概要
発電所・変電所やビル・工場の電源設備の理想的な交流出力は、一定の周波数と振幅の正弦波形です。しかしながら、実際には負荷の変動や設備の劣化、雷などの外乱により、周波数異常、ノイズ、電圧異常、瞬停などが発生してしまいます。
これらの電源異常を把握するにあたり、オシロスコープで電源の電圧波形を観測する場合があります。
オシロスコープは、電圧波形を観測することは簡単ですが、搭載されている一般的なレベルトリガで電源出力の不具合を全て捕捉することは非常に難しく、また電力品質測定機能がないものが多くあります。
本書では、DLM3000/DLM5000のユーザー定義演算(/G02)を使った電源電圧波形の異常判定の事例を紹介します。
あわせて、絶縁・高電圧入力のスコープコーダのウェーブウインドウトリガ機能もご覧ください。
ポイント
DLM3000/DLM5000は、取り込んだ信号に対し波形ゾーンを使ってGO/NO-GO判定を行い、異常(または正常)の場合にデータ保存、メール発信、ブザー音発生など、あらかじめ設定したアクションを自動的に行うことができます。
理想的な正弦波形からのずれがある範囲内に入っているかどうかを判定する場合、通常はあらかじめなるべくきれいな正弦波波形を測定し、これをもとに波形判定のゾーンを作成します。しかし、信号発生器、測定器による各種ノイズや波形のひずみなどを完全に排除することが困難なため、判定結果にも影響を及ぼしかねません。
DLM3000/DLM5000では、実測波形を使う代わりに、オプションの「ユーザー定義演算(/G02)」を活用することで理想的な波形判定ゾーンを作成できるので、条件に誤差を含まない正確な波形判定を行うことができます。
特長
ユーザー定義演算(/G02)による波形ゾーン作成
① ユーザー定義演算式の設定
まず、式の記述により基準の正弦波を作成します。
キー操作
ハードキー[MATH/REF]を押す
Modeのソフトキー[Math] を押す
Operationのソフトキー[User Define]を押す
演算式の入力
演算式設定画面で、以下のように入力します。
(※実効値100Vrmsの50Hz正弦波の場合の例)
100*SQRT(2)*SIN(T*50*2*PI)
演算式の解説
正弦波の生成はSIN関数を使用。引数はラジアン指定なので経過時間を表す変数T、円周率PIと周波数50Hzを使って上記のように記述します。
振幅は100Vrmsなので、100×√2を乗じています。
② 波形ゾーンの作成
キー操作
Modeのソフトキー → [Go/Nogo AND]に設定
判定の種類を波形ゾーン(WaveZone)に設定
判定対象チャネルと垂直方向の判定範囲を設定
トリガ時のアクション設定と波形ゾーンを使った判定
① GO/NO-GO判定時のアクション設定
キー操作
[Mode] → [Action]でアクションを選択
ソフトキー[Exec]を押し、実行します。
② 波形測定とGO/NO-GO判定
波形測定を開始すると、あらかじめ設定した波形ゾーンを使って、GO/NO-GO判定を行います。(※演算と入力間でレンジ、時間軸を一致させる必要があります。)
測定波形が判定ゾーン範囲内に収まっていない場合に、あらかじめ設定したアクションが実行されます。
DLM3000シリーズは、小型軽量コンパクトながら大容量ロングメモリーと豊富な解析機能で好評いただいてきたDLM2000シリーズに、直観的操作が可能なタッチスクリーンを搭載、メモリーを最大500Mポイント(/M2オプション)まで拡張、入力感度やアクイジションレートなど様々な改善を施した、新設計の2/4チャネルミックスドシグナルオシロスコープです。
DLM5000シリーズは、DLM4000シリーズの機能・操作性を継承しつつ、タッチパネル搭載により使いやすさに磨きをかけた新設計の大画面アナログ 8ch 入力 オシロスコープです。新たに4chモデルも追加されました。2台連結同期により、最大16chの測定が可能で、高度化・高速化するパワーエレクトロニクス、カーエレクトロニクス、メカトロニクス開発に最適です。
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