電力計の上手な使い方と電力計測の応用

多機能化に伴う応用の拡大

従来の電力計は主に商用周波数(50/60Hz)の電力を測定するための測定器であったが、最近の電力計は確度/周波数応答等の基本性能の向上のほか、豊富な演算機能や解析機能を取り入れることによって、その応用範囲が急速に広がっている。電力計2531(横河電機)を例にとり、最近の電力計の性能・機能がどのような応用に有効かを説明する。

  1. 広い周波数応答

    近年のインバータの普及とその技術革新によってスイッチング周波数が十数kHzと高くなるにつれ、電力計の高帯域化が必要になってきた。また同時にインバータモータの低速駆動が可能になったことにより数Hz以下での低域測定も不可欠なものになってきた。

  2. 入出力間の効率・電力損失演算

    高効率化への技術追求、そして電力損失を小さくするための高周波技術の採用などにより、入力電力と出力電力を1台の電力計で同時に測定し変換効率や電力損失を表示できる機能が必要になってきた。例えば電気自動車等の駆動用インバータの特性評価試験への応用を図1に示す。この例では、単相入力と3相出力とを1台の電力計で同時に測定して、効率および損失を表示できる。この際、次項の各入力毎の独立したレンジ設定や、測定モードの選択の機能を併用することで高精度測定が可能となり、2台の電力計を必要とした従来型に対してユーザへのコストメリットは大きい。

  3. 独立したレンジ設定とスケーリング

    これは前述の応用のように測定の高精度化を可能とする。その他、3つの電圧計と3つの電流計として使用できる大きなメリットがある。図2に示すような単相モータの特性評価試験などに応用できる。

  4. 真の実効値、平均値、直流測定の切り換え

    測定対象に応じた測定モードの切り換えが各入力モジュール毎に設定できることにより、図1に示した評価試験に応用できる。またピーク値測定機能と実効値測定を組み合わせることによってクレストファクタ(波高率)が即座に得られる。

  5. 積算機能の高度化

    ・表示分解能の自動切り換え
    従来の電力計の多くは電圧及び電流レンジの組み合わせで決まる電力レンジにより、電力積算値の分解能が定まるため、短時間での積算では表示値が小さく分解能が不足してしまう。短時間の積算結果を、読み値に対して分解能を落とさずに、正確に測定できる表示の自動分解能切り換え機能が必要になってきた。その表示例を表1に示す。

    ・極性積算
    直流測定モードとの組み合わせでバッテリの充放電特性試験などに応用できる。

  6. 電圧または電流波形の高調波解析

    近年、最も注目されている機能の一つである。これは電源品質や高調波による障害を少なくすることと相まって、法規制等による対応が必要不可欠となったことによる。この機能により電圧や電流波形のひずみ率や各高調波成分の実効値およびその含有率の算出、また基本波成分の電力測定など様々な解析ができる。

インバータ駆動機器の電力計測

省エネルギーをテーマにインバータの普及はめざましいものがある。この普及を支えているのがパワーデバイスや制御技術の技術革新である。その発展はサイリスタから始まり自己消弧型素子GTOそれにIGBTと変遷し、それに伴って大容量化、低損失化、高周波化が進んで来た。そして、この自己消弧型素子によりPWM制御が容易に応用可能となったことが普及の大きな一因である。これらの発展とともに電力測定器は高精度、広帯域なものが必要になってきた。インバータの概要、そしてインバータ駆動機器の電力測定について以下に述べる。

  1. インバータとは

    インバータとは電力変換器の一つで直流を交流に変換するものである。その交流出力の周波数可変技術が用途を広げている。インバータモータの駆動例を図3に示す。整流器および平滑回路によって交流(商用周波数)を直流に変換するコンバータ部と、この直流を高周波スイッチング素子により交流(周波数可変)に変換するインバータで構成されている。モータの回転数はインバータで発生される交流の周波数を変えることにより制御できる。この可変速駆動技術が急速に普及してきており、今や当然の如く使用されている。

  2. 電力計測と結線

    三相モータで消費する電力を測定する場合の結線を図4に示す。これは2電力計法による測定例である。最近は3電圧3電流計法により測定する場合が多い。これは3相の各相電流と各線間電圧を測定するためであるが、この場合でも総電力は2電力計法と同じ原理で得られる。

