背景
世界の電気エネルギーの半分程度が、モーターの駆動で消費されていると言われています。今後はEVやロボットの急速な普及に伴い、更なるモーターの需要が見込まれるため、消費電力削減がますます重要になっています。一方、EVやロボット用のモーターでは動作状態が急速に変化することもあるため、定常状態での電力消費だけでなく、起動時などの過度状態における瞬間的な消費電力も、今まで以上に正確な測定を行う必要性が高まっています。また、インバータ装置はモーター制御のための電源などとして広範な分野で応用されており、省エネルギーに貢献しています。インバータ内部では、高度な制御により複数のデバイスを高速にON/OFFさせていますが、設計段階ではサージを含む電圧レベルや信号間のタイミングマージンの確認など、さまざまな波形測定が必要となります。
特にインバータの測定では、一つのインバータを評価するために測定個所を変えながら多くの実験を繰り返す必要があります。このような評価を行う場合、チャネル数が少ない測定器では、気になる事象が発生したときに他のデバイス動作などが観測できないため、総合的に解析することが困難となります。
課題
インバータは一般的に6つのスイッチングデバイスで構成されているため、これらのデバイス動作を4chオシロスコープで同時に観測し解析することができません。
またインバータ機器の評価には、波形全体を捉えながら詳細波形も確認するためのロングメモリーを搭載できるオシロスコープが求められます。
インバータの性能を高めるためには、ゲートドライブ信号をはじめ、各種信号を様々な角度から確認する必要があります。例えば、インバータの設計やトラブルシューティングでは、整流器、PFC、スイッチング回路など各ポイントの電圧・電流信号を正しく捉える必要があります。
DLM5000 による課題解決
(例) ● 三相モーターの3つの線間電圧と3つの相電流同時測定
● インバータ内の6つのSiCのゲート制御信号同時測定
図1 インバータ測定例
DLM5000 による提案
アナログ8チャネル、2 台連結で最⼤16チャネル
2台のDLM5000HD(/SYオプション付き)または、2台のDLM5000(/SYNオプション付き)を専用接続ケーブル(701982)で接続することにより、最⼤でアナログ16チャネル、ロジック64bitの同期測定が可能になります。
専用インタフェースは本体に標準装備のため、後からオプション追加ライセンスで追加も可能です。捕捉波形はそれぞれのユニットで表⽰されます。
トリガは共通に動作し、レコード⻑やサンプルレート、アクイジションの設定、横軸スケールの設定など共通項目は連動するので、まるで1台の16チャネルオシロスコープのように使えます。
※DLM5000とDLM5000HDは、DLMsync機能での接続はできません。
図2 専用ケーブルによる2台連結
同期した2台の測定器は連携状態になり、いくつかの操作はメインとサブで共有されます。例えば波形をズームして表⽰した場合、もう一方も自動で同じ位置をズームして表⽰することができます。測定データはまとめて出力することができるので、統合計測ソフトウェアプラットフォームIS8000と組み合わせることで16チャネルを一度に確認することができます。
図3 統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000
12 bitの高分解能
12bitの測定器は特にオーバーシュート後のリンギングなどの現象を正確に計測するのには非常に効果的です。波形の全体像を確認しながら、微細な変化を正確にとらえる最適なレンジ設定が可能となります。
最⼤1Gポイントロングメモリーによる⻑時間捕捉
サンプルレート2.5GS/sで最⼤0.2秒、50MS/sで最⼤10秒の波形を捕捉できます(DLM3000/DLM5000)。
サンプルレート2.5GS/sで最⼤0.2秒、50MS/sで最⼤20秒の波形を捕捉できます(DLM5000HD)。
※DLM3000/DLM5000では、オプション付加により最⼤メモリー500Mポイント
※DLM5000HDでは、オプション付加により最⼤メモリー1Gポイント
ヒストリ機能
過去に取り込んだ波形を最⼤100,000個、アクイジションメモリーに自動で保持します。後から抽出して解析が可能です(DLM5000HDでは、最⼤200,000個)。
