化石燃料の枯渇や環境問題を背景に、再生可能エネルギーへの移行や省エネルギー化の推進が求められています。国内では、1997年に開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)を受け、翌年に省エネ法が大幅に改正され、トップランナープログラムが制定されました。他国では、北米のエネルギースター制度や欧州のエコデザイン(ErP)指令など、同様の施策が制定されています。これらは、省エネルギー製品の開発とその普及を目指しており、すでに20年以上継続されています。一方、家電製品の開発現場では、省エネ設計はもちろん重要な項目ですが、最新のAIを利用した機能を搭載して使い勝手を高めた商品や、共働きを念頭に時短をキーワードにした商品の開発も進められています。特にエアコン、冷蔵庫、洗濯機など、従来「白物家電」と言われていた商品においては、購入から10年以上使用されるケースも多く、耐久性の高さも大きなポイントとなっています。
内部にモーターやコンプレッサを搭載する家電製品としては、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などがあります。特に冷蔵庫は電源を入れてから買い替えるまで、ほぼ電源を切ることはありません。約10年間を見据えた耐久性を確保するためには、特にコンプレッサの始動時(インバータによるドライブ開始時)の突入電流や振動など、耐久性に直結する項目の評価が重要となります。この評価では、突入電流などの最大値の測定はもちろん、回転周期ごとの変化を確認することで、より詳細に設計へフィードバックすることが可能となるため、これらを正確に測定する測定器が重要となります。
また、回転周期ごとの測定を行うには、一般的にはエンコーダ出力のA 相、B 相、Z相の信号のうち、Z相信号を基準に回転速度を測定し自動的に演算する機能が測定器に搭載されていることが必要です。
図1 EXT CLOCK 端子へのZ 相信号の入力
データ更新レートをAutoに設定し、更新周期を10 msに設定します。エンコーダからのZ相信号出力をモーター評価機能のD 端子ないしはH端子から分岐してEXT Clockに入力します。そのZ 相パルスを同期ソースとして各入力エレメントに設定します。ただし、次のような制約事項があるので注意が必要です。
上記の注意点に従ってWT5000で実測したデータをストアし、表計算ソフトでグラフにして動作を確認しました。
図2を参照してください。
回転速度のタイミングに従って他のパラメータがアップデートされていることが分かります。ただし、モーター評価機能による測定パラメータ(回転速度、トルク、メカニカルパワーなど)はインバータ出力の電圧波形を周期検出信号として設定しています。そのため、モーター回転周期の2 倍の速さでアップデートされています。
図2 WT5000を用いた回転周期ごとの測定データ
WT1800Rの場合には、データ更新レートの最速が50 msであることから、WT5000と同様の設定であっても、その5倍長い周期にてデータがアップデートされるため、時間軸上での分解能が多少落ちます。また、データ更新レートを固定とした場合、測定可能な最低周波数が45 Hz以上になります。AUTOの設定で、かつ入力周波数が高い場合には、数周期分の平均値となります。その測定結果を図3で示します。
図3 WT1800Rを用いた回転周期ごとの測定データ
WT1800Rプレシジョンパワーアナライザは、最先端の研究開発で求められる高い性能と豊富な機能、拡張性を兼ね備えたモデルです。EV/PHV/FCVなど自動車の電動化や再生可能エネルギー向けパワーコンディショナなどの技術開発や各種規格試験など、パワーエレクトロニクスに関わる幅広いアプリケーションにお使いいただけます。