  3. インバータの出力波形

    U-V相間の線間電圧波形およびU相の相電流波形を図5に示す。図(a)は出力周波数が10Hzの場合であり、図(b)は50Hzの場合である。また図(c)および図(d)はそれぞれ図(a)と図(b)の電圧波形(負側)の時間軸上での拡大図である。
    この拡大図から判るように、出力周波数が低くなるにつれ、パルス幅が狭くなり電圧値が低くなる。基本波周波数が10Hzの場合と50Hzの場合における測定値例を以下に示す。

      周波数   VMEAN(V) IRMS(A)
        10Hz      38.0      1.85
        50Hz     182.1      2.02
    ここでの電圧測定は整流形平均値計測の実効値校正表示により求め、電流測定は真の実効値計測である。
  4. 計測上の注意点
    1. 電圧測定モードに注意する

      汎用インバータあるいはインバータモータを試験する上で、日本電機工業会技術資料によると、「電動機のトルク特性がインバータ出力電圧の基本波実効値に、温度上昇が出力電流の全実効値にそれぞれ左右されることから、出力電圧は基本波実効値相当、出力電流は全実効値、出力容量は実用面を考慮してこれらの積で表す」ことになっている。基本波実効値は整流型平均値計測の実効値校正で得られる測定値とほぼ一致する。これらの理由から広帯域電力測定器の多くは、電圧測定方式が実効値計測と整流型平均値計測の実効値校正に切り換えられるようになっているので、用途に応じた使い分けが必要である。

    2. 外部ノイズの影響を少なくする結線の工夫

      例えばシャント抵抗などを使用して直流電源の一次側の大電流を測定する場合について述べる。高周波用シャント(同軸シャントなど)ではその構造上から外部ノイズの影響を受けにくいが、直流用シャントではそのような構造にはなっていないので、結線に注意する必要がある。
      図6に示したように、シャント抵抗に接続した信号線がつくる斜線部分の面積をできるだけ小さくする工夫が必要である。これは誘起される電圧がその面積に比例することによる。 またシャント抵抗と電力計とを結ぶ測定ケーブルのLo側の測定ケーブルに、コモンモード電圧によって生じるノイズが測定すべき信号に重畳して正しい測定ができなくなる。このような場合には、DC-CTなどを使用してコモンモード電圧の影響を取り除く必要がある。

    3. 負荷変動が大きい機器の電力測定

      複写機などの場合には消費電流が、動作時と待機時では大きく変動する。このような場合には一定期間の積算を行い平均電力を求める方法が用いられる。電力計の主な測定機能の一つである積算は、機種により様々な手法が取られているので注意が必要である。例えば2531(横河電機)はサンプリング手法を用いて全期間に渡り隙間無く積算する手法を採用しているので、電力変動に追随し正確な積算をすることができる。

最近の動向-高調波解析

  1. 電源高調波電流の規制

    家電・OA機器など電子機器の発生する高調波電流が、その普及にともない電力系統における高調波電流の総量を増大させている。その結果、電力系統電圧波形のひずみが増大し、電力コンデンサの発熱・劣化など電力用機器に多くの障害を与えている。
    IECにおいてはこの高調波電流に関する規定555-2の改訂審議が行われ、相当たり16A以下の機器に対して新規格番号1000-3-2として1995年3月に発行された。EUにおいてはこの規格に基づき1996年1月1日から強制規格として適用される。IEC1000-3関係の規格を表2に示す。
    日本国内においては、通産省資源エネルギー庁から、「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」および「高圧または特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」が1994年9月に通達された。「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」においてはその対象を相当たり20A以下の機器としている。
    これらの規格およびガイドラインは機器のクラス分けと高調波電流の限度値、およびその測定法について定めたものである。

  2. 規格の内容

    ・クラス分けとその限度値
    IEC規格および国内ガイドラインにおけるクラス分けを図7(a)のフローチャートに示す。クラスDの判定は電流波形により図7(b)により行う。IECの各クラス毎の高調波電流限度値を表3に示す。クラスBの限度値はクラスAの限度値の1.5倍まで許容されている。国内ガイドラインのクラスAおよびDの限度値は、定格電圧Vnomにより230/Vnomを乗じた値となっている。
    IEC規格および国内のガイドラインにおいては、各機器毎にその試験条件が記載されている。また暫定限度値や継続審議中の事項があるので、機器毎にその確認をしておく必要がある。

