ DLM5000とDLM5000HD は、DLMsync 機能での接続はできません。
図2 専用ケーブルによる2台連結
同期した2台の測定器は連携状態になり、いくつかの操作はメインとサブで共有されます。たとえば波形をズームして表示した場合、もう一方も自動で同じ位置をズームして表示することができます。測定データはまとめて出力することができるので、統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000と組み合わせることで16チャネルを一度に確認することができます。
図3 統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000
12 bitの測定器は特にオーバーシュート後のリンギングなどの現象を正確に計測するのには非常に効果的です。波形の全体像を確認しながら、微細な変化を正確にとらえる最適なレンジ設定が可能となります。
8 bitの時
12 bitの時
サンプルレート2.5 GS/sで最⼤0.2秒、50 MS/sで最⼤10秒の波形を捕捉できます(DLM5000)。
サンプルレート2.5 GS/sで最⼤0.4秒、50 MS/sで最⼤20秒の波形を捕捉できます(DLM5000HD)。
※DLM5000では、オプション付加により最大メモリー500 Mポイント
※DLM5000HDでは、オプション付加により最大メモリー1Gポイント
過去に取り込んだ波形を最⼤100,000個、アクイジションメモリーに⾃動で保持します。後から抽出して解析が可能です(DLM5000HDでは、最大200,000個)。
取り込んだ波形は、指定した1波形を画面に表示またはすべての波形を一括表示が可能です。
ヒストリ波形に対しては、カーソル測定、演算などができます。ヒストリ機能により、トリガで捕捉しにくい波形に対しても、さかのぼって波形を確認できます。
ヒストリ機能
また膨大なヒストリ波形から、条件に合う波形を呼び出すために、強力なヒストリサーチ機能があります。
画面上に注目する波形の一部をとらえる四角いゾーンを指定する方法、測定した波形全体を取り囲むようなゾーンを指定する方法、多角形(ポリゴン)のゾーン指定など、直観的で簡単な波形サーチ機能が用意されています。また、電圧やパルス幅の異常値など注目する値が分かっているときは、波形パラメータでのサーチも可能です。
図4 ヒストリサーチ機能
ロングメモリーに取り込んだ多チャネルの波形は、横軸にも縦軸にも拡大して詳細を観測する必要があります。DLMシリーズではズーム専用のキーと拡大縮小のノブがあるので、見たい箇所をすぐにズームアップできます。また、タッチスクリーンを使ってスクリーン上で拡大したい領域を指定することでズームアップも可能です。
時間軸スケールの違う拡大波形を2箇所同時に表示することができます。また、Auto Scroll機能で、ズーム表示位置を自動的にスクロールさせることができます。ある現象の「原因」と「結果」といったように離れた箇所を同時に拡大したり、拡大率を変えて表示できるので、ソフトウェアのデバッグには大変有効です。
図5 2か所同時ズーム
電圧・電流波形から、スイッチング損失[V(t)× (i t)]を演算します。ターンオン/オフの個別損失計算、導通損失を含めた損失、50 Hz/60 Hz周期の⾧周期での損失など、多様な解析手法に対応しています。また、サイクルモードを用いることで、損失を求める積分演算の範囲をスイッチング周期で切り出せるため、より正確な解析が可能です。
図6 スイッチング損失の解析画面
最大4組の電圧、電流波形に対して有効電力/ 皮相電力/無効電力/力率などの電力パラメータを自動測定できます。二電力計法による三相電力のΣ演算や測定結果の統計処理なども可能です。
図7 電力パラメータの測定画面
YOKOGAWAのDLM5000HDは、最先端の4/8チャネル高分解能オシロスコープです。コンパクトな8チャネル、垂直軸分解能12ビットのオシロスコープで、複雑な高速波形を高分解能で観測・解析でき、微細なノイズやリンギングなどの確認が容易に行えます。回路チェックからトラブルシューティング、高度なタイミング解析まで、幅広いアプリケーションをカバーしています。