電源ラインにおける高調波トラブル抑制のための電力校正器の重要性

電源ラインにおける高調波トラブル抑制のための電力校正器の重要性

1. 背景

1.1 高調波について

交流電源の電圧および電流は、きれいな正弦波が理想ですが、現実的にはある量のひずみが生じています。ひずみの無い電源波形は50/60 Hzの「基本波成分」のみで構成されますが、ひずんだ交流波形には、50/60 Hzの整数倍の周波数を持つ「高調波成分」が含まれています。
高調波成分を完全に取り除くことは現実的には困難ですが、そのレベルは十分に低く抑えられている必要があります。電源波形の高調波成分の割合が大きくなってしまうと、接続される各種機器に対し、過熱、誤動作、効率の低下、寿命の短縮といったさまざまな弊害をもたらします。このため、各種法令・規制やガイドラインによって、設備や機器から発する高調波の基準が定められています。
空調機器に搭載されているインバータなどのように、産業用機器や一般消費者向け機器では、エネルギー効率向上のためにパワーエレクトロニクス技術の応用が進んでいますが、これらを背景として電源品質の悪化リスクも増大しており、高調波の抑制、管理がますます重要になっています。

 

1.2 高調波を含む電圧・電流発生のニーズ

機器開発の最終評価では、各高調波成分の含有率や全高調波ひずみ率(Total Harmonic Distortion:THD)などの正確な測定が必要であり、通常は高調波測定機能を備えた電力測定器(パワーアナライザ)を使用します。パワーアナライザの検査や校正は、ひずみの無い電圧・電流信号を発生させ、その周波数をある範囲にわたり変化させながら行うのが一般的な方法ですが、高調波測定機能に特化した検査、校正を行う必要がある場合、所定の正確な量の高調波成分を重畳した電圧もしくは電流を発生し、パワーアナライザの測定結果についての評価を行います。
電源品質の測定に特化した測定器である電源品質アナライザ(Power Quality Analyzer:PQA)でも、その高調波測定機能の検査、校正のためには正確な量の高調波成分を含む校正用電圧、電流発生が必要です。
また、保護継電器などの電力用機器では、高調波の影響による障害を防止する対策が求められるため、開発、評価の際には、所望の量の高調波成分を正確に重畳した電圧、電流の発生が必要です。

 

2. 課題

評価や校正用の電圧、電流高調波発生は、ハイエンドの電力校正器や、一部の専用試験器などに備わっている機能ですが、それらは一般に少数のエキスパート向け製品として設計されている場合が多いことから操作系が複雑であったり、製品価格ならびに定期校正などのメンテナンス費用が一般に高額で、筐体が大型となるため取り回しが悪いといったさまざまな課題があり、必要な際に素早く信号を発生したいというニーズに対応できませんでした。

 

3. LS3300によるご提案

横河計測の交流電力校正器LS3300を使用することにより、簡単な操作で正確な高調波発生を行うことができます。
LS3300は、単独で単一周波数の電圧・電流発生が可能ですが、2 台のLS3300を同期させ*1、それぞれ基本波、高調波 を発生、これらを外部で直列もしくは並列接続して電圧もしくは電流の重畳が可能です。
このように、LS3300を組み合わせることで、高調波を含む電圧もしくは電流の発生を簡単操作で素早く実現することが可能です。

図2 LS3300 × 2 台による高調波の発生(電流を重畳する例)

図2 LS3300 × 2 台による高調波の発生(電流を重畳する例)

LS3300の周波数範囲は40 Hz~1.2 kHzですが、基本波60 Hzの50 次高調波に相当する3 kHzまでの発生が可能な特注モデル*2もご用意しています。
また、専用通信コマンドを使用したPCからのリモート制御により、1台のLS3300で高調波を含む電圧、電流の発生が可能な特注モデル*2もご用意しています。*3
*1 同期用信号として、横河計測:FG420もしくはエヌエフ回路設計ブロック:WF1982を推奨。いずれも2台を使用(合計4チャネルの出力)。
*2 特注モデルの製品仕様、価格などの詳細についてはお問い合わせください。
*3 測定器の校正以外の用途で電圧・電流を発生する場合、2 台を使う方法ではなく、本特注モデル1 台での発生の方が、より安定した動作となる場合があります。

 

LS3300について

図3 交流電力校正器 LS3300

図3 交流電力校正器 LS3300

LS3300は横河計測が歴代の標準発生器製品を通じて蓄積、向上してきた技術に基づき開発された交流電力校正器の最新モデルです。電力基本確度0.15%クラスの電力計を照合用電力計無しに校正することができ、シンプルな操作画面とインテリジェントな連結機能により、単相から三相まで、簡単操作で幅広い用途にお使いいただけます。必要機能に絞り込みつつ基本性能を磨くことにより、高精度で高安定な校正器でありながら、お求めやすい価格、直観的な操作性、持ち運びが可能なコンパクトサイズを実現しており、電力計などの校正作業を効率化するためのさまざまな機能を盛り込んでいます。
また、専用の電力計校正ソフトウェアにより、電力計*4の自動校正が可能です。きわめて短時間で高品質な校正作業を行うことができます。*5
*4 横河計測:WT300E、WT300、WT200シリーズ、WT100シリーズ
*5 直流を校正する場合には、プレシジョンDCキャリブレータ2560Aを併せて使用。

図4 電力計校正ソフトウェア

図4 電力計校正ソフトウェア

関連業種

関連製品とソリューション

交流電力校正器 LS3300

交流電力校正器 LS3300は、高確度・高安定・広出力の交流電力校正器です。
LCDを採用し出力値や設定条件の視認性を向上させるなど校正作業の効率を上げる工夫を施しました。

Precision Making

トップ