  3. 測定法

    国内ガイドラインの測定法を図8に示す。IECによる測定法は(a)の単相機器および(c)の3相機器(3相4線)が示されている。両者間で最も大きな差異は、国内ガイドラインにおいて、図中に示した電源インピーダンスを規定している点である。この規定はIEC規格にはないものである。

  4. 測定例

    電源、解析器、PCでのシステムアップ例を図9に示す。

    交流電源、インピーダンスネットワーク、測定用機器、PC、(およびプリンタ)で構成される。交流電源はIEC規格および国内ガイドラインに規定された性能を持ち、インピーダンスネットワークは国内ガイドラインに沿ったものとなっている。これらの代表機器を写真1に示す。また測定用機器を写真2に示す。

    連続で最大2.5分間まで解析可能であり、PC上では波形解析、機器のクラス分け、解析結果、判定、報告書などを作成できる。それらの印刷例を図10に示す。

    また簡易的な高調波解析機能を持った電力計WT110/130(横河電機)も登場している(冒頭の写真)。これにより解析したデータのプロッタに出力された例を図11に示す。

仕様の見方

電力計の仕様の一部を表4に示す。
方式(原理)、力率誤差、計器損失、CMRR、クレストファクタ等については前号を参照されたい。さらに機種毎の技術情報などを入手すると良い。

  1. 入力方式

    電圧入力回路と電流入力回路の回路方式や絶縁等についての項目では、電圧入力回路は抵抗分圧方式、PT方式などがあり、電流入力回路はシャントやCT方式などがある。

  2. 測定周波数範囲

    電力計として確度保証している周波数範囲が記載されている。機種またはメーカにより、電圧及び電流のみの確度保証周波数範囲や、-3dBの帯域で記載している場合もあるので、比較する上で十分注意が必要である。

  3. 瞬時最大許容入力/最大許容入力

    電力計を壊さないための入力条件の一つである。最近は電力計の電流入力にシャント抵抗を使用しているものが多くなってきた。この場合、過大入力に対してCT方式に比べ耐量が低いので、使用に当たっては十分注意が必要である。またシャント抵抗の溶断だけでなく、抵抗値の変化などにより測定精度に大きく影響することもある。

  4. 方式

    電圧、電流、電力を測定する方式。ディジタル乗算方式、時分割乗算方式、アナログ乗算器方式などがある。ディジタル乗算方式には様々な方式があるので、詳しくは技術資料などを参考にすることを薦める。

  5. 表示確度

    測定周波数範囲においての確度が記載されている。電力は通常力率を1として規定する場合が多いが、皮相電力で規定する場合もある。

  6. 表示確度-条件

    確度を保証する環境条件や測定条件などが記載されている。一般的に温湿度範囲、入力条件、機器の設定条件、確度保証期間などがある。

  7. 力率の影響

    電力確度は力率を1として規定しているのが一般的であるが、力率の影響は力率が0.5の時あるいはゼロの時で規定される。これは力率が小さくなると表示値に影響を与え、確度が悪くなるためである。一般的に力率がゼロの場合にはレンジ誤差で、0.5の場合には読み値誤差で規定される。また力率ゼロで規定されている場合に、力率が0.5の時の読み値誤差を算出するには、力率ゼロでのレンジ誤差に1.73を乗ずるとよい。しかしながら製品によっては、力率が0.5以下では規定できないものがある(方式の違いによる)ので注意が必要である。他の力率については技術資料などを参考にして頂きたい。

  8. 有効入力範囲

    確度を保証できる入力の範囲が記載されている。

  9. 温度係数

    確度を保証している温度範囲以外での温度による影響を規定している。

あとがき

以上述べたように、電力計が持つ多彩な機能を十分引き出すと同時に、正確な測定をするためのノイズ対策などその環境に応じた適切な方法を選択することによって、電力計の機能・性能を100%活用して頂きたい。


参考文献

(1)日本電機工業会技術資料 第169号
「一般用低圧三相かご形誘導電動機をインバータ駆動する場合の適用指針」;(社)日本電機工業会
(2)日本電機工業会技術資料 第148号
「インバータドライブの適用指針(汎用インバータ)」;(社)日本電機工業会
(3)IEC 1000-3-2
(4)家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン;通産省資源エネルギー庁
(5)日立評論:1995 3 Vol.77

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