背景
環境保全の観点から普及が進む輸送車両の電動化(EVなど)の評価においては、駆動用に使われているモーターの回転周期ごとの電圧、電流、電力、力率、周波数などの測定値が必要となる場合が多いです。これは従来のエンジンの特性評価においても同様で、停止状態から徐々に速度を増していく回転体の性能を評価する際に、回転周期ごとのデータを統計的に処理することが重要と考えられるためです。
課題
多くの電気測定器は一定時間ごとあるいは入力される特定の信号の周期に合わせて測定値を演算するのが一般的です。そのため、必ずしも回転周期に追従しているとは言えません。
特にモーターの場合にはその構造から極が存在しており、回転の周期に対して駆動する信号の周波数とは逓倍の関係になっていることから、通常の測定では回転周期ごとの測定にはなりません。そのため、電気測定器では、センサーなどを用いて回転体の周期の信号を得る必要があります。
一般的にはエンコーダ出力のA 相、B 相、Z 相の信号のうち、Z相信号で回転速度を測定&演算します。他にもホールセンサーやレゾルバ、さらにはコンプレッサのように軸にセンサーを取り付けられない機器もあることから、他の手法を用いる必要があります。
課題解決
WT5000
エンコーダZ相信号による回転周期測定
WT1800E
エンコーダZ相信号による回転周期測定
図1 EXT CLOCK 端子へのZ 相信号の入力
各モデルによる提案
WT5000
エンコーダZ相信号による回転周期測定
データ更新レートをAutoに設定し、更新周期を10 msに設定します。エンコーダからのZ相信号出力をモーター評価機能のD 端子ないしはH端子から分岐してEXT Clockに入力します。そのZ 相パルスを同期ソースとして各入力エレメントに設定します。ただし、次のような制約事項があるので注意が必要です。
上記の注意点に従ってWT5000で実測したデータをストアし、表計算ソフトでグラフにして動作を確認しました。
図2を参照してください。
回転速度のタイミングに従って他のパラメータがアップデートされていることが分かります。ただし、モーター評価機能による測定パラメータ(回転速度、トルク、メカニカルパワーなど)はインバータ出力の電圧波形を周期検出信号として設定しています。そのため、モーター回転周期の2 倍の速さでアップデートされています。
図2 WT5000を用いた回転周期ごとの測定データ
WT1800E
エンコーダZ相信号による回転周期測定
WT1800Eの場合には、データ更新レートの最速が50 msであることから、WT5000と同様の設定であっても、その5倍長い周期にてデータがアップデートされるため、時間軸上での分解能が多少落ちます。また、データ更新レートを固定とした場合、測定可能な最低周波数が45 Hz以上になります。AUTOの設定で、かつ入力周波数が高い場合には、数周期分の平均値となります。その測定結果を図3で示します。
図3 WT1800Eを用いた回転周期ごとの測定データ
持続可能な社会の実現に向けて、COP21におけるパリ協定の採択、既存エンジン車の販売停止計画発表など、グローバルで太陽光/風力発電に代表される再生可能エネルギーへのシフトと、EVやPHVおよびそのインフラ網の開発が加速しています。それらの更なる省電力化と高効率化を支援するために、従来機種の性能と機能を格段に向上させた高精度電力計です。
WT1800Eプレシジョンパワーアナライザは、最先端の研究開発で求められる高い性能と豊富な機能、拡張性を兼ね備えたモデルです。 EV/PHV/FCVなど自動車の電動化や再生可能エネルギー向けパワーコンディショナなどの技術開発や各種規格試験など、 パワーエレクトロニクスに関わる幅広いアプリケーションにお使いいただけます。
WT1800Rプレシジョンパワーアナライザは、最先端の研究開発で求められる高い性能と豊富な機能、拡張性を兼ね備えたモデルです。EV/PHV/FCVなど自動車の電動化や再生可能エネルギー向けパワーコンディショナなどの技術開発や各種規格試験など、パワーエレクトロニクスに関わる幅広いアプリケーションにお使いいただけます。