モビリティ駆動システムの電力評価を支える計測環境   芝浦工業大学 相曽准教授 × WT5000 / DL950 導入事例

■ お客様の課題

  • 多数の高速回転モーターの同時制御・評価
  • 各モーターの電力・効率の高精度把握
  • 脱調などの過渡現象の波形観測

 

■ 導入効果

  • 多モーター電力の同期・高精度測定を実現
  • 効率評価と波形解析の両立を実現
  • 学生主体で測定できる研究・教育環境を実現

 

概要

芝浦工業大学の相曽准教授の研究室では、高速回転モーターと磁気ギアを組み合わせたモビリティ駆動システムの研究を進めています。
この研究では、小型モーターを多数用いて高速回転させ、その動力を磁気ギアで統合する新しい駆動システムの実現を目指しています。
しかし、多数のモーターを同時に制御・評価する研究では、各モーターの電力を高精度に測定することが不可欠です。そこで同研究室では、プレシジョンパワーアナライザ WT5000スコープコーダ DL950 を導入しました。
本記事では、モビリティ駆動システムの研究における測定課題と、WT5000・DL950が研究と教育現場にもたらした効果について紹介します。

准教授 相曽 浩平様

学校法人 芝浦工業大学
工学部 電気電子工学課程 電気・ロボット工学コース担当
准教授 相曽 浩平様


研究・開発の背景と課題

相曽准教授は、モーター制御、パワーエレクトロニクスを中心に、エネルギー効率向上やシステム全体の最適化をテーマとした研究を進めています。現在特に注力しているのが、モビリティ駆動用の高速回転モーターシステムです。
モーターを高速回転させることで、モーターシステムの小型軽量化と高効率化を実現できます。自動車用途では従来、モーターの最高回転数は1万〜2万rpm(毎分回転数)程度でしたが、近年はさらに高回転化が進み、研究分野では5万rpmを目標とした研究が進められています。
しかし、高速回転化が進むほど、動力伝達や制御の影響が大きくなり、従来以上に複雑な設計が求められます。

相曽准教授 「モーターだけでなく、インバータやギアまで含めたシステム全体としての効率を考えることが重要です。」

従来の機械式ギアでは、物理的な接触による摩耗、振動、騒音などの問題が発生します。そこで研究室では、非接触で動力を伝達する磁気ギアに着目しました。
磁気ギアは永久磁石の磁力を利用して動力を伝達するため、摩耗がなく、振動や騒音を抑えられるという特徴があります。
一方で、高速回転領域では、次のような課題があります。

  • 永久磁石の強度
  • 回転数上昇に伴う損失増加

これらの課題を解決する新しいシステム構成が求められていました。

高速回転モーターシステム

高速回転モーターシステム


対象システムの特長

この課題に対して相曽准教授が取り組んでいるのが、小型モーターを複数台使用する駆動システムです。
手のひらサイズの小型モーターを多数配置し、それぞれを高速回転させて動力を発生させ、その動力を磁気ギアで統合する構造です。
この多モーター構成には、次のようなメリットがあります。

  • 小型モーターは高速回転が容易
  • 強度や遠心力の問題の分散
  • 電圧制約の緩和
  • システム全体の小型軽量化

ただし、この構成では測定の難易度が大きく上がります。

相曽准教授 「小さいモーターをたくさん使うので、すべてのモーターの電力を正確に測定する必要があります。」

さらに高速回転モーターでは電流周波数も高くなり、電流・電圧波形の観測も重要になります。磁気ギアでは負荷が一定値を超えると同期が外れる「脱調現象」が起こるため、制御研究では過渡応答の波形観測も必要です。


計測・評価に求められた要件

この研究では、15台のモーターの電力を同時に測定する必要がありました。三相モーターであるため、測定対象となる電力はさらに増えます。
このような多チャネル電力測定に対応するために導入されたのが、プレシジョンパワーアナライザWT5000です。 本製品は以下の特長を備えています。

  • 多チャネル電力測定
  • 複数台の同期計測
  • 高精度電力測定


これらの特長により、多モーターの電力評価を高精度かつ効率的に行うことが可能です。一方、スコープコーダ DL950 は、高速回転モーターの制御現象や過渡挙動の把握に活用されています。

相曽准教授 「WT5000で電力や効率を評価し、DL950で電流・電圧波形を観測するという役割分担です。」

DL950は多チャネルかつ高速サンプリングで波形を取得できるため、高速回転モーターの過渡応答や制御現象の解析に役立っています。

モーターの電力を計測するWT5000

モーターの電力を計測するWT5000


導入による研究・教育への効果

WT5000の導入により、研究室では電力測定の作業性が大きく向上しました。タッチパネルによって、設定やデータ保存の操作が簡単になり、実験データの取得や管理が効率化されています。
また、ストア機能でデータ取得が簡単になり、停止後にはCSV形式で整理されたデータを取得できます。
研究面での変化だけでなく、教育面でも効果がありました。

相曽准教授 「学生が一人で測定できるようになったことが大きいですね。」

今回、当社による現地説明と操作サポートが行われたことで、学生は機器操作だけでなく、電力測定の考え方や結線方法、モーター評価の基礎まで理解し、自分たちで測定を進められるようになったといいます。さらに、その知識を学生同士で教え合う流れが生まれ、研究室内で測定ノウハウの共有も進みました。


今後の展望

磁気ギアと多モーターを用いたモビリティ駆動システムは、EVなどモビリティ分野での応用が見込まれています。 この技術により、次のような効果が期待されます。

  • 駆動システムの小型軽量化
  • 高効率化
  • 低振動・低騒音
  • メンテナンスフリー

現在は研究段階ですが、産学連携プロジェクトの中で5万rpmを目指す研究が進められており、3〜5年以内の車載検証も視野に入れています。
相曽准教授は、今回の経験を踏まえ、モーター研究者やパワーエレクトロニクス分野の技術者に対してWT5000DL950を勧めたいと語ります。

相曽准教授 「モーターやパワーエレクトロニクスの研究をされている方には、ぜひ使っていただきたいと思います。」


横河計測への期待

最後に相曽准教授は、計測機器の活用を広げるうえで、操作方法や測定ノウハウを学べる継続的な技術サポートにも期待を寄せています。高機能な計測器ほど、研究現場では実機を前にした説明や活用提案が大きな価値を持つためです。

相曽准教授 「使い方を指導していただける機会があるのは、私にとっても学生にとってもとてもありがたいです。」


こうした研究を支えるうえで重要となるのが、計測環境の整備です。

多モーターや高速回転モーターの研究では、高精度な電力測定と高速データ取得が不可欠です。
プレシジョンパワーアナライザ WT5000とスコープコーダ DL950は、研究開発の現場で求められる 電力測定・波形解析ニーズに応える計測ソリューションです。

左から:坂上 高大(横河計測)、相曽 浩平様(芝浦工科大学)、節原 ともみ(横河計測)

左から:坂上 高大(横河計測)、相曽 浩平様(芝浦工科大学)、節原 ともみ(横河計測)

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