取り込んだ波形は、指定した1波形を画面に表⽰またはすべての波形を一括表⽰が可能です。
ヒストリ波形に対しては、カーソル測定、演算などができます。ヒストリ機能により、トリガで捕捉しにくい波形に対しても、さかのぼって波形を確認できます。
また膨⼤なヒストリ波形から、条件に合う波形を呼び出すために、強力なヒストリリサーチ機能があります。
画面上に注目する波形の一部を捕らえる四角いゾーンを指定する方法、測定した波形全体を取り囲むようなゾーンを指定する方法、多角形(ポリゴン)のゾーン指定など、直観的で簡単な波形サーチ機能が用意されています。また、電圧やパルス幅の異常値など注目する値が分かっているときは、波形パラメータでのサーチも可能です。
図4 ヒストリリサーチ機能
2か所ズーム機能で異なる箇所を同時表⽰可能
ロングメモリーに取り込んだ多チャネルの波形は、横軸にも縦軸にも拡⼤して詳細を観測する必要があります。DLMシリーズではズーム専用のキーと拡⼤縮小のノブがあるので、見たい箇所をすぐにズームアップできます。また、タッチスクリーンを使ってスクリーン上で拡⼤したい領域を指定することでズームアップも可能です。
時間軸スケールの違う拡⼤波形を2か所同時に表⽰することができます。また、AutoScroll機能で、ズーム表⽰位置を、自動的にスクロールさせることができます。ある現象の「原因」と「結果」といったように離れた個所を同時に拡⼤したり、拡⼤率を変えて表⽰できるので、ソフトウェアのデバッグには⼤変有効です。
図5 2か所同時ズーム
スイッチング損失の解析機能
電圧・電流波形から、スイッチング損失[V(t)×i(t)]を演算します。ターンオン/オフの個別損失計算、導通損失を含めた損失、50Hz/60Hz周期の⻑周期での損失など、多様な解析手法に対応しています。また、サイクルモードを用いることで、損失を求める積分演算の範囲をスイッチング周期で切り出せるため、より正確な解析が可能です。
図6 スイッチング損失の解析画面
電力パラメータ測定
最⼤4組の電圧、電流波形に対して有効電力/皮相電力/無効電力/力率などの電力パラメータを自動測定できます。二電力計法による三相電力のΣ演算や測定結果の統計処理なども可能です。
図7 電力パラメータの測定画面
その他の多チャネル測定関連製品
スコープコーダ DL950 の特⻑
図8 スコープコーダ DL950とモジュール
CAN FDなど 高速差動信号の波形品位確認に |
差動プローブ PBDH0500 701925 周波数帯域:500 MHz 入力抵抗:1MΩ 減衰比:50:1 差動入力電圧:±25 V (DC + ACpeak) 電源:プローブI/F |
パワエレ、メカトロ分野の フローティング信号測定に |
高電圧用差動プローブ 701977/701978 周波数帯域:50 MHz/150 MHz 入力抵抗:52 MΩ/4.1MΩ 減衰比:100:1、1000:1/50:1、500:1 差動入力電圧: 5000 Vrmsかつ7000 Vpeak(701977) ±1500 V(DC + ACpeak)(701978) 電源:プローブ電源 |
待機電流から突入電流まで 1本で対応 |
3レンジ電流プローブ 702915/702916 周波数帯域:50 MHz/120 MHz 立ち上がり時間:7.0 ns以下/2.9 ns以下 入力レンジ:0.5 A/5 A/30 A 測定可能導体径:φ5 mm以下 (絶縁導体) 電源:プローブ電源 |
DLM5000シリーズは、DLM4000シリーズの機能・操作性を継承しつつ、タッチパネル搭載により使いやすさに磨きをかけた新設計の大画面アナログ 8ch 入力 オシロスコープです。新たに4chモデルも追加されました。2台連結同期により、最大16chの測定が可能で、高度化・高速化するパワーエレクトロニクス、カーエレクトロニクス、メカトロニクス開発に最適です。
YOKOGAWAのDLM5000HDは、最先端の4/8チャネル高分解能オシロスコープです。コンパクトな8チャネル、垂直軸分解能12ビットのオシロスコープで、複雑な高速波形を高分解能で観測・解析でき、微細なノイズやリンギングなどの確認が容易に行えます。回路チェックからトラブルシューティング、高度なタイミング解析まで、幅広いアプリケーションをカバーしています。